特集2022.02.24

【ラジねえ。】スポーツに怪我は避けられない? 怪我をするもう一歩手前でくい止めたいと理学療法士 山岡彩加さん(31)は考えた。ポジティブで、メディカルにやってみよう! ラジオ体操も怪我の予防に効くんです。

スポーツをする人にとって、怪我はつきもの。でも、できれば未然に防ぎたいですよね。
今回は、理学療法士として働きながら、怪我予防の大切さをアスリートに伝える活動をする山岡彩加さんにお話を聞きました。ラジねえ。と一緒にラジオ体操をして、トレーニングや体のことをたくさん語りましたよ!

山岡彩加(やまおか・あやか)プロフィール

1990年生まれ 奈良県出身
2013年より理学療法士として介護施設や病院に勤務し、地域介護予防分野で活躍。
一般社団法人ココカラボ認定 転倒予防体操Step +主任インストラクターの資格を持つ。
2020年にスポーツけが予防普及団体「posimedsports」を立ち上げ、地域のアスリートへ怪我予防の大切さを伝える活動を行なっている。

介護からスポーツの分野へ 理学療法士としてのキャリア

ラジねえ。: 自己紹介をお願いします。

山岡: 山岡彩加と申します。理学療法士として病院で働いているんですが、その中で怪我予防の大切さを感じることがたくさんあって、2020年にposimedsports(ポジメドスポーツ)という任意団体を立ち上げて活動をしています。

ラジねえ。: 理学療法士を志したきっかけは何ですか?

山岡: 高校生のときに祖母が脳梗塞で倒れてしまって、理学療法士さんがリハビリをしてくださったんです。病院で寝たきりの状態だった祖母が、立って、歩いて、家で暮らして、元気になるところまで、しっかりリハビリをしていただいたのを見て、私もその仕事をやりたいと目指すようになりました。そういう経緯があったので、理学療法士になって6年ほどは介護のリハビリをずっとしていました。ご高齢の方は、転倒して骨折する方がとても多くて。転倒予防の普及啓発をしていかなきゃいけないんですけど、“今起こっていないことが今後起こるかもしれないから準備しましょう”という予防の考え方は、なかなかうまく伝えることができず、介護の現場でモヤモヤしていました。

山岡: そんな中、4年前にたまたまボランティアでボート競技の選手のサポートをする機会があったんです。大学生のカレッジスポーツ、障がい者のパラスポーツとしてボート競技を見て、それまで介護の現場にしかいなかった私はとても新鮮に感じました。
スポーツの世界で、選手たちは怪我予防を意識している。もしかしたら介護にもスポーツ分野から得られるヒントがあるかもしれないなと思って、それを機に転身しました。

ラジねえ。: 山岡さん自身はスポーツをしていた経験はあるんですか?

山岡: 私は一応ソフトテニスをしていました。一応ですよ(笑)。
学生時代それほど運動をしていなかったので、介護からスポーツへ転身したのは、自分にとって大きなキャリアチェンジでした。
介護の現場では、高齢者はどちらかというと “運動はやりたくない” という認識が大前提にあります。「一緒に体を動かしましょう」と一生懸命励ましながらアプローチするのが当たり前です。しかし、スポーツ選手の対応をしていると、怪我をして痛みがあっても「競技をやりたい!」という思いが伝わってきます。スポーツをする人にとっては、きっと当たり前の考え方だと思うんですけど、私のベースが “地域高齢者” だったので…。その人の置かれている状況や年齢、健康に対する捉え方、スポーツをどういうものだと認識しているか?楽しみなのか? やらないといけないものなのか? それらによって同じ運動でも扱いや見え方が変わるんだなと、今までになかったおもしろみを感じました。

ラジねえ。: スポーツの分野に転身された今は、具体的にどういった活動をしているんですか?

山岡: これまで通り病院で理学療法士としてリハビリをしているほかに、スポーツ現場に出向いて、怪我をしそうな人の身体ケアや怪我をしてしまった人の競技復帰のサポートをしています。

ポジティブで!メディカルに!スポーツ活動を支えるポジメドスポーツ?

山岡: スポーツ分野に転身したのが2019年だったのですが、ちょうど新型コロナの感染が拡大し始めた頃で、学校の部活動などが一時停止となりました。再開したときに、徐々に体を慣らしていかなければならないのにウォームアップが充分でなく急にガッとやってしまって怪我をする選手がとても多くいました。もう少し手前で本人がセルフケアをしていたらきっと怪我はなかったんじゃないかなと思うことが結構多かったんです。怪我をする “もう一歩前の段階” で、地域でできることがあるんじゃないかと考え、5人の仲間と一緒にposimedsports(ポジメドスポーツ)を立ち上げました。
怪我をする背景って、筋力不足とか柔軟性不足とか、そもそも動作・フォームに課題があったとか、いろいろあるんですけど、その中でフォームは修正が効きやすいんです。走るときのフォームやジャンプの着地フォームを直しましょうか、スクワットのときに膝を大きく突き出すと膝が痛くなるので、股関節を使ってしゃがむ動作をしましょうとか。誰でも意識すれば実行することができるようなところからまずは普及しようと思っています。

山岡: こちらはとある高校の女子バスケットボール部の皆さんに配った怪我予防シートです。高齢者の方に転倒予防や介護予防を指導していた頃、「これをしてはいけない」、「あれをしていけない」とどうしても否定的な言い方をする自分にモヤモヤしていたんです。なので、posimedsports(ポジメドスポーツ)では「OKアクション」という表現にこだわっています。NGな動作を「OKアクション」に変えていきましょうと、言い回しをポジティブにしています。
posimedsportsという名前は、「positive(ポジティブ)」、「medical(メディカル)」、「sports(スポーツ)」の語呂合わせなんです。

ラジねえ。: なるほど!いま名前の由来がしっくりきました。

山岡: ポジティブでメディカルなスポーツ活動を応援しようと、この名前にしました。

ラジオ体操って怪我予防に効くんです! これもポジメド効果?

ラジねえ。: 私はラジオ体操の普及活動をしていて、健康にも体力づくりにもいいというのはもちろんですが、ラジオ体操は怪我の予防にもつながると思ってます。今日は山岡さんも一緒にラジオ体操をしていただきましたが、どう感じましたか?

山岡: 今までラジオ体操はもうちょっと柔らかい体操だと思っていたんですけど、しっかり行うとけっこう強度が高くて、終わった後にちょっと息が上がりました。軽く汗ばむ体操で正直ちょっとびっくりしました。

ラジオ体操をするラジねえ。(左)と山岡さん(右)

ラジねえ。: ありがとうございます。ラジオ体操は全部で13種類の動きがあるんですが、1つ1つの動きに目的と意図があって作られているんです。それを意識してもらうと運動の効果も変わってきます。例えば怪我予防につなげるために、膝を痛めている人にはこの運動がいいですよとか、転倒予防にはこの運動がいいですよ、みたいなことにつながるところがあると思います。

山岡: たしかに、ラジオ体操は小学生や地域の人がやるような印象があったんですけど、スポーツの分野でも活かせるんじゃないかなって今回思いました。
怪我を予防するために私たちが1番伝えたいのが、運動を行う前のウォームアップとクールダウンをしっかりして、空いた時間でセルフケアをしっかりするということなんですが、ラジオ体操は体を運動に慣らしていく順序がすごくいいと思いますし、何よりジャンプ動作が入っているところがいいですね。

ラジねえ。: まさにジャンプのところで運動強度がピークになって、そこから徐々に整理運動に入っていくという流れができているので、スポーツをされている方にもおすすめです!ウォームアップの前の段階のやさしい運動として取り込むのもいいんじゃないかなと思っています。

山岡: いま厚生労働省で「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」という情報発信がなされています。1日の中で軽く汗ばむ程度の運動をすることが健康増進に効果的だというメッセージなのですが、ラジオ体操はだいたい3分ぐらいなので、1日に3回ラジオ体操したら「+10」に近づきますね。朝起きたときに体を整える意味での1回、午後の腹ごなし的な意味で1回、夜ゆっくりするために切り替えようと1回。この3回でちょうどいいんじゃないかな。

ラジねえ。: 1日のすばらしいプログラムですね!
私は日常生活でラジオ体操を取り入れていますが、みんなが取り入れやすい怪我予防の運動があったら何か教えていただけますか?

山岡: 私が個人的に大切だと思っていることは、自分のくせを自覚すること。
日常生活や競技の中で、くせがどれくらい蓄積されているかによって怪我の起こりやすさが変わってくると言われています。くせが分かりやすくてオススメな運動は、スクワットです。スクワットはお尻と足の後ろ側のもも裏などを鍛える運動なのですが、つま先よりも膝が前に出ていたり、膝が内向きになっていたり外向きになっていたりするのは、意図しないところに負荷がかかってしまうNG動作です。

山岡: スクワットの動きは、実は日常にも競技にも通じるんですよね。お風呂掃除でしゃがむとき。ジャンプの着地をしたとき。どちらもよく見られるのは膝が前に出過ぎている姿勢です。膝を痛めてしまわないように普段から正しい姿勢=OKアクションを意識することが大事です。

ラジねえ。: 正しい姿勢だと骨盤も安定して背筋が伸びますよね。

山岡: まさに、背筋が伸びているかどうかはお尻の筋肉が決めていることも多いので、その意識をしていただくと姿勢もよくなります。

ラジねえ。: なるほど。すごく勉強になります。私も教えてもらったスクワットをやります!

ラジねえ。: 山岡さんが実現したいこと、目標はありますか?

山岡: 私たちposimedsports(ポジメドスポーツ)の夢は「強く、長く、楽しくスポーツを続けられる」という新しい価値観を広げていくことです。
アスリートである以上は、大会でいい成績を残して強く進んでいくことはすごく大事なんですけど、一瞬のきらめきで他を全部ないがしろにしてほしくはない。強くありながら、楽しくもあり、体のケアもしっかりして、長く続ける。そんな考え方が広がっていけばいいなと思います。

ラジねえ。: 最後にGrowSを見ている方にメッセージをお願いします。

山岡: GrowSさんはスポーツで本気のきっかけを見つけるメディアとお聞きしていますが…。

ラジねえ。: はい!その通りです。

山岡: 本気でスポーツに取り組むとき、昔は “ひとりで頑張る” というのがよくある考え方だったかもしれませんが、今の時代は周りにいろんな情報がたくさんあり、SNSを活用して専門家と繋がる可能性もある。だから、積極的に誰かと意見交換をする機会を作っていただきたいです。「プレーヤーズセンタード」という考えがあるのですが、スポーツ活動をするとき、中心にいる選手をみんなで支えるというようなイメージを持って協働する。そういったことをみんなが意識してスポーツに本気で取り組んでいく世界になればいいなと思います。

ラジねえ。コメント

山岡さんの怪我予防を大切にする気持ちや、この活動をされているご自身の熱い想いがとても伝わりました。何より印象的なのは、山岡さんの太陽のような素敵な笑顔!この笑顔に救われた人がたくさんいるんだろうなと表情を見ながら感じました。
今後も、posimedsports × GrowS でスポーツ活性に繋がる取り組みをどんどん増やしていきたいです!