特集2022.03.07

ビリヤード x サッカー=『ビリッカー』。山形から発信する人との壁を越えるスポーツの可能性。

皆さんは『サッカー』と『ビリヤード』が融合した、フランス発祥の新感覚スポーツ、『ビリッカー』をご存知でしょうか?縦3.6m、横6.6mの大きなビリヤード台の形をしたコートの中で、白いサッカーボールを蹴って、色と数字の入ったサッカーボールに当てて、コートのポケットに入れていくゲームです。

この新しい競技の普及活動に取り組んでいるのが、山形県在住の柴田利(しばた・みのる)さん。長年介護職に就いていた柴田さんですが、あることがきっかけでビリッカーの虜に。今はビリッカーを楽しめるお店をオープンさせ、競技の普及活動に邁進しています。「ゆくゆくはサッカーのようにワールドカップを開きたい」と夢を描く柴田さんに、ビリッカーの魅力などを伺いました。

山形の介護士とフランス発祥のビリッカーとの出会い

まず柴田さんとビリッカーとの出会いについて教えてください。

たまたまテレビを見ていたら、芸能人が楽しそうにビリッカーをやっていて、すごく興味を惹かれました。というのも自分はアマチュアA級のライセンスを取るほどビリヤードが好きだったからです。フットサルもやったことがあったので、見た瞬間に「これだ!」と思いました。
もはやこれを仕事にしたいと考え、ビリッカーを楽しめるお店をつくろうとテレビを見た次の日には自分で机や椅子をDIYし始めてましたね。
ただ結局最初は店を出さずに、実家を事務所としてビリッカーのレンタル事業を始めたんです。協会に電話をして、東京で体験をさせてもらって、ビリッカーの台を買うところから始めました。

ビリッカーに出会う前は、介護士として活躍されていたと伺いました。

そうですね。自分で言うのも何ですが、物腰が柔らかいと言われるので、利用者さんには喜んでもらえていたかなと。おじいさんやおばあさんに「ありがとう」と直接言われて、やりがいも感じていましたが、現場は常に人手が足りない状況でした。

どうして仕事を辞められたのですか?

元々自分の将来に疑問と不安は持っていたんです。そんな中で家庭を持って、仕事では現場のリーダーを任されるようになりました。部下からは「リーダーなんだからしっかりしてくださいよ」と言われるようになり、だんだん家の布団から出られない精神状態になっていきました。それで心療内科に行くとうつ病だと診断されてしまったんです。

それは大変な思いをされましたね。

仕事のストレスに加え、体力の消耗が激しく、うまくリフレッシュしきれない生活でした。夜勤もあって、仮眠の時間こそもありますが、いつ呼ばれるか分かりません。
さらにリーダーとしてシフトを組むようになると同僚が夜勤できなければ自分がやるしかなくなります。
でも社会に貢献している自負はありましたし、やりがいはありました。

ご家族もそれは心配されたと思います。

うつになった時は妻が寄り添って病院に連れて行ってくれて、新しい仕事を探して再就職するところまで行ったのですが、再発してしまいました。
その時も妻は「一回ゆっくりしたら?」と言ってくれて、しばらく自分の実家に帰ることになりました。
ただそのタイミングで、父が認知症になってしまい、在宅介護を僕がすることになります。

幸いその間、うつ病は再発せず、むしろ「やることがある」というのが生きがいになっていました。うつの時はご飯も食べられなくて、体重も14キロほど落ちましたから、やることがあるのは大切ですね。
そんな父が亡くなって間もなくビリッカーに出会いました。

次に自分が「やること」、それがビリッカー

ビリッカーが次の「やること」になっていったわけですね。

考えれば考えるほどネガティブになっていって、前に進めないなと思って。だから楽しいことを見つけて、始めようと思いました。いろいろな勉強もして、そうして見つけた自分にとって楽しいことがビリッカーでした。もう吹っ切れたというか、好きにやろう!と思えたんです。これまで人に気を遣って、顔色を見て生きてきた人生で、でもそれってもったいないなと。
結局のところ、ダメにするのも人だし、良くするのも人です。ならば共感し合える人が近くにいれば、メンタル的にも安定します。

うつを経験してから人とのコミュニケーションにおいて気をつけていることはありますか?

「頑張れ」と言わない、否定しないようにしています。何か声をかける際は「まず楽しんで」と伝えるようにしています。

柴田さんはビリッカーのどのようなところを魅力に感じていますか?

新しいスポーツですから新鮮ですし、子供でも大人でもお年寄りでも障害がある人でも出来ると思うのでそこがいいですね。ただ最初は知名度が低く、レンタル事業もお店も全然売上が立たなくて。営業に行ってもピンと来ないと言わればかりでした。最初の一年は売上はほとんどありませんでしたね。
でも地道に活動を続けていたら、地元の新聞社さんや、NHKの東北全域にもビリッカーの活動が取り上げられて、今は子供がよく来てくれています。娘もテレビに取材されたのを見てくれて「パパ出ていたよー!」と、言ってくれた時は嬉しかったです。
ただ体験費用を格安に設定しているのもあって、ビリッカー単体では生活できていません。早朝は運送会社で働き、昼12時からビリッカーのお店を開けて、19時まで営業しています。私の店の体験代は小学生15分50円、中学生100円、高校生以上は150円。安すぎませんか?ってよく言われます(笑)好きでやっているので、苦ではないですね。
お店に誰も来ない時間はYouTubeを撮影したり、新しい技を開発したりしています。

「誰でも、楽しんで」ビリッカーは人との壁を越えられる

体験された方からこれまでどんな声を聞いていましたか?

コロナ前は学校でビリッカーのイベントをさせてもらうと、子どもたちから「楽しかった」と言ってもらえて。教員の方からも男女、学年関係なく出来て上級生と下級生との間に「このボールを狙った方が良いよ!」などのコミュニケーションが生まれていたと喜ばれました。
また、知的障害がある子で普段はサッカーボールを蹴らない子がビリッカーは楽しんでいたと聞いた時は嬉しかったです。お店の方には定期的に放課後等デイサービスに通っている知的障害がある子が来てくれていて、職員の方からも「いつも丁寧に教えてくれてありがとうございます」と言ってもらえているんです。
もちろんビリッカーを通じて大人のストレス発散の場にも少しずつなってきているなと最近は感じています。みんなで楽しめる場を作っていきたいですね。

そのような機会もコロナの影響で減ってしまったのでは?

そうですね。特に市町村関係のイベントや依頼が無くなりました。それまでは市や学校関係、学童クラブ、特別支援学校などから依頼を受けて、遠くは宮城県まで出張に行っていました。それが無くなったのは寂しいです。

これからのやりたいことは?

2030年には、ビリッカーのワールドカップを開催したいですね。漠然とした大きな夢ですが叶えたいです。直近では※2022年3月12日と13日に日本薬科大学埼玉キャンパスで、マイナー競技が集まるイベントがあるので、そこで認知度を上げられたらと考えています。
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※イベントが延期になりました
2022年5月4日(水)5日(木)2日間開催!
会場:日本薬科大学さいたまキャンパス
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ビリッカーも参加するイベント【マイナー競技認知度爆上祭】詳細はこちら

そしてもっともっと普及活動頑張りたいです。もうマイナーじゃなくてバズりたいな!と考えています。そのためにもまずはマイナー競技の第一線で頑張っている人たちと手を取り合っていきたい。
池谷直樹さんもゲストで来られるみたいなので、盛り上がること間違いなしかと。ぜひ皆さんお越しください!

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