特集2021.09.30

アメリカンフットボールXリーグの今井善教さん (40) 大学と社会人で日本一を経験した元ディフェンスバックが描く未来とは?  《プレーする人・支える人・楽しむ人 関わる人すべてが “ Xファミリー ”という家族》 ラジオ体操もファン拡大ツール?!

アメリカンフットボール最高峰のリーグ Xリーグ(日本社会人アメリカンフットボール協会)今井善教(よしのり)さんは、Xリーグに所属する富士通フロンティアーズ(神奈川県川崎市)の主将を務め、二度の日本一を経験、14年間現役選手として活躍しました。
3年前からXリーグに出向、リーグの事業スタッフとしてアメリカンフットボールの普及などをメインに活動されています。新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言中にはオンラインでさまざま取り組みを始めたXリーグ、その取り組みの中で、《オンラインでラジオ体操をされている》という情報を得た ラジねえ。ならば話を聞かずにいられない!と、意気込んで 神奈川県の富士通スタジアム川崎へ行ってきました。

▼今井善教 Imai Yoshinori プロフィール ▲
 1981年2月14日生まれ 40歳 
 京都府出身 立命館宇治高校〜立命館大学〜富士通
 2017年に引退、2018年8月からⅩリーグに出向
 現役時代のポジション:DB(ディフェンスバック)

大所帯がひとつの目標に向かって動く アメリカンフットボールの魅力

ラジねえ。:今井さんの経歴を教えてください。

今井:私は立命館宇治高校でアメリカンフットボールを始めて、立命館大学に進み、4年時に学生日本一を決める甲子園ボウルで優勝。ライスボウルでも社会人チームに勝利し日本一になりました。卒業後はXリーグの富士通フロンティアーズに入団。選手としては2016年まで14年間プレーしていました。Xリーグでは2014年、2016年に日本一を経験しました。アメリカンフットボールはひとりでは勝てないスポーツなので、チームメートに恵まれみんなと切磋琢磨して、結果が残せたのかなと。いい現役生活を過ごすことができたと思っています。

ラジねえ。:アメリカンフットボールは高校生のときに始められたということですが、きっかけは何だったんでしょう?

今井:私が中学3年のときに立命館大学が学生日本一になったんです。試合を深夜のテレビで見ていて、当時「アニマルリッツ(パワーとスピードに優れ、まるでアニマルのように戦う姿から)」と呼ばれたディフェンスバックの選手たちがすごく格好よくて。そのアニマルリッツの選手たちに憧れて、自分自身もアメリカンフットボールでディフェンスがしたいと思いました。

ラジねえ。:アメリカンフットボールは、他のスポーツをやっていた人が高校や大学から始める例が多いですが、初心者でも始めやすい競技なんでしょうか?

今井:そうですね、初心者の方でも全然問題なくチャレンジできます。最近はXリーグの中でも、社会人になってから始める人が出てくるくらい。ポジションによって役割がそれぞれ明確に定められているので、適材適所に合うものを持っていればチャレンジしやすいのかもしれないですね。

ラジねえ。:アメリカンフットボールならではの魅力って何ですか?

今井:やっぱり、いろんな選手がいる…っていうのは普通の回答ですね(笑)。大きい人もいれば小さい人もいるし、価値観が全然違う人もいる。大人数いますが、コーチもトレーナーもマネージャーも、チームにとっては重要な欠かせない存在。
組織としてひとつの目標に向かうというのは、アメリカンフットボールでは特に大きいことなのかなと思うし、それがすごく魅力です。

ラジねえ。:ベンチに何人でも入れるというのは驚きました。

今井:野球だったらベンチに入れるのは18人とか決まっていて、それ以外の選手はスタンドで応援というかたちですよね。アメリカンフットボールは、フィールドのサイドラインで全員が並んでいる。チームで一体となって試合に挑むところが競技の魅力だなと思います。

2014年 アメフト人生最高のシーズン 富士通フロンティアーズ 日本一

ラジねえ。:長くアメリカンフットボールをしてきた中で、人生最高の瞬間はいつでしたか?

今井:そうですね…やっぱり、優勝した瞬間っていうのは忘れられないですね。2003年に富士通に入社して、ずっと負けていたんですよ。負け続けて10年。そのとき33歳で、年齢的にもチームで上の方になって、試合に出る機会も多くはなかった。次で優勝できなかったら辞めようと考えていました。今年が最後と決めてやり切ろうと、2014年のシーズンに入りました。そして、その2014年に初めて優勝して、本当に嬉しかったというか、今までずっと積み上げてきたものがやっと花開いたなと、そういった思いでしたね。チームとしても、1985年の創部から30周年を目前にしていて。これまでチームを築いてきてくれた人たちからの思いを受け取っていたので、背負っているものも大きかった。だから初めての優勝は、すごく達成感がありましたね。

ラジねえ。:そのとき今井さんはチームのキャプテンでしたよね。なぜ優勝できたと思いますか?

今井:「なんで勝てへんのや」、「なんで勝てへんのや」っていうのをずーっと繰り返してきて、「こんなんで辞めれへんやろ」と思っていました。やっぱり学生のときに優勝しているのが大きかったかもしれないです。学生で優勝して、社会人では達成せず終わるというのが自分の中で考えられなかったし、フロンティアーズは絶対に優勝できるチームだと思っていたので。そこは、是が非でも達成したいというこだわりがありました。

Xリーグの中の人としてのミッション 「もっとアメフトファンを増やしたい!」

ラジねえ。:初優勝の後、2016年にも日本一を経験して、現役を引退。今はどういうお仕事をされているんですか?

今井:富士通からXリーグの事業部に出向しています。今は、どれだけアメリカンフットボールのファンを増やせるか、ファンの方に楽しんでもらえるにはどうすべきかを考えることが自分のミッションだと思って資金調達のための活動が中心です。具体的には、試合の企画運営や試合以外のイベント企画、配信サービスの運営など。スポンサーを探しに行く営業活動とか、いろんなことをしています。

ラジねえ。:新型コロナの影響で春の試合がなくなってしまいましたが、Xリーグとしてはどんな対応をされたのですか?

今井:試合はなくなりましたが、できることはいろいろあるなと思っていたので、結構切り替えはできていましたね。春は、学生の新歓をお手伝いを中心に行いました。もちろん、社会人も試合ができない状況だったんですけど、高校生や大学生たちも試合ができず、かつ新歓活動にも相当困っているという話を聞いていました。人材確保はアメリカンフットボール界全体として一番重要なことだと思い、新歓のためのプロモーションドラマというものを作りました。
https://www.youtube.com/watch?v=urh1sP8RIcs

ラジねえ。:見ました! 感動しました! 非常にクオリティが高い作品でした。

今井:去年の年末からクラウドファンディングで資金を集めたんですが、本当に多くの方からご支援いただきました。反響はたくさんありましたよ。ドラマの内容よりも取り組み自体を評価してくれる人が多かったです。ドラマ制作は今回が初めてだったのですが、今後も何か業界全体が一体となってできる活動をしていきたいですね。アメリカンフットボールのトップリーグとしてXリーグが業界全体を引っ張っていく存在になるべきだし、自分たちのリーグだけでなくて、大学生や高校生、もっと言えばフラッグフットボールをやっている子どもたちとか、そういったところにも目を向けて、若い世代の未来を作っていけるようなリーグになるべきだと思っています。そして、Xリーグを目指す学生たちを増やしたい、そんなことを考えています。

アメリカンフットボール × ラジオ体操  スタジアムに来たら健康になる?!

ラジねえ。:ラジオ体操もされていましたよね!

今井:去年4月に初めて緊急事態宣言が発令されてから約1年間、月・水・金曜日の朝6時半からオンラインでラジオ体操を行ってきました。医療機関が逼迫していた当時、医師の方から「自分の健康は自分で守るしかないし、自ら健康づくりをしてくれると本当に助かる」と言われて、医療従事者への感謝の意も込めて。オンラインでみんなと繋がりながら自粛生活を乗り切っていこう!というコンセプトでやっていましたね。ラジオ体操だけじゃなくて、体操後に「アメフトーク」という競技の魅力紹介を3分ぐらいするんです。そして少人数のグループに分かれて、昨日よかったこと・今日の目標を発表し合う時間を設けています。当初の参加人数は13人ぐらい。一時は120人ほど集まるときもあったんですよ。すごい伸び率ですよね。

ラジねえ。:実施した反響はいかがでした?

今井:自粛期間中で人と全然喋れず、オンラインでも喋れてよかったという声もあって。開催を楽しみにしてくれている子どもたちがいて本当に嬉しかったですし、やっている意味はあるなと思いました。常連の参加者の方は「欠かせないものになった」と言ってくれています。

スタジアムでラジオ体操をする様子

ラジねえ。:インタビューの前にも今井さんと一緒にラジオ体操をしましたが、体がだいぶ温まりましたね。私もこの富士通スタジアム川崎でできたことが嬉しくて、いつも以上に気持ちよくできました。

今井:グラウンドでやることってまずないからね。この秋はXリーグの試合でラジねえ。にリードしてもらってみんなでラジオ体操ができたら面白そうですね。

ラジねえ。:それがひとつの夢だったんです!観客全員に立ってもらって、一緒に体を動かして。
一体となってできるところがラジオ体操のいいところだと思います。

今井:ラジオ体操は健康に繋がる日本のいい文化だと思っているので、それをアメリカンフットボールでも伝えていけたらいいな。スタジアムに来たら健康になる!みたいな。
そして、あまり大きなことは言えないですけど、将来的にはアメリカンフットボール観戦を日本のひとつの文化として位置づけられたらいいな。
アメリカでは「アメリカンフットボールは文化だ」と言えるじゃないですか。普段の生活の中にあって、人々にとって欠かせないもの。日本だと野球が唯一そうなのかな?スポーツ観戦自体をみんなが伝えていく文化にしていけばすごくいいなと思うんです。
でも、それを目指すには競技だけを魅せようとしても難しい。だから健康や食事などと一緒に、日本の新たな文化としてアメリカンフットボールを伝えていければ、競技としての価値も上がるだろうし最高です。その方法として、ラジオ体操は、すごくいいツールだと思います。最終的には、アメリカンフットボールと関わってよかったな、知れてよかったなと思う人たちを増やすことが目標です。

アメフトに関わるすべての人が “ 家族 ” Xファミリー=プレーする人・支える人・楽しむ人

ラジねえ。:今井さんにとってアメリカンフットボールとは何ですか?

今井:アメリカンフットボールを通じていろんなものを学ばせてもらったし、いい競技生活を過ごすことができたので…自分にとってはすごく大切なもの。宝物みたいな感じですね。それは、私と同じように、アメリカンフットボールを宝物のように大切にされてきた先輩方がいたから。Xリーグの立場で活動する今は、先輩方から受け継いできたアメリカンフットボールという宝物を、少しでもいいかたちでみんなに、そして未来に繋げることがひとつの使命だと感じています。だから競技に関わる人をもっともっと増やしたいなという気持ちは強いですね。
すごく大事にしている言葉があるんです。富士通フロンティアーズのときのチームのスローガンにもなっていた One family というもの。ひとりひとり考え方が違うチームメイトたちを認め合って、同じ方向で進んでいくということが大事だと思っているので。

ラジねえ。:オンラインラジオ体操でも「Xファミリー」と名付けていましたよね。めちゃくちゃいい名前だと思っていました!

今井:周りの人たちを家族のように大切にして、同じ方向を向いた人たちの輪が広がっていけばいいなと思いますね。

今井さんと一緒にXポーズ

ラジねえ。:最後にGrowSを見ている方にメッセージをお願いします。

今井:スポーツをみんなの力で盛り上げていきたいですね。私は今、アメリカンフットボールという競技で、関わる人・笑顔にする人を増やすということを必死で頑張っています。みなさんも、自分の関わる競技や好きな競技を広げていくことをぜひやってほしいです。スポーツはとても力のあるものです。そのよさをみんなで広めていくことが大事だと思います。する人・支える人・楽しむ人。いろんな観点がありますが、まだスポーツを経験していない人たちの中から、そういう人を1人でも増やしていけば、もっともっと日本が元気になるんじゃないかなと本当に思っています。ぜひアメリカンフットボールも楽しんでほしいです!

2021年7月 富士通スタジアム川崎
取材・構成 ラジねえ。

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