ウォーキングフットボールは、サッカーの発祥地でもあるイギリスで生まれました。イギリスのスポーツクラブやプロクラブなどで、シニア年代を中心に活動されています。世界では53か国以上がIWFF国際連盟に提携し、国際大会も頻繁に開催。欧州を中心にFIFAにも認められ、アジア圏でもマレーシア、シンガポール、香港、オーストラリアなどで普及しています。また、医療機関では、健康スポーツ領域としての研究も進み、競技としてだけではなく、健康増進、認知症予防、介護予防など、運動予防医療としても注目されているのです。
今回インタビューしたのは、ウォーキングフットボール「アルクオーレ」に所属する渕上千春選手。渕上選手は偶然ウォーキングフットボールに出会い、家族のように大切な「アルクオーレ」のメンバーと日々練習しています。そんな渕上選手にウォーキングフットボールのルールや魅力についてお話を伺いました!
目次
安心してボールを受け取れる!フットサルからウォーキングフットボールへ!
まず渕上さんが「ウォーキングフットボール」を始めた理由を教えてください。
ウォーキングフットボールに挑戦する前は、フットサルをしていました。フットサルを始めた当初は「どっちにシュートすればいいのか」わからない状態から始まり、相手にボールが取られそうなときに慌ててしまって。周りの方々が上手なので「早く追いつきたい」と思い、さまざまなところにフットサルを練習しに行きました。ですが初心者だとなかなか上達できず・・・。そんなとき、たまたまウォーキングフットボールが練習をしているのを発見しました。初めて見た時は「なんだろう?つまらなそう」と思っていました(笑)
実際にウォーキングフットボールに挑戦してみていかがでしたか?
実際にウォーキングフットボールに挑戦してみたら、すごく楽しかったんです。ウォーキングフットボールは相手も歩くし、自分も歩いて、安心してボールを受け取ることができます。自分がボールを蹴るとき、慌てず、次はどこにボールを出したらいいか考えることができるので、自分に合っていると感じました。気づいたら周りにウォーキングフットボール仲間が増え、仲間に会うことが楽しくてどんどんハマっていきました。
安心して参加できることが素敵ですね。
焦ったりせず、安心して参加できることがとてもいいと思いました。ちなみに、あまり動いていないわけではないんです。初めてウォーキングフットボールに参加した次の日、背中が筋肉痛になりました。早歩きで使う筋肉と、フットサルで使う筋肉はまったく違うことを実感しました。
ウォーキングフットボールに参加して、最初驚いたルールなどありましたか?
フットサルだと走ったり、つい熱くなったりしてしまうのですが、ウォーキングフットボールだと「あれ?今わたし走った?」と自分で手を上げて申告するんです。走ってしまうと「ファール」になります。大会になると審判がいたりするのですが、普段の練習は基本的に自己申告で「走った」と伝えます。ファールの場合は相手にボールを渡すので、自分のチームだけでなく、相手のチームとも交流が生まれるのが素敵だと感じました。
走らない!強くボールを蹴らない!ウォーキングフットボールならではのルール
ウォーキングフットボールのルールについて詳しく教えてください。
先ほどの「走るの禁止」以外だと、基本的に蹴るときはボールを転がします。蹴ったボールの高さは、1メートルくらいまでの高さが許されています。ちなみに、オフサイドはありません。相手との接触も禁止です。相手がボールを保持しているときは自分から取りに行かず、トラップミスなどがあった場合にパスカットを狙います。
接触禁止なんですね!
そうなんです。さらに言えば、スライディングもヘディングも禁止です。なので相手が勢いよく立ち向かってくる怖さはないのが、ウォーキングフットボールのいいところです。小さい子どもも危なくなく参加することができます。とにかく大事なのは、「走らない」「強くボールを蹴らない」ことです。
5歳児も楽しくプレイ!誰もが安心して参加できるウォーキングフットボールの魅力
ウォーキングフットボールには他にどんな魅力がありますか?
幅広い方々が参加できることです。以前、浜松の「まぜこぜスマイルウォーキングフットボール」というものがあり、電動車いすサッカーの方々と一緒にウォーキングフットボールをしました。障害を持っている方も、年齢も関係なく、みんなでウォーキングフットボールができるというのも魅力です。
「アルクオーレ」のチームメンバーの年齢層について教えてください。
上は60歳くらい、下は孫世代まで一緒にゲームをしています。実は、私の娘も一緒にウォーキングフットボールをやっているんですよ。小学生6年生なんですが、アルクオーレのメンバーに混ざってゲームに参加しています。もっと下だと、チームメンバーのお孫さんがなんと5歳で、パパも一緒に三世代でゲームに参加していました。
5歳まで!しかも3世代で参加できるんですね!
そうなんです。他にはどんな方がいるかというと、サッカーをやっているうちに膝を怪我してしまい、「もうスポーツできないのでは」と落ち込んでいた方もいます。ウォーキングフットボールの理事長は元々サッカーをやっていました。人工股関節になってしまい、サッカーをやり続けると、もう歩けなくなってしまうかもしれないと言われていたそうです。走らない、誰かと衝突しないものに挑戦しようと思った際、ウォーキングフットボールに出会ったのだとか。怪我をしてしまった方も、ウォーキングフットボールなら安心して参加することができます。
やはり、どなたでも安心して参加できるのが素敵ですね。さらに歩くので健康にいいですよね。
ただのウォーキングだと飽きてしまいますが、仲間と一緒に歩くと本当に楽しいです。2時間もやると、たくさん歩く方では1万歩も歩きます。ボールを追いかけて行く程度でも5千歩ほどになります。なので、健康維持にもとてもいいです。ちなみに、ウォーキングフットボールの研究文献では、1ゲームの平均歩数は7千歩だそうで、健康寿命を延ばすことにも効果的なんだそうです。
サッカー経験は必要なし!活躍できるのは、思いやりがある人!
ちなみに、ウォーキングフットボールに向いている方はどんな方ですか?
「相手を思いやることができる人」だと思います。ウォーキングフットボールは、仲間が蹴りやすいように、立っている場所を見てボールを蹴っていきます。強く蹴りすぎたりせず、仲間がやりやすいようにすることが大事です。車椅子の方でも、目が見えない方でも、おじいちゃん、おばあちゃん、走ることはNGだとわかる小さい子まで、幅広い方々に楽しんでいただけるスポーツです。
初めてウォーキングフットボールをする方が意識したほうがいいことはありますか?
まずは「走らないこと」ですね。サッカーをやるとなると「無理、走れない」と思うのに、ウォーキングフットボールはつい走ってしまうことがあります。また、歩かなきゃと思うことに意識しすぎて、右手と右足が一緒に出てしまうことも(笑)歩くことを忘れないことですね。他には、私たちのチームは「楽しく、怪我なく、とにかく笑おう」ということを大切にしています。チームワークや、協調性が大事です。相手への思いやりを持っている方だったらどんな人も楽しむことができます。
一方で、初めてウォーキングフットボールに参加した方が戸惑うことはありますか?
最初はボールパスの強弱が難しいので、「相手チームに取られないように」と意識しすぎるあまり、仲間がいる場所より大きく前の方にボールを出してしまうこともあります。また、「走ったら間に合うのに」と思う瞬間があるくらい慌ててしまうことも。まずはゆっくり、丁寧に、自分が落ち着くことですね。
今までどんな方がウォーキングフットボールで活躍されていましたか?
実は、今までサッカーに参加したことない、モデルウォーキングの先生が活躍していました。ゲームに参加した日に、経験者の誰よりも得点して帰っていきました(笑)体幹があると強いかもしれないですね。また、ウォーキングフットボールで活躍する人の特徴は落ち着いている人の印象があります。
落ち着いている方が活躍しやすいんですね。
そうなんです。落ち着いて周りが見える人、視野が広い人が活躍する印象です。相手を見て、相手に合わせたパスが出せる人が活躍します。先ほども伝えた「思いやりがある人」が強いですね。ウォーキングフットボールに参加すると、相手を思いやる気持ちが鍛えられます。
「アルクオーレ」は家族。出会えて良かったと思える仲間ができる!
渕上選手から、初めてウォーキングフットボールに参加する方へメッセージをお願いします。
とりあえず、ウォーキングフットボールにチャレンジして見ませんか?ウォーキングフットボールを知らない人には「歩いてる?おもしろいの?」と思われることもありますが、いつも使わない筋肉を使うのも刺激的です。また、一緒にやっている仲間も優しく、きっとウォーキングフットボールに参加するだけで新しい発見が多いと思います。まずは、とにかくやってみてほしいです!
ウォーキングフットボールの練習会に参加するためには?
まずはウォーキングフットボール連盟のホームページのカレンダーを見てください。曜日、時間で練習会の予定を見ることができます。自分が行ける日時に予約していただき、まず練習会に来ていただけたら嬉しいです。もしかしたら、練習会の日程によってたまたま人数が少ない会もあると思うので、3回くらいさまざまなチームの練習会に参加いただけたら、より楽しさがわかると思います。
参加する上で、必要なものはありますか?
運動靴と笑いと気合いです(笑)まずは、運動ができれば大丈夫です。体育館で練習するため、運動靴は必要になります。そのうえでで、楽しむ気持ちが大事です!
最後に皆さんへメッセージをお願いします。
私の場合、ウォーキングフットボールが大好きになった理由は、仲間の存在がすごく大きいです。年齢が違うので、人生相談もできます。ウォーキングフットボールを通して、年齢関係なく仲間ができ、たくさん助けてもらっています。ちなみに、「アルクオーレ」を選んだ理由は、一番居心地が良かったからです。「ウォーキングフットボールファミリー」という言葉があるくらい、「アルクオーレ」は家族だと思っています。「出会えて良かった」と思える仲間ができることも魅力だと思うので、ぜひ皆さん、まずは練習会にお越しください!
取材後記
「アルクオーレ」所属の渕上選手のお話をお伺いして、大人になっても家族のような仲間に出会えることが素敵だと思いました。練習会を見学させていただきましたが、「アルクオーレ」の皆さん全員が、チームメンバーのゴールを一緒に喜び合うなど、楽しむことに全力な姿がとても印象的でした。大切な仲間にも出会える、しかも健康にもいい。そんなウォーキングフットボールの魅力が一人でも多くの方に伝わったら嬉しいです。
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