特集2022.09.19

中谷祥吾さん×近江克仁さん 「次世代」の道を拓け!「究極のチームスポーツ」をもっと身近に【後編】

母校である関西大学で職員として働きながら、社会人リーグIBM BIGBLUEの主力選手としても活躍中の中谷祥吾さん(なかたに・しょうご、30、関西大~IBM)。プロ選手としてIBM BIGBLUEに所属し、日本人初のNFL選手を目指す近江克仁さん(おうみ・よしひと、26、立命館宇治高~立命館~IBM)。2020年には、共に日本代表にも選出され、キャプテン(近江さん)、副キャプテン(中谷さん)として、チームJAPANを率いました。華やかな活躍ぶりでアメフト界を沸かせるお二人が見据えるフィールド、それは「次世代」。「自己成長や自己実現のステージとして、アメフトというスポーツに親しむ人をもっと増やしたい」と話します。「究極のチームスポーツ」とも表現されるアメリカンフットボールを通じ、次世代に伝えたい「学び」を、前編・中編・後編の3本でお届けします。後編では、アスリート、そして一人の社会人として抱く〝キャリアへの思い〟について伺いました。(撮影(アイキャッチ)/杉田恵さん)

〝どうなりたいか〟を常に心に問いかけて

新卒で入社した企業を退社後、海外挑戦を通じ、競技の普及や競技力向上のための活動をおこなっている近江さん。大学職員として勤務する傍ら、現役選手としても活動するデュアルキャリアを選択された中谷さん。どんな思いがキャリアメイクに対する主体性につながっているのでしょうか。

中谷祥吾さん(以下、中谷さん):僕自身、「社会人になってもアメフトを続ける」ということを学生の時から決めており、その時から「なぜアメフトを続けたいのか」ということを真剣に考えていたことが大きかったのではないかと思います。もちろん、企業で働きながら実業団の一員としてアメフトを続けるいう選択肢もありましたが、「アメフト選手を引退してからの人生のほうが長いよな」と感じていたことも事実で…。
例えば、現役選手を30歳で引退した場合、あと30年~35年ほど、会社員として働くわけですよね。「引退後、その会社で主体的に働き続けることが想像できるか」、「それは自分が本当にやりたいことなのか」ということを考えた時、実業団の一員としてアメフトに注力するという選択が、自分にとっては何だかフィットしなくて。そんな時、母校である関西大学から「大学職員として働かないか」とお声掛けいただきました。母校に恩返しできる環境に身を置けることはもちろん、学生の時からやってみたかった〝コーチング〟を実践する場としても、大変素晴らしい環境で働けているなと実感しています。

▲「FOOTBALLCAMP in Sendai」で学生に指導をおこなう中谷さん。学内外を問わず、主体性をもって〝自己成長〟のフィールドを広げている(撮影/杉田恵さん、提供/中谷祥吾さん)

また、大学職員として働きながら、現役選手として活動する様子を、学生の皆さんやアメフト部の後輩たちに身近に感じてもらうことで、彼らがキャリアモデルを考える時、何か参考にしてもらえる部分があれば嬉しいなとも思っています。未来は無限大の可能性を秘めているからこそ、何も考えずに時間を過ごすことは、とてもナンセンスだと思います。アメフトにおいても、仕事においても、「自分がどうなっていきたいか」ということを常に考えながら、これからの道をつくっていきたいなと思います。

近江克仁さん(以下、近江さん):僕はアスリートに限らず、「自分自身の考えを発信すること」や、「海外に目を向けて視野を広げること」がキャリアメイクにおいて、とても大切なことだと思っています。「自分自身の考えを発信すること」について、例えば、アメフトやマイナースポーツなど、普及率が低い競技は、誰かがその競技について発信しなければ、価値や魅力に気づいてもらうことが難しいですよね。それと同じで、打ち込んでいることや興味のあることを自分自身で発信しなければ、賛同者もアドバイスも回ってきません。SNSでの発信はもちろんですが、まずは、信頼を置く友達に話してみることから始めてみてください。そうすると、興味のある情報が自分に寄ってくるようになりますし、視野を広げるきっかけも掴めるんじゃないかと思います。

▲近江さん(写真左)は、自分の思いや行動を発信することが、必要な情報や視野拡大のチャンスを掴むきっかけになると話す(提供/近江克仁さん)

「海外に目を向けて視野を広げること」については、僕自身の就活の経験も踏まえてお話したいのですが…。日本における就活の姿勢って、〝短期決戦〟のイメージが強いですよね。 (就活までの期間に)将来の働き方や就きたい職業について具体的にイメージできているわけではないのに、ほとんどの学生が、約半年という短い就活期間で自分の就職先を決めるわけじゃないですか。アスリートや体育会学生の場合も、ひたすらスポーツに没頭してきた中、いきなりキャリアや将来のことを考えるフェーズに入るわけで…。それって、なかなか難しいことだと思うんです。
自分自身も経験も踏まえ、学生の皆さんに伝えたいのは、〝就職に焦らなくてもいい〟という考え方です。例えば、ドイツでは、ほとんどの人が30歳まで学生時代を歩むんですね。30歳までに手に職をつけ、そこから起業したり、資格をとって専門職として働く人も多くいます。アメリカでも、長期のインターンシップを通じて、「本当に自分が働きたい場所かどうか」ということを学生に問いかける姿勢が根付いています。そういった意味で、海外の学生は日本の学生に比べ、長期的に自分の将来について考えているなと感じます。周りに流されたり、変に焦ったりせず、まずは〝自分自身の個性をどのように生かせるか〟を考え、もっと広い視野を持ち、キャリアについてじっくり考えるべきだと思います。その過程で、自分が本気で打ち込みたいものや、充実度の高いキャリアを形成するきっかけが見つかるのではないかと思います。

▲近江さん(写真中央)は視野を広げ、さまざまな価値観にふれることが情熱を注げる夢や充実度の高いキャリア形成に繋がると話す (提供/近江克仁さん)

心の底からやりたいことを選択できる〝強さ〟を

充実度の高いキャリアを形成するためには、〝自分自身のことを深く知り、掘り下げること〟がポイントになりそうですね。

近江さん:そうですね。自分自身を深く分析したり、周りのノイズとは一線を画して、〝自分自身の志〟と向き合うことが大切だと思います。周りの行動や意見を経由した〝志〟ではなく、純粋に自分が心の底からやり遂げたいと思ったことを選択できる〝強さ〟も大切です。自分の選択に迷う気持ちもよくわかりますが、(就活を始める)22歳であれば、人生100年といわれている現代においては、まだ約70年もありますよね(笑)。まだまだ、この先の人生のほうが長いのだから、そんなに焦らず、自分自身の未来をしっかり見据えた選択をしてほしいなと思います。

中谷さん:自分について掘り下げたり、客観的に分析するきっかけは、行動の中にあると思っています。頭で描いていることを行動に移す過程で、自分の理想が明確になったり、(自分の理想に)フィットする活動に関わることができるようになると思うんです。
また、どのスポーツにも共通していえることだと思いますが、自分自身のことをよく知ってこそ、上達に繋がるアプローチを見つけることができます。〝自分の課題に気づき、どのようなプロセスを踏んで、どうアプローチするべきなのか〟ということを適切に判断できるよう、何事も〝客観性をもって考えること〟が大切だと思います。

▲関西大学アメフト部時代の中谷さん(背番号13番)。「自分自身をよく知り、深く理解することが上達への第一歩」―アメフトを通じ、客観性をもった課題へのアプローチを学んだ(提供/中谷祥吾さん)

心満たすコンテンツをアメフトを愛する〝すべての人〟へ

コンテンツの配信(アメフトライブ by rtv)やお二人自身の活動について、今後の展望を教えてください。

近江さん:まず、海外挑戦を終えてから、1年間は(アメフト)競技の普及と競技力向上のための活動に集中しようと決めています。海外挑戦をしたことで、今、一番海外のアメフトについて知っている立場にいると思っています。それは、〝海外のアメフトについての知識・経験・技術のすべてを兼ね備えた状態である〟ということであり、それらを発信するべき立場にあるということだと思っています。

▲本場、アメリカでプレーする近江さん。「自分自身が海外で学んだ〝すべて〟を発信するべき立場にある」ー次世代へのバトンに熱き思いを込める(提供/近江克仁さん)

僕の小さい頃の夢は〝NFL選手になること〟でした。しかし、当時は現代のようにSNSが普及しておらず、リアルなNFLに関する情報が手元に回ってくることがあまりなかったんです。なので、目の前にある〝日本一〟という目標だけを見つめ、〝日本一のレシーバーになりたい〟という一心で、競技力向上に力を注いできました。でも、小さい頃に描いていた夢…つまり〝NFL選手になる〟という夢を追い続けていたら、また違う選手生命があったのかな、とも思うんです。今、「NFL選手になりたい」、「アメリカでプレーしたい」という夢や目標を掲げている小さい子や選手たちが、その夢に向かってまっすぐ行動していけるよう、自分が肌で感じたNFLについてや、海外のアメフトについて、しっかり発信していきたいなと思っています。

▲「FOOTBALLCAMP in Sendai」で学生に指導をおこなう近江さん。海外挑戦の夢や目標を掲げるフットボーラーたちの〝道しるべ〟として、自身が得た知識・経験・技術をしっかり発信していきたいと話す(撮影/杉田恵さん、提供/近江克仁さん)

その一環として、今、全国各地で頑張る約2万人のフットボーラー全員に登録してもらえるような配信コンテンツを作っていきたいと思っていますし、何万人といらっしゃるOBやOGの方にも、心から楽しんでもらえるようなコンテンツを配信していきたいと考えています。
「1番面白いアメフトコンテンツといえば、〝アメフトライブ by rtv〟」といってもらえるような満足度を目指し、制作に携わっていきたいです。

中谷さん:まずは、自分が現役選手としてトップであり続けることがとても大事だと思っています。自分自身の競技に対する姿勢や、継続して取り組んできている活動について発信することで、少しでも参考にしてもらえる部分があれば嬉しいなと思います。

▲アメフト・Xリーグ1部所属チーム・IBM BIG BLUEの主力選手としても活躍中の中谷さん。「まずは、自分が現役選手としてトップであり続けることが大事」―競技に対する姿勢や自身の活動から参考にしてもらえる部分があれば嬉しいと話す(提供/IBM)

また、実際にそういったことを発信して得られた反響も大きく、〝現役選手が発信していくことの重要性〟を肌で感じています。コンテンツを配信することで、自分の思いや活動について、より多くの人に知ってもらえたことにも、とても感謝しています。そして、クリニックの開催やコンテンツの配信を通じ、より多くの方の熱い思いも巻き込み、(熱意や思いが)伝播していくような流れができたら嬉しいです。少しでも多くの人に、アメフトという競技に興味をもってもらえるよう、これからも活動していきたいと考えています。

(取材・文/秋山彩惠)

▶【前編】「中谷祥吾さん×近江克仁さん「次世代」の道を拓け!「究極のチームスポーツ」をもっと身近に」
https://grows-rtv.jp/contents/article/4940

▶【中編】「中谷祥吾さん×近江克仁さん「次世代」の道を拓け!「究極のチームスポーツ」をもっと身近に
https://growsrtv.jp/contents/article/5620 
                                                         
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