現在、ボールを使用するスポーツは多岐にわたっています。そんな「球技」のカテゴリーにおいて世界最古のスポーツといわれているのが「スポールブール」です。
今回は、9大会連続でスポールブールの世界選手権で日本代表を務め、現在は監督業も兼任する豊田想さんにインタビューを実施。スポールブールとの出会いから今後の展望までを伺い、その魅力に迫りました。
野球を辞めて出会ったスポールブール
豊田さんとスポールブールの出会いのきっかけを教えてください。
スポールブール歴は20年以上ですね。高校までは野球に打ち込み、甲子園を目指して頑張っていたのですが、それを超えるスポーツに出会えないかと思っていた矢先、たまたま「初心者からでもオリンピックを目指せる競技」としてテレビで特集されていたのがスポールブールだったのです。ちなみに、野球は高校2年生のときに辞めました。
高校球児だったんですね!ポジションはどちらでしたか?
肩が強かったので、ライトを守っていました。
スポールブールのどんな点に興味を持ったのですか?
スポールブールは、球技でありながら走力が求められるスポーツです。走ることが得意ではあったので、そのポイントは大きかったと思います。
実際にやってみてどうでしたか?
非常にシンプルな競技で、「転がして近づける」「投げて当てる」というのが基本的な動作です。始めた当時はそのシンプルさゆえ、魅力に気付けていない部分もあったのですが、戦術などを次第に理解していくうちに楽しくなっていきました。
スポールブールは誰もが日本代表を目指せる競技
改めてスポールブールの特徴について教えてください。
スポールブールはフランス語なのですが、スポールは「スポーツ」、ブールは「ボール」という意味の単語です。日本語に訳すと「球技」。1kgの真鍮製のボールを使用したゲームで、世界最古の球技といわれています。シングルだと4球、ダブルスだと合計6球を使ってプレイし、いかにビュットと呼ばれる目標球(的)に自チームの球を近付けられるかを競う競技です。
その昔、人間は獲物をおびき寄せるために仕掛けを的確な場所に置いたり、狩猟の際には石を的中させたりしていましたが、もともとはこれらのスキルを遊びながら身に着けるために生まれたのがスポールブールといわれています。カーリングなども、スポールブールから派生して誕生したスポーツという説もあるようです。なお、日本には「ペタンク」という競技とともに約40年前に伝えられてきたと聞いています。
一度、「ワールドゲームズ」という大会が2001年に秋田県で開催され、その際にスポールブールが実施されて競技人口は増えたのですが、私が始めた当初は国内に5名しかプレイヤーはいませんでした(笑)現在の競技人口は約50名。始めた当初から10倍になりました。
それだけ競技人口の少ないスポーツにトライできたことがすごいと思います!
競技人口が少なかったこともあり、始めて1年で日本代表にも選出していただきました。当時は情報も少なく、「本当に世界で競技されているスポーツなのか?」と疑ったこともありましたね(笑)しかし実際には、フランスやイタリアではプロリーグがあるほど親しまれていて、真剣に取り組んでいる人も多いスポーツであることを知りました。
個人戦や団体戦のような競技性もあるのですか?
世界選手権だと、種目別の個人戦とダブルスがあります。私はどちらも出場しています。
使用するボールにも男女別で重さが異なるなど、特徴はありますか?
サイズと重さが規定によって決まっています。
日本では初心者からでも代表になれる可能性があるように感じます。
おっしゃる通りです。特にジュニア世代(U-18、U-23など)や女子代表のカテゴリーもありますので、チャンスはたくさんあります。
まだ10名に満たない人数ですが、女性の競技者も増えてきました。5月に全日本女子選手権大会を実施したのですが、その際は午前中に講習会をして、同日の午後に大会を開催しました。スポールブールを始めてたった1日で、全国ベスト8になる人がいましたね(笑)
すごいスピード感です(笑)どんな人が向いている競技なのですか?
生涯スポーツとして実施できる競技なので、筋力や体力はそこまで重要なものではありません。実際に私のように40歳以上の年齢でも日本代表としてプレイできるスポーツです。年齢にかかわらず、ひとつの競技に打ち込みたいという方には向いている競技です。
豊田さんが思うスポールブールの魅力を教えてください。
非日常感を味わえることができる点です。青空の下、真鍮でできたボールを的に向かって投げたことがある人は少ないでしょう(笑)その感覚がやみつきになる人は多いですね。
スポールブールの普及活動の先に目指したいプロリーグ創設
今後、どのようにスポールブールを広げていきたいですか?
現在、日本でプロリーグ創ることに注力しています。先日プレリーグが開催され、8都道府県から参加してくださった状況です。今後は47都道府県が参加できるように努めていきたいです。目標はプロリーグの創設ですが、まずは競技人口を増やすためにスポールブールの普及活動から進めていきたいですね。
今後のビジョンをお聞かせください!
自分自身を含めて世界一を目指していくことと、日本国内で国際大会を誘致できる環境を作ること、47都道府県にクラブチームを作ることが夢です。
最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いします!
私も野球を途中で投げ出してスポールブールと出会いましたが、何かセカンドチャンスを求めている方におすすめしたいスポーツです。まずは試合を観に来ていただき、興味を持っていただけた際は講習会にチャレンジしてください。一緒に日本代表を目指せる方を、心からお待ちしています!
取材後記
野球一筋だった豊田さん。その野球を辞めてスポールブールを始めた決断を「セカンドチャンスを得た」と捉えていることに豊田さんのポジティブさが垣間見えました。世界最古の球技といわれているスポールブール。これまでの運動経験を問わず、誰でも活躍の場をつかめるチャンスがあるスポーツです。一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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