特集2022.03.31

官民連携で真の地域活性化を。堺市から見るスポーツの力と町の未来。

2021年4月、約3,000席のアリーナと武道館を備え、リニューアルされた堺市立大浜体育館。地域密着を掲げて堺の町と歩みを進めてきたVリーグの古豪・堺ブレイザーズのホームタウンでもあるこの地を中心に、今改めて地元を盛り上げるべく、官民が連携して活動を行っています。
今回はスポーツを通した地域活性化について、行政側がどのように捉えているのかを堺市文化観光局スポーツ部スポーツ推進課の伊賀直紀さん、土橋加奈さん、浮田真実子さんにお伺いします。インタビューするのは、“ラジねえ。”こと上羽悠雅(左から1番目)です。

堺市とスポーツの関係性と施策

ラジねえ。:皆さんは堺市文化観光局スポーツ部スポーツ推進課にお勤めということですが、日頃はどのようなお仕事をされているんでしょうか。

伊賀さん:堺市民の方々に、生涯に渡ってスポーツを身近なものとして親しんでいただけるよう、様々な事業を展開しています。
具体的には、約6,000人の方にご参加いただいている堺市民オリンピックの開催。堺ブレイザーズさんをはじめとした、様々なチームと連携したスポーツイベント。そして、草の根レベルでのアプローチとして、体力測定会の開催や地域のスポーツ教室への講師の派遣といった取り組みなどです。それ以外にも総合型地域スポーツクラブなどの各種スポーツ団体への支援などを実施させていただいております。素晴らしいスタジアムや、球場、チームなど堺市にはスポーツの資源がたくさんあるので、それらをより多くの方々に知っていただき、興味をもってもらい自分も始めてみよう、というきっかけにしてほしいと思っています。

土橋さん:私は今年度、堺ブレイザーズさんの市の担当者として関わっています。今年度、大浜体育館魅力創出事業実行委員会というのを立ち上げまして、そちらで堺ブレイザーズさんと連携した活動をしています。

浮田さん:私は堺ブレイザーズさんへの応援企画をTwitterで展開させていただきました。私自身も、スポーツが大好きなんです。堺市役所に入庁したきっかけっていうのも、スポーツに関わる仕事を市民の皆さんに寄り添ってしていきたかったという思いがありました。


※「堺市スポーツ部」公式Twitter@sakai_sportsで、堺ブレイザーズへの応援メッセージを募集。2月26・27日のホームゲーム会場に、市職員の皆さん手作りのボードが掲示された。

ラジねえ。:なるほど。皆さんそれぞれ、様々な取り組みをされているんですね。
堺市の特色、市民の皆さんのお人柄ってどういった印象をお持ちですか。

伊賀さん:ちなみにラジねえ。さんのご出身はどちらでしょうか?

ラジねえ。:私、京都なんです。

伊賀さん:堺は京都を相手取っても、歴史という観点では負けてない!と、我々は勝手に思っております(笑)というのも、堺ってすごく歴史に溢れた町なんです。世界遺産にも登録されました仁徳天皇陵古墳をはじめとする百舌鳥古墳群もあるということで、古くから日本の政治経済の中心でもあったのかなと感じています。その後も、千利休が名を馳せたり、〝商人の町〟と表現された時代もありました。そういった意味で、本当に歴史や文化の根付いた土地として、古代から近代、そして現代に至るまで、様々な魅力があります。
また、市民の皆さん一人一人が本当にあたたかいし、自分の住む町にプライドをもってくださっている。「住んでんの、大阪ちゃうで、堺やで!」という感じで(笑)

伊賀直紀さん

“ブレイザーズ”から感じる、堺への熱い想い

ラジねえ。:堺ブレイザーズさんとは具体的にどういったことをされているのでしょうか?

伊賀さん:堺ブレイザーズの皆さんとはこれまで様々な活動を一緒にさせていただいており、平成29年には連携協定も締結しました。
具体的なところでいうと、スポーツ教室やイベントなどに選手やチームの方に来ていただいています。今年は堺市出身の佐川選手に、市内小学校にお越しいただいて、将来に夢をもって取り組むことの大切さについてなどをお話いただきました。あとは、市の施策のPRキャラクターに、堺ブレイザーズさんの選手を起用させていただき、PRにご協力いただいています。

※スポーツ教室に参加するブレイザーズ佐川選手

ラジねえ。:チームの魅力をどのように感じていますか?

伊賀さん:私、実は今シーズン初めて堺ブレイザーズさんの試合を生観戦させていただきまして。もう、その時の迫力といったら…!選手の皆さんの目がいきいきと輝いてらっしゃって、すごく惹き込まれるというか。テレビで見るのとは全く違いました。「これを絶対、たくさんの方に試合会場で観ていただきたい!」って、自分が初めて観てみて、改めて思いました。

土橋さん:チームのほうから、地域と何かをしたいという熱意をすごく感じています。市としてもやはりそういう方とのほうが話も盛り上がっていきますから、地域に対する想いっていうのが自然とお互いに強くなってきて。こういった関係性というのは非常に得難いものだと思っています。選手の皆さんも本当にファンの方をすごく大切にされていて、やはりそれが地域との絆にも繋がってくると思います。実際に試合に足を運んでいただいたら、きっとファンになっていただけると思うので、私達もよりPRしていって、市民の皆さんともっと盛り上げていきたいと考えています。

土橋加奈さん

大浜体育館をハブに、地域活性化

ラジねえ。:大浜体育館を活性化させる計画についても、詳しくお聞きしたいです。

土橋さん:令和3年4月に堺市立大浜体育館がリニューアルしたことをきっかけに、その存在をより多くの方に知っていただくことを目的に、大浜体育館魅力創出事業実行委員会を立ち上げました。この実行委員会には堺市をはじめ、今シーズンから大浜体育館でホームゲームを行っていただいている堺ブレイザーズさん、大浜体育館の最寄り駅である堺駅に関連して南海電鉄さん、堺駅前商店会さんにも参画いただいています。中でも、今年の活動として特に注力させていただいたのが、〝堺駅を重点的に装飾することで体育館をPRしていく〟というアプローチです。
堺駅に堺ブレイザーズさんと大浜体育館を掛け合わせた広告を展開すれば、どちらのPRもできるということで、南海電鉄さんにご協力いただいています。駅のホームに広告を8か所掲出させていただいたほか、シーズン前には選手に1日駅長イベントにご参加いただき、大浜体育館をPRしていただきました。
また、大浜体育館にお越しいただいた堺ブレイザーズのサポーターの方に、堺駅前商店会まで気軽に足を延ばしていただけるようなマップも作成させていただいております。
体育館に関わるすべての関係者がウィンウィンになって、地域活性化に繋がる施策になるように意識しています。

ラジねえ。:実際にどのような反響がありましたか?

土橋さん:やはり多くの方が利用する堺駅に設置したことで「広告を見た」という声がたくさん寄せられていますし、何より堺駅前商店会やショップ南海堺さんにのぼりや広告のバナーを出していただいたことで、駅を使わずとも大浜体育館との間にある生活の動線上にいる方の目にも留まるようになって、より認知度が高まっていると感じています。
大浜体育館リニューアル周知のきっかけを、皆さんの日常のふと目が留まるようなところに散りばめて、興味関心を持っていただけるような工夫を今後も進めていきたいです。
次年度以降も継続してPRしたいと考えているのですが、より地元の方を巻き込んだ施策はコロナの状況次第になってしまいますね。

それぞれが持つスポーツとのストーリーと地域活性化

ラジねえ。:町づくりという視点から、皆さんはスポーツにどのような魅力があると思いますか?

伊賀さん:私は高校時代まではずっと野球をやっていまして。そういった経験から感じるのは、人と繋がったり、交流を図れるというのが、スポーツの一番の魅力だと思っています。
コロナ禍も大いに関係していますが、近年特に地域の中で〝顔のみえるお付き合い〟が希薄になってきているように感じるんです。その部分を補う要素として、スポーツを通じた地域コミュニティの活性化に繋げる取り組みをスポーツ推進課としてももっと積極的にやっていきたいなと思ってます。

土橋さん:私は恥ずかしながら、スポーツ推進課に来るまでスポーツにはほとんど関わりがなく、正直体を動かすこと自体が〝嫌いではないけど、好きでもない〟くらいで、プライベートの時間をわざわざスポーツに割いてきませんでした。しかし、堺ブレイザーズさんの試合を観るようになって、トップレベルのスポーツに触れるということで心が動いているという確かな実感があります。つまりスポーツというのは、体を動かすのがあまり好きではないという人でも、アプローチ方法を柔軟に考えれば、十分に楽しめるものであると思います。なかなかスポーツとは縁遠かった人でも、きっといい付き合い方があると感じています。
私のように運動に対して関心があまりなかった方でも1人で楽しめるし、例えばもともとあるコミュニティとスポーツを結び付けていくような取り組みなんかも新鮮で面白いと思います。

浮田さん:私はスポーツが好きでこの仕事をやらせてもらってるという感覚がベースにあります。スポーツを通して人は感動して泣いたり、多くの人と同じ気持ちになれるところがすごく魅力的だなと思っていて。最近だとラグビーW杯や東京五輪などで普段身近に観たことがなかった競技でも感動を共感し合えるところが本当にすばらしいなと思います。そういったスポーツの魅力をぜひもっと市民の皆さんに、あまり興味がなかった人に知ってもらいたいです。
一方で課題は観戦までは楽しんでもらえても、いざ自分がスポーツをするとなるとハードルが高い側面があることです。その一歩を踏み出していただけるようにサポートするのが行政の仕事じゃないかと思っています。しかし、なかなかその場に来ていただくのが難しく、スポーツ教室などを開いても関心があまりない方までには情報が届きにくいというのが正直なところで、そこは課題だと思っています。

浮田真実子さん

チームはかけがえのない存在。堺市をブレイザーズタウンに!

ラジねえ。:堺ブレイザーズさんにこれから期待することを教えてください。

伊賀さん:まずはぜひ優勝していただきたいです!
というのも堺ブレイザーズさんには、チーム名にも〝堺〟、ユニフォームにも堺市の市章を入れていただいてるんですね。ご活躍いただくと、メディアに取りあげていただく機会も増えてその度に〝堺〟の名前も一緒に広まっていきます。それは市のPRにも繋がると思っていますので、そういった意味で優勝への思いを託させていただきたいと思います。
あとは、これまでも積極的にご尽力いただいてる地域貢献への取り組みですね。
地域のスポーツ活動や教室の取り組みにご協力いただいて、本当に感謝しています。
今後も地域のにぎわいづくりに力をお貸しいただけることがあればお願いしたいと考えています。
どんどん地域とコラボして堺市にいわゆる〝ブレイザーズタウン〟のようなものを創っていきたいです。それに近づけるような取り組みを我々、堺市と協力しながら是非やっていただけたらなと思っております。堺ブレイザーズさんとはこれまで、20年以上に渡って地域活性化の活動を行ってきましたが、これからも共に取り組んでいきたいです。かけがえのないパートナーだと考えています。

ユニフォーム左胸には、堺市と市章。

ラジねえ。:最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

伊賀さん:20年以上地域に根差した活動を行っていただいている堺ブレイザーズさんをきっかけに堺市のことを知って、興味を持っていただけたらとても有難いなと思います。
ぜひ迫力あるホームゲームを観に堺市立大浜体育館までいらしてください。
また、大浜体育館の周辺には日本最古の木造洋式灯台である「旧堺燈台」や環濠を遊覧船で巡る「堺のんびりクルーズ」など、試合観戦と合わせて堺市内を観光、散策していただけますので、様々な歴史・文化にも触れていただき、町の魅力を存分に味わってもらえたら嬉しいです。

取材後記

新型コロナウィルスの世界的流行をきっかけに、日常的にあらゆる物事や人と一定の距離感を保たなくてはならない現実と向き合い始めて、およそ2年が経ちました。
このような事態に直面してからというもの、日々、様々な制限と共に生きているからこそ、百聞は一見に如かず、”ふれる”ということの尊さを身に染みて感じられている方も多いのではないかと思います。
スポーツに”ふれる”ことで生まれる、すがすがしい心地よさや湧きあがる感動は、生涯、一人一人の心にしっかりと刻まれ、次の世代へと受け継がれてゆく。そんな心身の健康を一人一人が、それぞれの関わり方で、生涯育んでゆける豊かな環境があるということ、これこそが堺市のもつ大きな魅力であるということを、取材を通じて教えていただいたように思います。
この記事との出会いをきっかけに、ぜひ一度、堺ブレイザーズさんの迫力ある熱気と豊かな魅力あふれる堺市の空気に〝ふれる〟。そんな1日を過ごされてみてはいかがでしょうか。