長かったコロナ時代を経て、アフターコロナと呼ばれる現在。日常生活の制約も緩和され、元の日常を取り戻しつつあると感じている方も多いのではないでしょうか。大学スポーツの現場では、コロナウィルスの蔓延を機に、部の存続を危ぶまれているチームが多いといいます。特に、マイナースポーツや大学スポーツの現場では、その傾向が高く、大阪公立大学女子ラクロス部(リーグ2部所属)も例外ではありません。1992年の創部から、長い歴史を経て、彼女たちが現在直面している課題、それは〝競技の認知度向上〟と〝部の安定的な経済基盤の確保〟について。コロナ禍に直面し、先輩OGや外部との関わりが希薄になってしまったことに加え、新入生勧誘の機会が制限。それに伴って、部員数が減ったことで、部の経済基盤は不安定に。1部昇格と定着を掲げ、日々、懸命に部活動に取り組む彼女たちの未来へのアクション、そして将来の大学ラクロス界への思いについて、お話を聞きました。
目次
「自分たちにできることを、一生懸命やっていた」 八方塞がりのコロナ禍をこえて
▶コロナウィルス蔓延前、部はどんな状況だったのでしょうか?
アフターコロナの現在は、総勢30名で部活動をおこなっているのですが、以前は50名ほどの部員が在籍していた時期もありました。現在、私たちはリーグ2部に所属しているのですが、以前は1部にいた時期もあったと聞いています。また、コロナ禍前はOG会もおこなわれていたのですが、蔓延を機に、OG、先輩、外部の方との関わりが希薄になってしまったと感じています。
▶コロナ禍では、どのように活動されていたのでしょうか?
全国的にステイホームが提唱されていた時期は、部活動も基本はオンラインでおこなっていました。技術的な面は、メニューを送ってもらって、各自で自主練習という形をとっていました。少し制約が緩くなってきてからも、対面で集まれるのは1時間ほど。さらには少しでも体調不良者が出た場合は、対面練習禁止になってしまうという制約の中での活動だったので、工夫が必要でした。少しでも、自分たちに出来ることを探しながら、一生懸命に取り組んでいたように思います。
▶工夫と忍耐が必要とされる中、部のこれからについて、危機感を持ち始めたのは?
アフターコロナの見通しが見えないな、と感じた時だったと思います。新入生の勧誘などにも制限がある時期だったので、とにかく部員数が減ってしまって…。そんな時に、部はこれからどうなっていくんだろう、ラクロスの競技人口自体も減ってしまうのではないか、と不安な気持ちになりました。
▶アフターコロナの現在については、どのように感じていますか?
対面のイベントを増やすことができたというのが、1番の変化かなと思います。コロナ禍での新入生勧誘活動では、ビラ配りや話しかけることも禁止されていましたが、今は、勧誘方法の制限もほとんどなくなって、新入生に向けてのイベントも積極的におこなうことができるようになりました。
実は、ラクロス部にとって、新入生勧誘のイベントは、とても重要なんです。例えば、サッカーや野球などは、幼い頃からの経験者も多くいるため、最初から一定数の新入部員を望めるのですが、ラクロスは大学スポーツなので、大学生になってラクロスを知って、初心者として競技を始める人が多いんです。なので、対面でラクロスについて知ってもらったり、競技の楽しさを体感してもらう機会をもてないというのは、入部希望者の数に響いてきてしまいます。
アフターコロナの現在では、積極的に新入生に接触する機会も持てるようになりましたし、文化祭などでラクロスを知ってもらう機会が増えたことで、認知度もどんどん上がってきた実感があります。コロナ禍の時は、新入部員が5人の時もあったのですが、昨年と今年は、当時の倍の10人ほど入部してくれました。体験会などでも、50人ほどの新入生が興味をもって、イベントに集まってくれました。
「結果で恩返しできるように頑張ろう」クラウドファンディングで、チームの絆がより強固に
▶アフターコロナで感じた課題解決のために、注力していることはありますか?
大阪公立大学女子ラクロス部内だけでなく、部外の方とも関わりを増やしていくということに注力しています。今までは、OG会や保護者会についても、開催はしていたものの、力を入れることができていないままだったのですが、コロナ禍を機に、保護者会の内容を練り直して、チームをもっと知ってもらえるような内容を組み込んだり、私たちのことを、あらためてしっかり知ってもらえるように試みました。また、OGの方が集っているグループラインで発信している部内報についても、発信の仕方や内容について、よりわかりやすく、口調なども柔らかめにするなど、見ていただきやすい形になるように努めました。
▶部の存続の危機を受けて、クラウドファンディングを始めたそうですね。クラウドファンディングを始めたきっかけは?
他大学のラクロス部や他の部活がやっていることを知って、興味をもったことがきっかけです。クラウドファンディングをおこなうのは、これで2度目なのですが、今回はクラウドファンディングの会社のほうから声を掛けていただき、実現に至りました。前回は、「とりあえずやってみよう!」という気持ちで、深い部分まで考える余裕がなかったのですが、今回は現在の動向や結果、支援して下さる方の反応を見て、企画の段階から会社の方に相談にのってもらいながら、進められています。
▶客観的な視点をもって、アプローチできるようになったんですね。実際にクラウドファンディングをやってみて、良かった&難しいと思う点はありましたか?
今回のクラウドファンディングの期間中に、公式戦の集客試合(8月17日)が被っていて…。集客試合の宣伝も交えながら、ユニークなクラウドファンディングのリターンを考えられたことが良かったなと思っています。リターンの幅が広がったことで、前回のクラウドファンディングの時よりも、OGさんや保護者の皆さんなど、支援して下さる方のニーズに、より近づいたものをお返しできているのではないかと感じています。
難しいなと思っている点は、OGさんや保護者さんからの支援がメインになっているという現状です。支援して下さる方がいること自体、とてもありがたいことではあるのですが、部の安定した基盤を作るには、もっと幅広い方に支援していただく必要があると思っています。インフルエンサーの方などにもご協力いただいて、1人でも多くの方に応援してもらえるように、頑張りたいなと思っています。
▶クラウドファンディングを始めてみて、周囲からはどんな反響がありましたか?
保護者の皆さんからは、2回目のクラウドファンディングにも関わらず、前回よりも大きな金額で支援していただいているので、とても感謝しています。また、他の部活などからも、リターンのユニークさに興味をもってもらっているようで、クラウドファンディングを通じて、自分たちのことを知ってもらえる機会を得られていて、とてもありがたいな思っています。
▶クラウドファンディングをおこなう中、チームに何か変化は見られましたか?
支援をしていただいているということに感謝することが、部活動や試合のモチベーションになっているなと感じています。「支援者の皆さんからのサポートを、結果で恩返しできるように頑張ろう!」と、チームがより一致団結して目標達成に向かえているな、と実感しています。
「愛し、愛されるチームに」 感謝の思いを試合や成果にぶつけたい
▶クラウドファンディングを通じて、ラクロス界にどんな影響を与えていきたいですか?
目標金額に達することができれば、部活動にかかる資金というのもだいぶ軽減されると思うので、新入生との接点をもっと増やしていけると思います。また、私たちの活動をきっかけに大学ラクロスの認知度が向上すれば、競技人口増加の一端も担えるんじゃないかと思っています。ラクロス協会でも、競技を全国的に広げるための活動を積極的におこなわれているのですが、その一環として、次世代の小学生たちにラクロスを教えるキッズラクロスという活動もおこなわれています。そういった風向きを感じながら、大学生である自分たちも、高校生向けにティックトックなどでのSNS発信に注力しているので、ラクロスをきっかけに志望校が決まったり、ラクロス部への入部がモチベーションとなって、受験勉強を頑張ってもらえるような動きができてくれたら嬉しいなと思います。
▶これからの部活動への意気込み、クラウドファンディングで支援して下さっている方へのメッセージをお願いします。
私たち、大阪公立大学女子ラクロス部では、〝一部定着〟という大きな目標を達成するために、〝愛し、愛されるチームへ〟という理念のもと、日々頑張っています。このスローガンには部員同士、愛情をもって力をあわせ、部外の方にも愛されるチームになりたいという思いが込められています。クラウドファンディングへの挑戦を通じて、支援者の皆さんから、たくさんの愛情をいただいているなと感じているので、私たちも試合の結果や日々の成果で、愛をお返ししていけるよう、頑張ります。また、皆さんから、たくさんの愛情をいただいているからこそ、今年だけでなく、来年も、その先も、一部に残り続けるようなチームにしていきたいなと思っているので、応援よろしくお願いします。
【大阪公立大学女子ラクロス部の取り組みについて】
大阪公立大学女子ラクロス部では、8月31日まで、活動費の補填や部の安定した基盤づくりを目指して、クラウドファンディングに挑戦しています。
▶クラウドファンディング特設ページhttps://www.spportunity.com/osaka/team/910/invest/633/detail
▶大阪公立大学女子ラクロス部 公式Instagramhttps://www.instagram.com/omu_w_lax/
▶大阪公立大学女子ラクロス部 公式ホームページhttps://www.omu.ac.jp/campus-life/activities/list/w-lacrosse/
取材・文/秋山彩惠 写真/大阪公立大学女子ラクロス部
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