特集2022.03.04

堺ブレイザーズ・千葉進也監督が導く古豪復活への道。継承されるファンと地域との関係づくり。

天皇杯準優勝、Vリーグでも首位を争う、堺ブレイザーズ。今シーズンからチームを率いる千葉進也監督に好調の理由と、勝利から導かれる“ファンづくり”、“地域との関係づくり”についてお聞きしました。インタビュアーはラジオ体操の普及を通じて地域貢献を目指すラジねえ。こと上羽悠雅です。

課せられたブレイザーズ低迷からの脱却

ラジねえ。:改めまして、インタビュアーの「ラジねえ。」です。よろしくお願いします。

千葉進也監督:よろしくお願いします。
       
ラジねえ。:まず千葉監督とブレイザーズとの接点から教えてください。

千葉進也監督:元々私は2000年に今の堺ブレイザーズの前の新日鐵バレー部に入りました。そこから約10年間、堺ブレイザーズになってからもプレーさせてもらい、2009年に現役を引退して、1回社業のほうに戻った後、3年前に部長という立場でチームに戻ってきて、今年から監督をさせてもらっています。

ラジねえ。:選手としてプレーした後、離れてからはどういった目線で堺ブレイザーズを見ていましたか。

千葉進也監督:社業に戻ってすぐに転勤になって大阪にいなかったので、ほとんど試合も観れず、たまたま遠征で配属先の近くに来れば行くくらいでした。

ラジねえ。:もう一度チームと関わりたい気持ちはありましたか。

千葉進也監督:いや、もう社業に戻った時は30歳を過ぎていたので、仕事が知らないことだらけですから、新入社員のつもりでしっかりとやっていかなきゃいけないという気持ちでした。すぐに仙台に転勤になったんですけど、その1年後に東日本大震災があって正直ブレイザーズを気に掛ける余裕はありませんでした。

ラジねえ。:チームにGM兼強化部長という立場で戻った時はどういった気持ちでしたか。

千葉進也監督:正直10年離れていたのでその期間、何があったか詳しくは分からなかったです。ただ、チームの成績だけは認識していて、自分が学生の頃から強かったブレイザーズのイメージが変わってしまっていました。何とかして強いブレイザーズを取り戻さなくてはいけないという思いで、やるしかないなと。

好循環の鍵は自信を取り戻すこと。

ラジねえ。:今季からは監督に就任しましたが、気持ちの変化はありましたか?

千葉進也監督:部長として2年、チームを見てきた中で力はあるものの、成績が残せてないという状況がありました。負け癖じゃないですけど、雰囲気が悪くなることが試合中にも見えたので、その辺はチームとしての意識を変えなきゃいけないと思いました。

ラジねえ。:GMと監督とでは立場も大きく違いますよね。その違いにやりやすさや戸惑いを感じるところもありますか?

千葉進也監督:監督の方がいろいろ考えないといけないですし、ストレスも多いですね(笑)
部長やGMはチーム全体を見ていろいろ決めなきゃいけないことはありますけど、実際に選手に対して練習メニューや作戦を考えたりするわけじゃないので。
その点、監督になった方がプレッシャーも大きいですし、やることも増えました。大変ですけど、その分結果がしっかりとついてくれば、選手も自信に溢れたプレーをしてくれて嬉しいので、喜びも増えました。

ラジねえ。:昨季が7位(10チーム中)でしたが、今季は2位(2022年2月27日時点)と好調に見えますが、理由をどのように分析していますか?

千葉進也監督:自分が監督になってからはとにかく合同で練習するというより、個別のプレーをしっかりとできるように取り組んできました。それができるようになってきて、チームとしても選手個人としても、自信に繋がっていると思います。
結果もそれなりに付いてきて、やってきた事に間違いはなかったと分かったことで、さらなる自信になって、チームにいい雰囲気の循環をもたらしているんじゃないかと。
劣勢になった場面でもそんなに焦ることなく、選手同士でいろいろ声掛けをするようになってるので去年とはだいぶ選手の意識も変わってきていると感じています。

トップを争う経験が日本一への道を拓く

ラジねえ。:強いチームを作るという点ではしばらく優勝から遠ざかっていることで「勝ち」を知ることも重要になってきそうです。

千葉進也監督:ほとんどは優勝どころか、決勝戦すら戦ったことない選手ですからね。ずっと下位にいるとやらなければならないことがたくさんあります。
でも常に2位や3位にいれるようになればもう1つ、2つ上に上がるためにやるべきことは自ずと見えてきます。
だからまずは安定して上位にいれるように、少なくとも毎年決勝を戦えるチームにならないといけません。今まではあと何をすれば日本一になれるか、というのを考えるところにすらたどり着けていなかったので。
まずはそのレベルまで引っ張り上げて、経験を積む必要があります。日本一を懸ける試合を毎年やってるチームと一回もやったことないチームでは心の持ちようも違います。選手にはそういう経験をしてもらいたいです。

ラジねえ。:先日の天皇杯では惜しくも決勝で敗れたものの準優勝と、タイトルまであと一歩のところまで進みました。まさにそういう舞台に立つ経験が必要ということですね。

千葉進也監督:そうですね。天皇杯もおそらくみんな初めて決勝を戦ったので。あと1セット獲れば日本一というところまで行けたのでその経験はだいぶ違うと思いますし、毎年これができればより一層チームとしてやらなきゃいけないことは明確になってくるでしょうね。
実際タイムアウトの時に選手同士でいろいろ話し合う場面があって、そういう意識が高くなってきたのはよかったと思っています。

2021年12月、令和3年度天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権で準優勝

継承されるファンと地域との関係づくり。

ラジねえ。:一方で最近は成績を残すだけでなく、ファンや地域との関係構築もスポーツチームの大きな役割の一つとなっていて、両立が難しいところもありそうです。

千葉進也監督:私たちはまずは成績を残すというのが第一というか、非常に重要だと考えています。
その上で例えばバレーボール教室に行って、実際に教えてくれた選手が活躍してるとなれば、また応援してくれる機会にもなると思います。
ファンの皆さんに自信を持って「強いチームだ、応援してよかった」って思ってもらえるようなチームにならなければなりません。
成績を残してないと、メディアの皆さんに取り上げられる回数も減ると思いますしね。
ファンサービスについてはいろいろと細かく選手に伝えることはないですが、ベテランの選手たちがブレイザーズとファンの方々との関係性や重要性を十分に理解してくれていて、若い選手に代々受け継がれていると思いますし、ファンや地域との関係構築は我々には欠かせないものとなっています。

ラジねえ。:ブレイザーズは地域活性化やまちづくりにも力を入れていますが、現場レベルでは重要性についてどう感じているか教えてください。

千葉進也監督:元々ブレイザーズは地域密着型のスポーツクラブと銘打って始まっているので地元との接点を持つのは大切なことなのですが、設立当初は急に地域のイベントなどが増えたので、選手にも戸惑いがあったでしょうし、中には「なぜこんなことしなきゃいけないんだ」と思っていた人もたぶん当時はいたでしょうね。
でもずっと続けてきて、いろいろな方に支援していただけるようになっていって、今の選手たちは地域の方々との触れ合いの場を大切にし、イベント等へ積極的に参加することが当たり前だと思ってやってくれています。
そして僕らも応援していただくからには強いチームを見せたいですし、その方が皆さん喜んでくれると思います。
最近では堺市が大浜体育館を新築されましたので、その周辺を盛り上げるためにもブレイザーズが更に強くなって、地域の活性化や町の賑わいづくりの一躍を担えれば良いと思います。

堺市立大浜体育館でのホームゲーム

ラジねえ。:今年の目標を教えてください。

千葉進也監督:目標は日本一になることですけど、強くあり続けるチームを作っていくことが大事だと思います。
長年、結果が出てない中でもずっと応援していただいてる方がいて、その方々へ恩返しをしないといけないという気持ちは強いです。今、コロナ禍にあり、なかなかイベントなどでファンや地域のひとたちと直接触れ合うことができないとなると、やはり結果で恩返しするしかありません。
応援してよかったと思えるような試合をして、勝って、ファンの皆さんが喜ぶような選手の顔をたくさん見せられたらと思います。