特集2022.04.12

実業団のノーリツ女子陸上部 選手兼コーチの小崎まりさん 女子マラソンの中継で一度は聞いたことがある名ランナー&女子陸上部の皆さんとコラボ。明石海峡大橋の下でラジオ体操しました!

“走る” おそらく誰もが1度は経験したことがありますよね。健康需要で市民ランナーも増えてきた近年、陸上競技は多くの人が親しみやすいスポーツとなっています。今回ラジねえ。は、兵庫県を拠点とする実業団チーム、ノーリツ女子陸上競技部の皆さんにお会いしました! 夕日が沈む明石海峡大橋のたもとで、ヘッドコーチ兼選手を務める小崎まりさんにお話を聞きました。長きにわたって競技に取り組んできたランナーだからこそ考える「人間形成・社会貢献」について語ってくださいました。

小崎まり(おざき・まり)プロフィール

大阪府出身  1975年7月16日生まれ 46歳
招堤中学校(大阪 枚方市)~立命館宇治高校~大阪短期大学(現・太成学院大学)~ノーリツ
ノーリツ女子陸上競技部のヘッドコーチ兼選手として活動するかたわら、社業では企画管理本部 人事総務部に所属している。
マラソン自己ベスト 2時間23分30秒
世界選手権 マラソン日本代表(2005年、2007年)

“非エリート”から日本代表選手へ 陸上選手としての軌跡

ラジねえ。:まずは自己紹介をお願いします。

小崎:小崎まりです。2年前まで陸上競技の長距離選手として走っていました。正式に引退は発表したわけではないのですが、今はノーリツ女子陸上競技部の監督業に専念しています。
現役時代は5000メートル、10000メートル、駅伝、マラソンで日本選手権や都道府県対抗女子駅伝、国際マラソンなど、さまざさまな大会に出場していました。日本代表にも選出されて、たくさんの経験をさせていただきました。
今46歳なんですが、おまけで40代のマラソン日本記録(2時間30分3秒)も持っています。長きにわたり実業団選手として活動しています。その間に、結婚・出産を経験して。今は小学4年生の子どもが1人います。

ラジねえ。:実業団チームに入るまでの経緯を教えてもらってもいいですか?

小崎:一般的に皆さんが想像するようなエリートの経歴ではなくて…。
中学生のときは、ただただ走るのが大好きな陸上部員でした。
高校は陸上の名門・京都の立命館宇治高校に進学したのですが、スポーツ推薦ではなく一般の生徒として。陸上部の荻野(由信)先生(現・同陸上部総監督)に「入れてください」とお願いして入部させてもらいました。すばらしい顧問の先生と強い選手がたくさんいる中で、いろんなことを学ばせてもらいました。
大阪短期大学(現・太成学院大学)を卒業したのち、20歳でノーリツに入社しました。そのときは、本当に誰も知らないような選手だったんです。20歳を超えてから都道府県の代表や日本選手権に出る選手ってほとんどいないんですよね。でも、22歳で初めて都道府県対抗駅伝に兵庫県代表で選んでいただいて。それから徐々に大きな大会に出させてもらえるようになって、やっと成績も残せるようになったんです。

小崎さん実業団時代(小崎まりさん提供)

ラジねえ。:小崎さんは遅咲きの選手ですが、ご自身が変わった瞬間というのはあったんですか?

小崎:“瞬間”というのはないんですけど、ノーリツに入社してから自分の考え方がどんどん変わっていきました。実業団ということで、プロ意識が高くなったのかな。

ラジねえ。:プロ意識とは…。

小崎:実業団では給料が発生しているぶん、できることを自分で探してやり続けなければいけないと気がつきました。「できない」ことを「できない」まま過ごさず、「できない」ときには「できるようになるためにどんなふうにやっていくべきなのか」を考えるようになって。
その考え方は、ノーリツ女子陸上競技部だけではなく一般社員として働いている同期の人たちからも学びました。同期の人がこんなに頑張って働いているんだから私も頑張らなきゃと思えましたね。

時代とともに変わるスポーツの価値 選手自ら発信する力を

ラジねえ。:ノーリツ女子陸上競技部の皆さんは、普段の仕事と競技はどのようなバランスで行われていますか?

小崎:平日出社する日は、みんな5時位に起き朝練習をします。午前中に出社し、午後から練習。朝、夕食は寮でバランス良い食事を出してもらえます。トレーニングする事と同じくらい食事は大事なので管理していただけることはとてもありがたいです。

練習に取り組むノーリツ女子陸上競技部(小崎まりさん提供)

ラジねえ。:陸上競技部としての社内の役割や社会貢献についてはどう思われますか?

小崎:私自身、競技歴も長かったので、自分たちだからこその強みを活かして何か貢献できることはないかなとずっと考えてきました。
近頃はコロナやいろんなことで、スポーツの価値やチームの存在意義が問われる時代になってきましたよね。だから、陸上競技部ができることを増やす必要性がより高まってきたと感じています。まだ答えは出ておらず模索中ですが…。

ラジねえ。:そういう意味では、先日一緒にコラボさせてもらった*078KOBEKIDSのイベントでのラジオ体操は社会貢献活動の1つに入るのではないでしょうか。

*「神戸新聞子育てクラブすきっぷ」主催のオンラインイベントノーリツ女子陸上競技部とラジオ体操動画に一緒に出演

小崎:すごく楽しかったし、選手たち自身が、自分たちが発信する価値を考えるきっかけになったと思います。今いるメンバーはまだ若手で活躍の場がないので、自分たちが何かをして影響を与えるっていう、そういう感覚がないんですよね。
今までスポーツ選手は、活躍した後にメディアなど発信する場に行く、という流れが普通だったと思うんですけど、実は強い選手だけが見られているんじゃなくて、弱いときから見られている。部員たちには、弱いときから人として可愛がってもらえる選手になってもらいたいですね。
人に見られるからこそ、言動に責任を持って、本業である競技をしっかり頑張る。そんなふうにしていければいいな。私自身が現役時代から長くいろんな選手を見てきた中で感じてきたことなので、部員たちに教えていってあげたいと思います。

2021年10月12日撮影
神戸新聞子育てクラブすきっぷ主催イベント「オンラインワークショップ おうちであそぼっ!」用のラジオ体操動画撮影時

ラジねえ。:先日のノーリツ女子陸上競技部とラジオ体操のコラボのように、今後“発信する”にあたってどういった取り組みをしていきたいですか?

小崎:今回はたまたま会社で、ラジオ体操をやっているという事業所があって。そこの事業所は、健康経営について積極的に取り組んでいるんですが、専門的な知識があるラジねえ。さんが加わることで理解が深まりました。
今後、選手たちや私がラジねえ。さんの知識などを引き継いで、さらに健康への取り組みを広げていきたいなと思っています。ちょっとずつ、できそうなところから徐々に進めていきたいですね。

ラジねえ。:またぜひ一緒にコラボさせてもらえたら嬉しいです。

小崎:はい、お願いしたいです。

誰もが経験する陸上競技はコミュニケーションツール

ラジねえ。:ノーリツ女子陸上競技部の皆さんは、明るくて楽しそうな雰囲気だと感じました。実際にはどうですか?

小崎:基本的に明るいですが、自信があって前に出たいという子たちではないです。コソコソ周りを見て「大丈夫?大丈夫?」みたいな感じ(笑)。1つずつ自信をつけて変わっていけるように、今は見守り中です。まだ若い選手たちだから、少しのことですごくへこんだりするんですよ(笑)。
選手たちは寮生活をしているので、練習のときだけ会う集団ではなく、普段から一緒に生活しています。そういう意味では、選手たち同士がいろんな状況でリスペクトしながら成長していけるいい環境だなと思っています。とはいえまだまだ子どもな部分がある選手たちを、私がしっかりサポートしていってあげないと。
人として自分がどうありたいか。そういうことを言葉にできるようになってもらいたい。有言実行していけるような環境を作っていかないといけないなと思っています。

ラジねえ。:陸上というスポーツの魅力や楽しさはどういうところにありますか?

小崎:陸上競技って、だいたいの人が経験あるじゃないですか。たとえば、会社でもよく会話に出ますが、「俺、1500メートル何分で走ったことあるで」みたいな。最近は市民ランナーも増えてきて、「何分何秒です」と記録を言えば、「これくらいの選手だな」と、一般の方も評価ができる時代になってきました。そんな中で、トップ選手たちが“みんなができそうだけどできない努力”をしていった先にある結果に、感動を呼ぶんじゃないかな。多くの人が走る経験があるからこそ、よけい感動すると思います。「自分やったら何分何秒だけど、あの人はそんな速いタイムで走るん!」と。そういうところにおもしろさや魅力が詰まっていて、日本人に人気あるスポーツなんだと思います。

小崎:あとは、自分が出した記録がどこで走っても通用するところ。日本で出した記録であろうと、ロンドンで出した記録であろうと、アメリカで出した記録であろうと一緒なんですよ。海外の人にタイムを言ったときに、特に疑問が浮かぶこともなく素直に伝わるんですよね。
ただ…やっぱり「走るだけなんて無理やわ」という方もたくさんいますよね。球技出身の方とか(笑)。走るだけなので、ごまかしが利かない。不摂生な生活をすると、本当に顕著に結果に出てしまうし、精神面も大いに影響します。「運がよくて勝てたね、いいよね」とかじゃない。私たちは、0コンマ何秒の差を評価されるスポーツをやっています。ある意味1番厳しいスポーツなのかもと感じています。

ラジねえ。:数字やタイムはごまかせないですよね。

小崎:そうなんです。でも、タイムがあれば世界中の人と話せます。遠征先の空港の税関でも、「マラソンに出ます」と言ったら「〇時間〇分で走るの?ワーオ!」とか言われるんですよ。スポーツ以外の場面でもコミュニケーションのツールになるので、なんだか一石二鳥…三鳥の競技だなと思います。

ラジねえ。:いい競技ですね。

小崎:お金がなくても、貧富の差があってもなくてもできる競技だし、本当にすばらしいスポーツだと感じています。

ラジねえ。:ノーリツ女子陸上競技部として今後目指していることを教えてください。

小崎:おそらく皆さんにとって私たちは「そんなチームがあるんだ」という認識だと思います。今回ラジねえ。さんとご一緒させてもらったのをきっかけに、別の場所で「あの子たちGrowSに出てたよね!」と、もう1回見てもらえるような選手たちになってほしいですし、そういうチームでありたいなと思います。
また、ただ走っているだけじゃなくて、会社の中での健康経営だったり、世の中のスポーツだったり、ダイバーシティ(多様性)だったり…そういった部分も考えていけるような集団にしていきたいなと考えています。

ラジねえ。:最後にGrowSを見ている方へメッセージをお願いします。

小崎:私たちが取り組む陸上競技は、たくさんの人が経験あるもので、活躍する機会も多く与えてもらえています。だから、私たち自身も元気な姿をどんどん発信していって、皆さんにいい影響を与えられるように頑張ります。たくさん応援してもらいたいですし、ノーリツ女子陸上競技部を見かけたらぜひ声をかけてください!

【ラジねえ。コメント】

ノーリツ女子陸上競技部は、本当に元気で活力溢れるチームです!
ラジオ体操もノリノリで楽しくコラボしていただき、インスタ映えするような弾けた集合写真も全員で撮ったりして、まるで学生に戻ったような気持ちで楽しい時間を過ごさせてもらいました。
そんな一面もありながら、陸上競技に対しては熱い想いを持ち、企業スポーツチームとして社会貢献活動を積極的に行う姿勢、素晴らしいです。
そんなノーリツ女子陸上競技部を、より多くの方に知っていただき、みんなに応援されるチームになってほしいです。みなさん応援よろしくお願いします!