特集2023.06.23

「部の歴史を自分たちの代で止めたくない」 新たな一歩で芽生えたOBとの絆、そして決意 神奈川大学アイスホッケー部・水野侑武

1945年に創部され、数多くのOBが名を連ねる神奈川大学アイスホッケー部。学生生活が制限されたコロナ禍や原油高による物価高騰の影響を受けて、伝統ある名門が今、窮地に立たされています。そんな現状を打開しようと、神奈川大学アイスホッケー部は自分たちにできる大きな1歩を踏み出しました。マイナー競技における部活動の課題や実情、いち学生アスリートとしてのキャリア観について、部を率いる主将・水野侑武(みずのあつむ)さんにお話を聞きました。

「競技に対する意識が高い環境に身を置きたい」期待に胸を膨らませ、神奈川大学へ

水野侑武さん(神奈川大学アイスホッケー部主将)

—プロフィールを教えてください。
水野侑武さん(以下、水野さん):神奈川大学人間科学部人間科学科4年の水野侑武です。千葉県出身です。アイスホッケーを始めたのは小学1年生の冬からで、競技歴は今年で15年になります。神奈川大学アイスホッケー部では主将を務めていて、現在は13名の部員たちと関東大学リーグのディビジョン1・グループB所属として活動しています。

—マイナー競技であるアイスホッケーを始めたきっかけは?
水野さん:昔、地元の実家近くにある運動公園にスケートリンクがあり、通っていた幼稚園の先生が偶然アイスホッケー経験者で、誘われてやってみたら魅力にハマって…。そこから現在までずっと続けてきました。

—幼い頃からアイスホッケー一筋、そんな水野さんが進学先として神奈川大学を選んだ理由は?

中学時代(左)と高校時代(右)の水野さん

水野さん:高校生の頃に神奈川大学から声をかけていただいていたので、セレクションという形で神奈川大学アイスホッケー部の体験会に参加しました。そこで正式にスポーツ推薦をいただけることになり、神奈川大学への進学を決めました。また、神奈川大学が所属するディビジョンBというグループはアイスホッケー経験者がほとんど。幼いから競技を続けている人たちばかりなので、そういった競技に対する意識が高い選手が集まる環境でアイスホッケーがしたくて…。高校は宮城県での寮生活だったので、大学は関東に戻ってきたいなという気持ちも大きかったですね。

「部の歴史を自分たちの代で止めたくない」クラウドファンディングで生まれた新たな決意

—神奈川大学のアイスホッケー部では、今年からクラウドファンディングに挑戦しているそうですね。

水野さん:円安の影響で、海外からの輸入品がほとんどである防具の購入が困難になってきてしまったり、電気代高騰によって、リンク代が1回につき約30,000円もかかってしまうようになりました。また、個人の経済的負担が大きいだけでなく、大学からの援助金も年々少なくなっているので、昨年度から部費が月3万円に引き上げたのですが、ギリギリの活動しかできていないのが実情です。この現状を打破するため、自分たちができる資金調達の1歩として、今年からクラウドファンディングを始めました。クラウドファンディングを通じて、少しでも神奈川大学アイスホッケー部を応援してくださる方や部の知名度の獲得、OBの方々との繋がりができるのではないかと話し合い、挑戦しています。

神奈川大学で部活動をする水野さん

―クラウドファンディングへの挑戦によって変化はありましたか?

水野さん:クラウドファンディングを行なうことで、部の状況やマイナー競技であるアイスホッケーが抱えている課題について、僕たちと違う世代の方にも届けることができました。神奈川大学アイスホッケー部OBの方のみならず、「何か手伝えることはないか?」と連絡してくださった方もいて…。ここまで広がっていくものだと想像していなかったので、すごく嬉しかったです。クラウドファンディングを見て、わざわざ岐阜県から東京都まで試合を見に来てくださった神奈川大学卒業生の方ともご縁ができて、すごくパワーになりました。僕の入学前は神奈川大学アイスホッケー部OBの方たちとの交流があったと聞いていますが、コロナ禍に入ってからは希薄になってしまって。でも、クラウドファンディングを通じてOBの方たちとの繋がりが再びできたことで、部に対する愛着も強くなり、「部の歴史を自分たちの代で止めたくない」という気持ちが強くなりました。

―今後OBとの繋がりが増えたら、どんなことに挑戦したいですか?

水野さん:OB戦の開催です。久しぶりに同期と一緒にアイスホッケーをしたり、みんなでご飯を食べに行ったり…。OBの方にとって学生の頃に戻ったような時間を提供できたらいいなと思っています。僕も中学・高校時代の部活の同期たちと今でもご飯に行くことがあるのですが、そういった同期の繋がりって、すごく大切だと感じています。社会人になって、みんなバラバラになってしまっても、アイスホッケーで繋がれる環境があることはすごく貴重なことだと思うので、今年中にOB戦を開催することで、僕たちを応援して下さる皆さんに恩返しができたらいいなと思います。

「卒業後は社会人生活に集中」悔いのこらぬよう、部活生活に邁進

―今年大学4年生の水野さん。卒業後の進路は?

水野さん:大学卒業後は、不動産業界で会社員として働く予定です。仕事の環境に慣れるまでは、1度競技からは離れて、社会人としての生活に集中したいと考えています。
正直、コロナ禍で半年ほどアイスホッケーから離れた時でさえ、競技が恋しくなってしまったので…。今後離れてみてどうなるかはわかりませんが、まずは仕事に熱中できるように頑張ります。悔いが残らないように、今はその気持ちを部活に向けて取り組んでいます。アイスホッケーを15年続けてきて養った忍耐力や継続力は社会人生活にも役立つ力だと思うので、この経験を生かして、少しでも会社に貢献できたらいいなと思います。

水野さん(写真右)は「部活生活に悔いが残らぬように頑張りたい」と話す

―残りの部活生活と社会人生活に向けての抱負を聞かせてください。

水野さん:部活生活については、先日まで行われていた大会で14校中14位という結果に終わってしまった悔しさを部員全員が持っているはずなので…。その悔しさをバネに、残りの約6か月間で少しでも上位校との差を縮め、今年の目標であるクリスマスのインカレでベスト16に入れるように、主将としてチームを引っ張っていきたいと思います。社会人生活については、今はまだ仕事だけに熱中している様子が想像できないのですが、アイスホッケーに注ぎ込んできた情熱を、次は仕事に注ぎ込めるよう、しっかり頑張りたいなと思っています。

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▶神奈川大学アイスホッケー部公式SNS
【Instagram】 https://www.instagram.com/ku1cehockey/
【Twitter】https://twitter.com/ku1cehockey

▶神奈川大学アイスホッケー部では、部の存続や活動費の補填のため、クラウドファンディングに挑戦しています。
https://www.spportunity.com/kanagawa/team/735/invest/585/detail

取材・文/秋山彩惠 写真/神奈川大学アイスホッケー部ご提供