特集2021.12.15

子どもたちに夢を持つ素晴らしさを伝えたい!格闘家YouTuber・泉武志選手が抱く挑戦心の源泉

打撃、投げ技、固技などのさまざまな技を繰り広げ、勝敗を決める「総合格闘技」。他の格闘技と比べて、ルールが幅広く、自由度の高い戦い方ができることが特徴です。

今回インタビューしたのは、総合格闘家の泉 武志選手です。レスリング男子グレコローマン71kg級ほかで全日本選手権を3度制し、アジア王者にも君臨。現在はレスリングから総合格闘技へと舞台を移し、挑戦しています。YouTuberとしてもご活躍中の泉武志選手から、総合格闘技の魅力や、YouTubeの活動についてお話を伺いました。

高2でレスリングを始め、全日本選手権を3度制覇!アジア選手権でも優勝!

どうしてレスリングを始めたのでしょうか?何歳から始められましたか。

始めたのは高校2年生からです。それまではバスケットをしていました。兄が2人いるのですが、一番上の兄は競歩で全国大会や国体に出場し、真ん中の兄はバレーの選手、お父さんもリレーの選手でした。僕はバスケットで全国に行こうと思っていましたが、そのような環境ではないように感じてしまって。高校1年生のときにやめました。そのとき、「良い指導者がレスリング部にいる」と聞き、これだと思って始めたんです。当時はレスリングのことを全く知りませんでしたね。

レスリングのどういうところに魅力を感じましたか?のめり込んだきっかけについてもお聞かせください。

まず、高校2年生でレスリングを始めたため、人よりも1年遅れている認識で、とにかく練習に励んでいました。最初にマット運動をするのですが、その日の電車の帰りで三半規管がやられてしまって。大変な部活に入ってしまったと思いました。ですが、先生を信じて練習すると、段々と慣れてきました。点が取れるようになり、駆け引きを楽しむことができるようになったら、おもしろみを感じるようになりました。

全日本選手権3連覇をした時(泉さんご提供)

全日本選手権を3度制し、アジア選手権でも優勝されました。振り返って、その要因は何だったと思われますか?

優勝した理由は、いろいろあると思いますが、やっぱり誰よりも考えて努力をしていたことだと思います。練習量は人よりも多かったですね。自分に何が足りないのか、今どうするべきなのかを考え、練習をしていました。センスとか技術テクニックはない方だと思っていたので、気持ちだけは負けないように取り組んでいました。緊張している状態も楽しむようにして試合に挑みました。

レスリング人生を振り返って、良かったことやつらかったことは何でしたか?また、それらの経験から何を得ましたか?

良かったことは、人とのつながりを得られたことだと思います。普通の生活をしていて出会えない人と知り合えたり、ヨーロッパ、アメリカ、スウェーデンといった海外に行けたりしたことも良かったです。レスリングをやっていたからこそ、K-1の久保優太さんなどともYouTubeでコラボさせていただきました。つらかったことは練習ですね。追い込んで行く中で、明日も練習があるのか……と思っていました(笑)でも、一生懸命にがんばったからこそ、身体の仕組みを分析できるようになりましたね。骨格がどう動いて、体重がどう動くのか、身体の動きを見れば5分以内で真似ができるようになりました。

夢を持てない子どもたちのために。総合格闘家へ転身!

レスリングを引退し、総合格闘家に転身された理由について教えてください。

東京オリンピックの予選が通らず、次何しようか迷っていたとき、中学校で講演する機会をいただきました。夢をテーマにした講演で、「夢を持っていますか?」と聞くと、半分以上の学生の手が上がらず、この子たちのために何かしたいと思いました。自転車で日本一周しながら講演しようと思ったのですが、コロナ禍だったので断念し、他の手段で発信するためにYouTubeを始めました。格闘家の方とコラボする機会ができ、渡辺華奈さんや、FIGHTER’S FLOW のオーナーと出会いました。そんな中、「格闘技、本気でやらないか」と声をかけていただいたことがきっかけです。自分が夢を大切にすることを発信したいのに、僕が夢を持っていないと思い、格闘家への挑戦を始めました。

総合格闘技の魅力についてお聞かせください。

刺激が今までと違いました。レスリングは試合をしても死ぬことはないです。格闘技はやるかやられるか、瀬戸際にアドレナリンが出ます。動きを誘ったり、誘った動きに合わせたり駆け引きがおもしろいですね。

レスリングとの違いで戸惑ったり、苦労されたりしたことはありますか?

レスリングは背中がついたら負けですが、総合格闘技は違います。レスリングでは背中をつけないようにテイクダウンから逃げますが、総合格闘技では倒された相手が向かってきます。レスリングには倒す技術はあっても、関節技や絞め技はありません。

それでも総合格闘技に挑戦しようと強く思った理由はありますか。

生半可な気持ちでは中途半端な選手になるし、食べていけないことは感じていました。でも、「絶対に総合格闘技をやるべきだ」と真剣に口説いてくれたのはFIGHTER’S FLOW のオーナーだったんです。FIGHTER’S FLOW は総合格闘技の選手のみ所属しています。オーナー自身、引退した後に「働かないと食べていけない」ということを経験したので、総合格闘家が食べていけるようにとFIGHTER’S FLOW を設立したそうです。全面バックアップしてくれることになり、恩返しをしたいという気持ちが強くあります。

また、レスリング経験が活きる強みはどのあたりですか?

テイクダウンした方が有利なので、アドバンテージだと感じています。フィジカル面でも、人よりも長けていると思います。考え方も、身体の仕組みも、動きの分析をして研究しているので、成長スピードが早いように感じています。ただ覚えることがたくさんあり、打撃だけじゃなく、投げ技、固技などできるようになる必要があります。日々吸収していくことばかりです。

右:FIGHTERʼS FLOW オーナー上田貴央さん(泉さんご提供)

YouTubeのコンセプトは「夢を持って頑張ろう」。中高生に見てほしい

YouTubeチャンネルのコンセプトについて教えてください。

コンセプトは「夢を持って頑張ろう」です。中高生に見てほしいと思っています。ただ、おもしろい企画をやっていかないと視聴数は伸びません。自分が楽しめたり、おもしろそうと思えたりすることを企画するようにしています。視聴数が多いのはプロレスの企画でした。僕の同級生の芦野 祥太郎選手というプロレスラーがいるのですが、そのプロレス技をひたすら受けるという企画です(笑)プロレスは必ず技を受けるので、痛かったですね。

毎回の企画立案はどうやって行なっていますか?

思いつきか、人からの勧めで企画することがあります。今は一人でやっているので、本当はチームで動いていきたいと思っています。最近は練習で忙しいのですが、またアップしていきたいと思っています。

今後、やってみたい企画があれば教えてください。

最近は、格闘技ではなく百店巡りなどの発信をやってみたいと思っています。孤独の格闘家グルメのような企画を考えています。今のところ男性ファンが多いのですが、食だったら女性も見ていただけるのではと考えています。女性だとキックボクシングの体験なども良いかもしれません。あとは「全日本チャンピオンが●●(技を受けるなど)やりました」という企画が人気なので、そういった企画も今後考えていきたいと思っています。

右:プロレスラー 芦野 祥太郎選⼿(泉さんご提供)

目標は、アメリカのUFCでチャンピオンになること!

今後の夢や目標を教えてください。また、それを実現するためのアクションについて教えてほしいです。

今後の目標は、アメリカの一番大きな大会(UFC)でチャンピオンになることです。今は転向して1年経っていませんが、まずは総合格闘技を理解して、自分が何をやるべきなのか考えて練習しています。やっとレスリングのルールや動き方と、総合格闘技を切り離せられるようになったので、本格的に挑戦していきたいと思っています。

最後になりますが、どのような選手になりたいですか?

未来を想像すると、その一本道しかないようになってしまうので、まずは今の目標を考えるようにしています。今は、UFUチャンピオンになることが目標です。チャンピオンの道のりは5年スパンで考えていて、今から2年くらいは国内でRIZINに挑戦できたらと思っています。残り3年は海外へ挑戦したいです。4~5連勝したらタイトルマッチさせていただけると思うので、がんばりたいですね。

取材後記

泉さんとお話しさせていただく中で、芯が強く、周りを明るくする方という印象を受けました。「中高生に夢を持ってほしい」という思いをきっかけにYouTubeに取り組まれ、ご自身も夢を叶えるために挑戦されています。また、FIGHTER’S FLOW のオーナーさんとのお話を聞いて、FIGHTER’S FLOW の思いが本当に素敵だと感じました。夢に向けて頑張っている中高生のためにも、泉さんの夢が叶うよう応援していきたいです。