特集2023.03.18

「これからは、野球だけに専念しなくても、プロ野球選手になることが可能になる時代」-横浜DeNAベイスターズ・橋本達弥選手

「諦めそうな時に自分を見て、頑張ろうって思ってもらえたら1番いい」-そんな想いを抱え、昨年10月、横浜DeNAベイスターズからドラフト5位指名を受け、慶應義塾体育会野球部から、プロ野球の世界へと歩みを進めた期待のルーキー・橋本達弥(はしもと・たつや)選手。「公立高校出身というバックグラウンドを生かして、プロ野球を目指す次世代を盛り上げていきたい」-地元・兵庫県でトップレベルを誇る公立進学校・長田高校から、文武両道の心と諦めない気持ちで、プロ野球選手としての将来を開拓した橋本選手。「これからは野球だけに専念しなくても、情報収集や時間の使い方次第で、プロ野球選手になることが可能になる時代」と話す公立高校出身・橋本選手が徹底した〝文武両道の心〟と、野球選手として表現したい〝諦めない姿〟とは?文武両道に懸ける学生の皆さん、必見です!(アイキャッチ写真/大学時代の橋本選手と慶應義塾体育会野球部監督・堀井哲也さん)

「自分の選んだ選択が間違いではなかったのかな」両親への〝感謝〟とプロ野球選手としての〝覚悟〟

Q.横浜DeNAベイスターズからのドラフト5位指名、おめでとうございます!幼い頃からの夢を叶えた今のお気持ちは?

親が喜んでくれている顔とかを見ると、「自分の選んだ選択が間違いではなかったのかな」と思いました。プロ入りが決まって、1番楽しみなことは、自分が投げている姿を親に見せることです。僕は両親に対して、積極的にコミュニケーションをとるタイプではないのですが、両親は僕のすべてに対して、見守り、支えてくれました。あえて僕に何か言うのでもなく、穏やかに、活躍を見守ってくれたり、応援してくれていることにいつも感謝しています。

Q.素敵なご両親ですね。プロ入りが決まった瞬間、ご両親は?

僕がプロ野球選手になることが現実になると思っていなかったと思うので…。「とにかく嬉しい!」という感情が滲み出ていたって感じでしたね(笑)。自分自身としては、プロ野球の世界で活躍し続けることへの不安もあるので、今まで以上に頑張っていかなければいけないなっていう気持ちです。

「お前はプロに行ける」〝普通の道〟に進むはずだった僕がプロ野球を目指した理由

▲長田高校時代の橋本達弥選手(本人提供)

Q.長田高校出身初のプロ野球選手ということについての反響は?

大学実績も高い、勉強中心の学校なので「プロ野球への関心はあまりないかな?」って思っていたんですが、想像以上に母校の後輩のみんなが喜んでくれていて…。〝初めて〟という、重みのあることを成し遂げられたんだという実感が湧きました。ドラフト指名をいただいた後も、会場と長田高校をビデオ通話で繋げてもらったのですが、その時の空気感が温かくて、すごく嬉しかったです。

Q.プロ野球選手を目指したきっかけは?

小さい頃、父が買ってきてくれたプロスピが面白くて、野球にハマっていきました。実際に球場に連れていってもらうと、マウンドでみんなの注目を集める選手がすごくカッコよく見えて…。一度はみんなが憧れるように、僕も「プロ野球選手になりたいな」と思っていました。でも、僕は本格的に野球をするには、体が小さくて細かったんです。それで、「野球選手になるのは、たぶん無理だな」と幼いながらに感じ、挑戦することなく諦めていました。なので、普通に勉強を頑張って、進学校に行って、いわゆる〝普通の道〟に進むと思っていたんですが、やっぱり、自分が最初に好きだと思って、目指していたプロ野球選手になる夢をコンプレックスを理由に諦めたくないという気持ちは、ずっとどこかにあったんだと思います。

Q.夢を叶えるフィールドとして慶應義塾体育会野球部を選んだ背景は?

高校2年生の時、部長や、熱心に練習を見てくれていた先生が、「プロ野球を目指せ」と背中を押してくださって…。そこで、「勉強のほうで頑張っていくんだろうな」と思っていた自分の気持ちが、変わり始めました。でも、プロ野球は、生半可な気持ちで高校2年生から目指せるような甘い世界じゃないというのもわかっていたので、普通に勉強して、国立大学の野球部に入って、「結果が出たらプロを目指せばいいかな」と考えていたんです。そんな中、高校3年生の時、当時の慶應義塾体育会野球部の大久保秀昭監督(現・ENEOS野球部監督)が、「引っかかるかわからないけど、慶應のAO入試を受けてみないか」と声を掛けてくださって。それがきっかけで、慶應義塾体育会野球部で本格的にプロ野球を目指そうと決め、高校3年生の夏から、AO入試の準備を始めました。大久保監督は、大学入学後も「お前はプロに行ける、いいボールを投げてるぞ」と、どんな時も僕の背中を押して下さって、本当に感謝しています。

「オフの日は、自分の将来のために使うもの」夢を叶えた〝文武両道の心〟

Q.大学受験時代の1日のスケジュールは?

朝5時には起きて、7時30分くらいから朝練、8時30分から16時までは授業、その後、3時間くらい部活をしていました。その後、通っていた塾で22時30分くらいまで勉強。帰宅後に夜ご飯を取ってから、1時手前くらいまで翌日の予習や復習をして、また次の日の5時に起きるみたいな感じでしたね。当時をふり返ると、「(睡眠時間は)5時間取れたらいいほうかな」と思って、目の前の勉強と野球にとにかく力を注いでいました。

Q.オフの日の過ごし方は?

オフの日は、〝自分の将来のために使うもの〟という認識があったので、オフの日にこそ勉強の時間を作る、ということを徹底していました。普段できてない分の勉強を、オフの日にやることで、まわりと同じレベルに追いつけるので。勉強の時間が限られている体育会にいたからこそ、〝そういう意識があたりまえ〟という環境の中に身を置けたことも大きかったと思います。また、そういった環境だったからこそ、自分もブレずに頑張れたんじゃないかなと思います。

「諦めそうな時に自分を見て、頑張ろうって思ってもらえたら1番いい」プロ野球選手として表現したい〝諦めない姿〟

▲第30回ハーレムベースボールウィーク2022に参加する橋本選手(本人提供)

Q.橋本選手が描く〝理想のプロ野球選手像〟は?

タイトルを獲ることも大切ですが、プロ野球選手は、ファンの方から応援が1番の原動力になる、そんな職業だと思っています。たくさんの方から応援していただいて、リリーフ時に「橋本達弥のオリジナルの登場曲や登場シーンをつくりたい!」と思ってもらえるような選手になれたらいいなと思います。僕が小さい頃から憧れている藤川球児さんは、(藤川さんの)曲がかかると、ファンの皆さんにすごく喜ばれるんですよね。ファンの皆さんから愛される、僕もそんな選手になりたいです。

Q.プロ野球選手として次世代選手や世の中に表現したいことは?

これからは、野球だけに専念しなくても、さまざまな情報を集めて上手く時間を使うことで、プロ野球選手になることが可能になる時代だと思っています。すでに活躍されているそういった選手たちと一緒に、〝公立高校出身〟という僕の特性を生かして、文武両道でプロ野球選手を目指す次世代選手たちの背中を押していけたらと思います。また、何らかの理由で、プロ野球への道を諦めそうになっている立場にいる人に対して、少しでも可能性を与えられるようなことができたらいいなと思っています。諦めそうな時に自分を見て、頑張ろうって思ってもらえたら1番いいかなと思います。

橋本達弥選手から〝文武両道に懸ける学生の皆さん〟へ

Q.文武両道に懸ける学生の皆さんへメッセージをお願いします。

人と差をつけるには、オフの日の使い方が、一番大事かなと思います。〝遊びたい〟というのは、一時のやりたいことですよね。でも、本当にやりたいことって、自分が目指しているもののためにできることだと思うんです。なので、オフの日こそ、将来、自分が目指しているもののために使う強さを持って、頑張ってください。プロ1年目の僕の目標は、怪我なく1軍で戦い抜くことです。今の僕には、すべてのレベルアップが必要だと思うので、アマチュアのレベルからプロ野球のレベルに引き上げていけるよう、オンの日はもちろん、オフの日も有意義に使うことで、目標に向かって頑張っていきたいと思います。一緒に頑張っていきましょう!