特集2022.09.09

中谷祥吾さん×近江克仁さん 「次世代」の道を拓け!「究極のチームスポーツ」をもっと身近に【中編】

母校である関西大学で職員として働きながら、社会人リーグIBM BIGBLUEの主力選手としても活躍中の中谷祥吾さん(写真前列右、なかたに・しょうご、30、関西大~IBM)。プロ選手としてIBM BIGBLUEに所属し、日本人初のNFL選手を目指す近江克仁さん(写真前列左、おうみ・よしひと、26、立命館宇治高~立命館~IBM)。2020年には、共に日本代表にも選出され、キャプテン(近江さん)、副キャプテン(中谷さん)として、チームJAPANを率いました。華やかな活躍ぶりでアメフト界を沸かせるお二人が見据えるフィールド、それは「次世代」。「自己成長や自己実現のステージとして、アメフトというスポーツに親しむ人をもっと増やしたい」と話します。「究極のチームスポーツ」とも表現されるアメリカンフットボールを通じ、次世代に伝えたい「学び」を、前編・中編・後編の3本でお届けします。中編では、アメリカンフットボールを通じた「自己成長」、と「次世代への思い」に迫りました。(撮影(アイキャッチ)/杉田恵さん)

「アメフトに例えて考えればすべて解決する」ー社会生活で活きる〝組織力〟

中谷さんと近江さんが考える「スポーツを通じた成長」とは、どんなものでしょうか。

中谷さん:綿密なコミュニケーションを重ね、それぞれの思いを同じ方向に向けることって、人数が多ければ多いほど難しいことだと思います。だからこそ、人数の多いアメフト競技において、コミュニケーションが行き届いているチームほど、組織力が高まり、チームづくりを通じて、結果が伴いやすいのではないかと感じています。スポーツを通じて、社会生活の中でも活かせるような経験ができることは、貴重だと思います。

▲かつて関西大学アメフト部副将をつとめた中谷さん(写真中央)は「スポーツを通じて、社会生活の中でも活かせるような経験ができることは、貴重だと思います」と話す(提供/中谷祥吾さん)

近江さん:スポーツの中でも、アメフトは会社の「組織図」にすごく似てるなと思っていて。監督がいて、コーチがいて、主将がいて…その下にポジションが幾つにも分かれている。それでいて、それぞれのポジションごとに、強化する内容は異なりますよね。
そういったチームの組織図は、会社の組織図にどこか似通った部分があると感じています。僕が就職活動をしていた時も、多くの先輩から「社会人になって、何か困ったことや悩みができたら、アメフトに例えて考えればすべて解決する」とアドバイスをもらったこともありました。社会に出る前に、「人生をサバイブする力」を養う経験ができたことは、自分自身を振り返っても、とても大きな財産になったと思っています。
また、日本一になるという目標を掲げるチームは多いと思いますが、「日本一になって、自分はどうなりたいのか」という、「日本一のその先」を考えることが最も重要だと思います。スポーツを通じて、自分自身の生き方の指針になるような考え方を育む経験ができることは、とてもいいことだと思います。

「コーチ不足にあえぐ地方の学生たちにも」ー地域格差のないアメフト普及を目指して

スポーツを通じた学びが「人生の指針」になっていく。これから社会に羽ばたく学生の皆さんにとって、大変貴重な経験ですよね。教育の一環としての「アメリカンフットボール」を考えた時、お二人が発信する情報やコンテンツがどのように機能してほしいですか。

近江さん:僕は2つの目標を軸に活動していて、その中の1つが「NFL選手を目指すこと」、もう1つが「自分の技術・知識・経験を発信すること」です。そういった目標を踏まえ、「アメリカンフットボールの魅力を広く伝えていきたい」という、同じベクトルの情熱を持った御社(株式会社rtv)と共に、質の高いコンテンツを届けていきたいと思いました。また、コーチ不足にあえぐ地方の高校生や大学生にも、自分の技術や経験を共有していけることに、大きな可能性を感じています。

▲「NFL選手を目指すこと」、「自分の技術・知識・経験を発信すること」を軸に海外挑戦に挑む(撮影/@mariannw_photography、提供/近江克仁さん)

中谷さん:8月8日に東北地方でおこなった対面式のクリニック(「FOOTBALLCAMP in Sendai Powered by rtv」)を、御社(株式会社rtv)と共におこなったことにも通ずるのですが、根底にあるのは、「アメリカンフットボールを多くの人に知ってほしい」という思いです。アメリカンフットボールにふれることで、純粋に「楽しい」という気持ちを多くの人に味わってほしいなという気持ちもありますし、現役の競技者としても、コーチ不足に悩む地方の学生の皆さんに対して、アメリカンフットボールに関する技術や知識をシェアできるというところに大きな意義を感じています。


▲「FOOTBALLCAMP in Sendai Powered by rtv」の様子。活動の根底にあるのは「アメリカンフットボールに触れることで、純粋に〝楽しい〟という気持ちを多くの人に味わってほしい」という指導者としての思い(撮影/杉田恵さん、提供/中谷祥吾さん)

「まずは、自分たちが発信していく」ーコンテンツを通じ、多くのアメフトへの熱い思いをカタチに

アメフトを通じて「自分がどういう人間になりたいか」ということを見つけるきっかけを創造してほしいとのことでしたが…。強いて言うならば、どういった方たちにこのコンテンツが届いてほしいなと思いますか。

近江さん:アメフト界にいる人たち全員に観たいと思ってもらえるようなものを配信したいという思いがあるので、敢えて、ターゲットのようなものは決めていません。なので、アメフト初心者の方たちからXリーグで活躍する現役選手まで…つまり、アメフト界にいる全員に(コンテンツを)役立ててもらえたらと思っています。というのも、小学生からXリーガ-まで、全員が自身の技術力向上に役立ててもらえるようなコンテンツであるという自信があるので、(コンテンツを通じて)それぞれがスキルアップに繋げてもらうことで、日本のフットボール力を底上げしていけたらと思っています。

中谷さん:僕も、まずはアメフト界で頑張る皆さんに届いてほしいなと思っています。やはり、競技人口増加に繋げていくことを考えると、アメフトを頑張っている人たちには、より楽しんで競技を継続してもらうこと、アメフト未経験者の人たちには、競技をやってみたいと思ってもらうこと、この2つの要素が必要だと思っています。その上で、「アメフト界の情報基盤のような役割を担うプラットフォームを作ること」が今、最も求められていることだと感じていますし、いいコンテンツを配信することで、「自分もこういったコンテンツを作ってみよう!」と思う人がどんどん出てきてくれたらと思っています。
私が過去にオンラインセッションをおこなった時も、この活動と模倣するようなアクションを、たくさんの選手が起こしてくれていて…。あらためて、「失敗を恐れずにアクションを起こす」ということが、とても大切だと感じました。
アメフトが大好きな方、アメフトに対する強い思いをもつ現役選手やOB、そしてOGの皆さんなど、アメフトへの情熱を持つ方はたくさんいらっしゃると思いますが、やはり「形にしていく(コンテンツや情報の配信を活動としておこなっていく)」ことは、パワーも勇気もいることだと思うので…。まずは自分たちが先駆けとなって発信していくことで、多くの方たちの熱い思いを共に形にしていけたらいいなと思っています。

▲「まずは自分たちが先駆けとなって発信していくことで、多くの方たちと共に熱い思いを形にしていけたら」―多くのアメフトへの熱き思いを巻き込み、活動を継続させていきたいと話す(撮影/杉田恵さん、提供/中谷祥吾さん)

近江さん:「多くの方たちの熱い思いを共に形にしていく」という意味で、日本のアメリカンフットボール協会の方たちにも、ぜひ、このコンテンツに懸ける思いが届いてほしいなと思っています。僕の父親が立命館大学でアメリカンフットボールをしていた時代の映像を観ると、試合がおこなわれていた長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)が満員になるぐらい、観客席が埋め尽くされていたんです。そんな父親の時代と、現在のアメフトの状況を相対的に比較した時に感じた「衰退」が、「日本のフットボール力を底上げしたい」という、自分自身の思いに繋がったのではないかと感じています。
アメリカンフットボールの長い歴史と共に歩まれてきた協会の皆さんだからこそ、アメフト界に熱い思いを持つたくさんの方たちに求められるようなコンテンツや情報を発信できる「重み」があると思っています。現役選手である僕たちが協力できることがあるならば、ぜひ尽力させていただきたいなと思います。

「人生のどこかでアメフトに触れる機会を」―「次世代×楕円形」が生む〝自己成長のカギ〟

近江さんから、世代間で移り変わるアメフト界の変遷のお話がありましたが、お二人が抱く「次世代」への思いについて聞かせてください。

中谷さん:大阪の北部(北摂地域)はアメリカンフットボールの競技人口が集中していたり、(活動が)盛んな印象があるのですが、南部では(アメリカンフットボールの)浸透率が低いように感じていました。私自身、大阪府堺市出身ということもあり、もともとアメフトとは縁遠い少年時代を過ごしていた中、僕とアメフトを繋いでくれたのは「アイシールド21」(「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載(2002-2009))という漫画でした。次世代の皆さんにも、人生のどこかでアメフトに触れる機会をもってもらえるような、そんなきっかけを提供していきたいなと思っています。
自分自身を振り返っても、たまたま入学した関西大学でアメリカンフットボール部に入部したことで、アメフトとの強い繋がりができました。幼い頃からアメフトとの縁がなくても、コツコツと努力し続ければ、日本代表になることもできましたし、デュアルキャリアの実現に繋げることもできました。そういった意味で、自分自身が、これからアメフトに関わってゆく次世代の皆さんにとって、1つのモデルケースになれたのではないかと思っています。
学生の皆さんからは、効果的なメニューや技術力向上のためのテクニックについての質問が多いのですが、僕が次世代の皆さんに最も大切にしてほしいことは、テクニックやメニューの根底にある〝考え方〟や〝取り組みの姿勢〟です。指導者として、そういった教育的な要素もしっかり伝えていきたいですし、〝自己成長のカギ〟を自分自身でしっかり掴んでほしいなと思います。

近江さん:僕は大きく2つあります。1つは、次世代の現役選手たちにも「もっと海外を目指してほしい」ということ。例えば、小学生のなりたい職業ランキングの上位に、よく台頭する職業は、YouTuber(ユーチューバー)ですよね。きっと小学生にとってYouTuberって「夢」があるんじゃないかと思うんです。例えば、「お金持ちになれる」とか…(笑)。そういった面から「夢」というものを考えるなら、「アメリカに行って、日本人初のNFL選手になれたほうがはるかに大金持ちになれるぞ!」という夢を繋ぐこともできるのではないかと思っています。(アメリカにおける)アメフト市場はトップビジネスの宝庫ですし、そこに(日本人が)首を突っ込んでいくというのは、大変ハードなことだとは思いますが、自分自身が人生を懸けて海外挑戦をしている以上、そういったビッグドリームを伝えていく使命があると思っています。自分が(海外挑戦を)目指すことによって、競技人口の増加や日本のフットボール力の向上に繋がればいいなと考えています。

▲「自らの海外挑戦をアメフトの競技人口増加や日本のフットボール力向上に繋げたい」(撮影/@mariannw_photography、提供/近江克仁さん)

もう1つは、経験者、未経験者問わず、次世代の皆さんにアメフトをもっと身近に感じてほしいなということ。というのも、数年前から学校の体育の授業で、フラッグフットボールが扱われたり、2028年のオリンピック競技にフラッグフットボールが加わるという推測があることも踏まえ、昨今、次世代の皆さんが楕円形のボールに触れる機会が増えているように感じています。なので、そういった「次世代×楕円形」というムーブメントへのアプローチを、Xリーグや大学の強豪チームが率先しておこなう必要があると感じていますし、その過程で「アメフト選手に触れる」という機会を創出することによって、次世代の皆さんのアメフトへの興味を生むきっかけになるのではないかと思っています。

次回の【後編】では、近江さんと中谷さんが考える「アスリートのキャリア形成」についてや、アメリカンフットボールにおける「今後のビジョン」について迫ります。

▶【前編】「中谷祥吾さん×近江克仁さん「次世代」の道を拓け!「究極のチームスポーツ」をもっと身近に」
https://grows-rtv.jp/contents/article/4940

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