特集2022.02.07
7人制サッカー ソサイチ の日本代表 青沼広己さん(38) 「競技を続けるためにアスリートは自立すべき」現役選手とアスリートの起業を支援するコミュニティー事業の二刀流でコロナ禍を乗り切る!
ソサイチという競技を聞いたことがありますか?
南米発祥のボールゲームで、簡単に言うと1チーム7人でするサッカーです。
今回ラジねえ。は、ソサイチの日本代表として活躍する青沼広己さんにお話を聞き
ました。支援を受けたいアスリートと支援をしたい企業や団体のマッチングを手助けしたいと会社経営もされている青沼さん。競技生活を続けていくため、“アスリートの起業と収益化” について熱い思いを語ってくださいました!
目次
青沼広己(あおぬま・ひろき)プロフィール
1983年3月18日生まれ 38歳
千葉県 船橋市出身
父の影響で4歳頃からサッカーを始める。
柏レイソルジュニア、浦和レッズジュニアユースを経て東海大浦安高校
浦安高校サッカー部で千葉県ベスト4入りを果たす。
大学生の頃、フットサルに転向
2017年 ソサイチの国内リーグが開幕しフットサルと並行してソサイチを始める。
同年 ソサイチ日本代表に選出される。
2016年11月1日に合同会社Gravisを設立。
主にアスリートとスポンサーを集めたAthlifes(アスライフス)というコミュニティを運営している。
サッカー、フットサル、そして…ソサイチとの出会い
ラジねえ。: 青沼さんは選手でありながら会社を経営されているんですよね。
青沼: はい。7人制サッカーのソサイチという競技の選手をしながら、アスリートとスポンサーを集めたコミュニティの運営を主にやっています。アスリートが収益化できる仕事を作り、「アスリートという職業を確立しよう」をテーマに、いろんなスポンサーさんの力をお借りしながら活動しています。
ラジねえ。: スポーツの経歴を教えてもらっていいですか?
青沼: 少し長くなりますが…父がずーっとサッカーをしていました。
生前はシニアリーグで、本当に亡くなる直前までプレーしていたんです。僕が幼い頃は「おもちゃを買ってあげるから」とつられてボールを蹴っていました。父にうまくやられましたね(笑)。おもちゃの横にいつもボールが添えられていて、いつしかサッカーをやるのが当たり前になっていました。
それから高校卒業までサッカー漬けの日々を過ごし、大学でフットサルに転向しました。大学リーグでプレーし、卒業してからもFリーグ(日本フットサルリーグ 2007年創立)の前身のリーグなどでずっとやってきました。
ソサイチは2017年に公式リーグができて関東、関西などで開幕しました。そのタイミングで高校の同級生たちがソサイチチームを作ったんです。当時、誘われて「フットサルのない日だけ行くよ」と軽い気持ちで始めました。そうするうちに日本代表に選んでもらえて、ソサイチをメインでやるようになって、今にいたります。
ラジねえ。: サッカー、フットサル、ソサイチそれぞれの特徴って何ですか?
青沼: サッカーは皆さんが知っているように広い競技場を使って11人で行うものですよね。フットサルはコートの大きさがサッカーの7分の1ほどで、人数も5人と少ない。だから選手ひとりひとりのウエイトがめちゃくちゃ大きいですし、すごく緻密なんです。足の裏を使った細かい技術が必要なイメージを持つ方が多いですが、半歩、数センチの世界で勝負をするフットサルは、個人技よりフォーメーションなどの動きのほうが重要で大変な競技だと、実際にやってみて思いました。
ソサイチはフットサルコートの約3倍のコートを使って7人でプレーします。サッカーのようなロングキックはフットサルでは蹴られないけどソサイチならできる。メンバーも、11人は大変だけど7人なら集められそうだな、とか。本当にサッカーとフットサルの中間で、サッカー好きがサッカーのいいとこ取りしてできる小さいサッカー みたいな、そんな競技だと思います。
ラジねえ。: 青沼さんご自身はどれが一番向いていると思いますか?
青沼: ソサイチが一番向いているんじゃないかという気がします。日本代表にも選んでもらったし、今はソサイチを普及させたい気持ちが強いので、ソサイチ選手としてやっていこう!という感じですね。
選手と企業のマッチング事業をスタート コロナ禍のオンライン展開で加速 ?!
ラジねえ。: 選手として以外に、今取り組まれている事業についてお聞かせください。
青沼: 事業を始めたきっかけは、フットサルをしていた頃のことです。会社勤めをしていたので、練習との両立がけっこう難しくて。独立したいと思うようになって、自営でやり始めました。自分でスケジュールを決めるようになったので、仕事と競技の両立がしやすくなったんです。
僕と同じように、競技でお金をもらえないアスリートが、自分で事業をすることで競技との両立をうまくできるようにしたいと考えて、「アスリートの起業支援」をテーマに Athlifes(アスライフス)というコミュニティをつくりました。ただ、起業って資金が必要だし、敷居が高くて…できる人ってやっぱり限られるんですよね。いろいろ手段を探す際に大変な思いもたくさんしました。悩んでいた状況にやって来たのが、新型コロナの感染拡大。なんとか頑張ってやっていた事業も止まってしまって、まずいなと…。
自粛期間中にいろいろ考えた結果、起業ではなくてもアスリート活動の中で収益を生めるような仕組みがあったらいいなと思いつきました。オンラインを活用して、全国どこにいても、海外にいてもできるかたちを作れたらいいなと。
Athlifes(アスライフス)は、さまざまなアスリートが集まって、その集まりに対して企業さんからスポンサードしていただいたり、アスリートたちを起用して商品をプロモーションしていったりというかたちで仕事を作る仕組みを整えています。コロナで打撃はありましたが、だからこそこのかたちが生まれたので、いいきっかけをもらえたなと感じています。
ラジねえ。: Athlifesを始めて1年ほど経ちますが、すでに多くのアスリートやスポンサー企業が参加されているんですよね。
青沼: 現在166名(2021年10月時点)です。スポンサーさんも112社(2021年10月時点)いらっしゃる。本当に感謝です。
ラジねえ。: 参加者を募るのは大変なことだと思いますが、何か工夫されていることなどはありますか?
青沼: オンラインが主流になって、家にいながら商談できるようになったじゃないですか。1時間ごとにぶわーっとスケジュールを詰め込んで、いろんな方とたくさんお話して、ご支援や知恵をいただいてきました。対面だったらこんなにも集まらなかっただろうな…。働き方が変わったおかげで加速しました。
ラジねえ。: Athlifesにソサイチの経験が活かされることもありますか?
青沼: 現役でプレーしているので選手の感覚が分かりますし、自分で事業をやってきた経緯から、スポンサー側の気持ちも汲み取ることができます。選手とスポンサー、両者と話が通じるのはすごくメリットかなと思っています。
ソサイチはまだ知名度が低い競技だけど、僕のような選手がいろんなスポンサーさんとお話ができて、これだけの人数を集めることができている。この事例を知ってもらえれば、「自分にはもっとできるんじゃないか」と思う人がもっと現れるかもしれない。選手でありながら事業をするのはすごくメリットだと感じています。
スポーツ界の課題 子どもたちの憧れになるためには?
ラジねえ。: 青沼さんが考える今のスポーツ界の課題はなんですか?
青沼: たくさんのアスリートの方とお話させてもらっていますが、競技だけで収益が上がっている人ってすごく少ないんですよね、本当にびっくりしたのが、「オリンピックに出たことがあります」とか、「現役の日本チャンピオンです」とか、そんなにすごい人でもアルバイトをしないと生活が苦しいというんです。そういうことを知ると、もし自分の子どもが「スポーツ選手を目指したい」と言ったとき、「生活できないじゃん」と思ってしまったら、親の立場で応援できないかもしれないじゃないですか。頑張れ!って言えないかもしれない。そういうところが問題かなと思っています。
Jリーグやプロ野球は1試合に数万人と入るスタジアムで収益が見込めますが、会場が小さい競技や個人競技では、世界大会などどんなにハイレベルな試合でも、集客の時点で規模が違いますよね。だから、それぞれのアスリートが競技とは違うかたちで収益化できる方法を探っています。
僕は小さい頃にJリーガーを目指していました。当時Jリーガーのイメージはすごく華やかで、サッカーはうまいし、いい車に乗っていてめっちゃ格好いい! みたいなイメージがありました。僕が描いていた憧れのアスリート像を今も少し思い浮かべながら生きています(笑)。
だから僕はこの仕事をしているし、どの競技のアスリートも同じようになったらいいなとすごく思っています。Athlifesの活動を通じてアスリートが収益化できて、職業としてちゃんと確立して、子どもたちからもその親たちからも憧れられるアスリートをたくさん輩出したいです。
ラジねえ。: 2021年は東京オリンピックがありました。仕事をする上で変化はありました?
青沼: あんまり変わった印象はなかったですが、やっぱり日本中がスポーツで盛り上がっていることはすごくプラスでしたね。それが一過性で終わらないようにしなければいけないなとも。日本中のスポーツ熱が続いていって、大会が終わったあともアスリートの仕事が続いていったらいいなと思って見ていました。オリンピックですごく人気が出てメディアにも取り上げられて、でもそのあとパタリと出番がなくなることはよくありますし、スポンサーの契約も「大会までね」というかたちで結んでいたりすると、以降活動ができなくなる選手もいるんですよ。パラリンピックも含めてマイナー競技では、次の大会を目指すためにどういう生活をしながらどう競技を続けていこうかと考えている選手は多いはずなので、今回の東京オリンピックをきっかけに、選手と企業の間で支援やタイアップなど新しい仕事がたくさん生まれればいいなと思いました。
「応援する側にもプライドがあるんだからね」と言われ気づいたスポーツの魅力
ラジねえ。: 青沼さんのスポーツに対する熱い気持ちがすごく伝わってきます。
ずばりスポーツの魅力は何ですか?
青沼: 限界を超えてやるものって他にないんじゃないかな。それがスポーツの一番の魅力ですね。試合だけじゃなくて、その日のためにずーっと練習やトレーニングをして、その集大成が試合なわけで。本当に限界を超えたところまで突き詰めて戦っているわけじゃないですか。見る側も感情移入するし、応援していると自分も戦っているような気持ちになれる。苦しい思いとか、感動とか、気持ちの振れ幅がここまで大きいのはスポーツでしかないんじゃないかと思います。
ラジねえ。: それを体感したエピソードはありますか?
青沼: フットサルに集中していた頃、今の奥さんがまだ恋人だったときですね。ほぼ全ての試合について来てもらっていたんです。ある時彼女に、「応援する側にもプライドがあるんだからね」と言われたのをすごく覚えていますね。自分だけの戦いじゃなくて、チームメイトはもちろん、応援してくれる人、支えてくれる人たちの気持ちを背負って試合に出ているわけだから、その言葉を聞いて「あ、なるほどな」と、責任を感じました。それからいろいろ考えるようになった気がします。
ラジねえ。: 青沼さんの今後の目標、実現したいことを教えてください。
青沼: Athlifesのコミュニティのテーマの通りですが、たくさんのアスリートがちゃんと収益化できて選手としても成り立つ環境を作っていきたいです。まずは、Athlifesの中にそういうアスリートが100人いるという状況にしたいなと思っています。100人いれば、世の中を変えられる波が作れるんじゃないかな。まずは、100人。
そして、38歳の今は、どこまで長く現役でトップでやれるかを考えていますね。アマチュアではありますが、自分で事業をしながらトレーニングもできているのは本当に応援してくださる方々のおかげだなと思っています。だからこそ、「皆さんのおかげで40歳になってもこれだけ走れてます〜!」と胸を張って言えるような、そういう選手でいたいなと思いますね。
ラジねえ。: 最後にこのGrowSの読者にメッセージをお願いします。
青沼: まずは7人制のサッカー「ソサイチ」という競技の存在を知っていただけたら嬉しいです。それから、アスリートの中には、メディアによく出る方以外にも本気でチャンピオンを目指してやっている方がたくさんいて、苦しい生活を送りながらやっている方が本当に多いんです。そういう方のことを少しでも知っていただいて、小さなことでもいいので何かご支援していただけたら幸いです。より多くのアスリートを応援していただけたら嬉しいです。
ラジねえ。のコメント
青沼さんは家族と一緒に過ごす時間が最も幸せだとおっしゃっていました。ご自身の仕事や競技だけではない、家族や周囲の人を大切にする素晴らしい人間性を感じました。ソサイチの選手を続けながらも、スポーツ業界を支えようと事業を展開されている生活スタイルは、本当にかっこいいです。ご自身が本気で選手としてプレーされているからこそ、スポーツの楽しさを知りながらも、難しさ、仕事と両立することの大変さを十分に理解されているのが伝わりました。青沼さんのスポーツに対する熱い想いがもっともっと多くの人に届きますように、青沼さんはそれを実現できる方だと強く感じました。
関連記事
RELATED ARTICLE
-
【ラジねえ。】女子ラクロス部とラジオ体操しました! 大阪国際大学のマルチな経歴の指導者に話を聞きました。 日本のスポーツ界活性のため「隅っこでこそこそやっていきたい」
インタビュー ラジねえ。 ラジオ体操 ラクロス 学生
2021.11.30
特集
-
こんにちは!ラジねえ。です! わたし上羽悠雅が、いかにして『ラジねえ。』になったか…? 自己紹介させてください。
インタビュー 地域貢献 地域密着 ラジねえ。 ラジオ体操
2021.10.25
特集
-
【ラジねえ。】あのマクドナルドがスポーツと地域をがっつり応援!? “ハンバーガーを売るだけじゃない” マルチな活動 その思いを聞いてきました。 ラジねえ。とのコラボ企画も始まってます。
インタビュー 地域貢献 地域密着 健康促進 ラジねえ。 ラジオ体操 子ども
2021.11.30
特集
-
【医療 x スポーツ】南港病院の院長 三木康彰さん(62)地元のスポーツチームのように地域に “病院のファンを増やしたい ” ハードなトライアスロンが教えてくれた人生の取り組み方。
ラジねえ。 ラジオ体操
2022.01.27
特集
最新のコンテンツ
NEW CONTENTS
-
「私たちのことをもっと知ってもらいたい」 大学ラクロスを全国へ、そしてより身近に 大阪公立大学女子ラクロス部
女子ラクロス 大学スポーツ ラクロス
2024.07.28
特集
-
【アスリートのセカンドキャリア】「サッカー界とも新たな形で、プラスの風を」現役中に出会った〝好き〟がセカンドキャリアのカギになる 元サッカー選手・坂井達弥
社会貢献 元アスリート 次世代 サッカー 日本代表 地域密着 セカンドキャリア
2024.05.29
特集
-
【アスリートのセカンドキャリア】「競技生活は人生すべての糧になる」 現役時代をやりきることが新たな扉をひらく 元プロテニスプレイヤー・吉田友佳
テニス 女性とキャリア 元アスリート 次世代 教育 セカンドキャリア
2024.03.29
特集
-
【アスリートのセカンドキャリア】「キャリアチェンジは〝逃げ〟じゃない」〝競技生活=人生〟からアップデートしていくために<後編>
デュアルキャリア 野球 元アスリート キャリアチェンジ セカンドキャリア
2023.10.11
特集