1992年にイタリアでハンドボールから派生し、誕生した球技のひとつが「ビーチハンドボール」。ヨーロッパや南米を中心に盛り上がりを見せる中、アジア圏でも近年では大会が開催されるなど、少しずつ競技としても認知を広めつつあります。
今回取材したのは、昨年行われた全日本ビーチハンドボール選手権大会で優勝を勝ち取った、女子チーム「SWAG」から川畑博美さんと竹谷美樹さん。競技としての魅力や、チームや個人が抱く今後の展望についてお伺いしました。
アイキャッチ画像 写真:©potyapotya02&Find-FC
目次
インドアのハンドボールとは別物?ビーチハンドボールの魅力
お二人は、どのようにしてビーチハンドボールと出会われたのですか?
川畑:ビーチハンドボールを始めたのは2年前でした。高校からずっとハンドボールをやっていたのですが、ある日、先輩からお誘いを受けて初めてプレーしたことがきっかけです。当時はビーチハンドボールを知りませんでしたが、今ではその魅力にハマっています。
竹谷:私は、大学で所属していた部活動がきっかけでした。毎年ビーチハンドボールの大会に大学の部活メンバーで何チームか作って参加していました。
お二人ともハンドボール経験者だったんですね!初めてプレーしてみて、どうでしたか?
竹谷:ハンドボールとは全然違う競技だと思いましたね(笑)私はビーチハンドボールという競技名だけは知っていましたが、自分がプレーするまでは試合を見たこともなくて。実際やってみると、とてもキツかったです(笑)ビーチに足がとられるし、炎天下でプレーする過酷さも体感しました。
体力もかなり消費しそうですね。具体的にインドアのハンドボールにはない特徴や魅力を教えていただけますか?
竹谷:インドアのハンドボールではすべてのシュートが1得点であるのに対し、ビーチハンドボールには2得点のシュートが3種類あることが一番の特徴です。そのため、インドアのハンドボールとは違った動き方や攻防が見られることが魅力だと思います。
外競技ということで天候にも左右されるイメージなのですが、いつも整った環境で練習できる保証がないわけですよね?
川畑:借りていても当日使用できない状態になっていることもあります。基本的には、降水確率80%以上の場合、今は中止という判断をしています。ボールが滑ってしまったり、体調管理に影響が出てしまったりするので。
なるほど……晴れたら晴れたで、炎天下の厳しさもありますもんね(笑)それでも、競技を続けたい理由は何ですか?
竹谷:個人的には、ゴールキーパーでも得点を取れる競技性に惹かれています。先述した2得点のシュートのひとつが「ゴールキーパーによる得点」なんですよね。
あとは、自分がトライして続けることで、ビーチハンドボールの魅力を多くの方に知っていただきたいという思いがあるからです。インドアのハンドボールすら、まだまだマイナーですが、ビーチハンドボールも国内で高め合えるぐらい競技人口が増えていくようなスポーツにしていきたいと思っています。
周囲の応援を力に!ビーチハンドボール×仕事の“二刀流”を実現!
現在「SWAG」のスポンサーでもある、オファー型の就活サービス「OfferBox」を運営する株式会社i-plagで勤務する川畑さんと、ウエディングプランナーとして働く竹谷さん。周囲のサポートがあってこそ、ビーチハンドボール×仕事の“二刀流”が実現できるといいます。
お二人ともに営業職の傍ら、両立は大変ではないですか?
竹谷:私はウエディングプランナーをやっているので、土日が仕事をしていることが多いです。なかなか練習できない苦労はありますが、ビーチハンドボールが楽しいから続けられています。
アジア大会などもあると聞きましたが、海外の試合となると、お仕事はどうなさるのですか?
川畑:私はフリーロケーションかつスーパーフレックスの働き方ができるので、海外遠征中も仕事をすることができました。また、現職の株式会社i-plugがチームのメインスポンサーになってくれているので、自分の活動に理解を得やすい環境です。
今の会社では川畑さんや竹谷さんがビーチハンドボールの活動をされていることを知って、応援やバックアップしてくださっているということですか?
竹谷:そうですね!
川畑:前職があまり協力的な会社ではなかったので、本格的にプレーするなら理解のある会社で働きたいと思い、今の会社に転職を決めました。しっかりと両立できています。
もっと上を目指したい。「SWAG」はチーム力の高さが自慢!
応援してくださる会社も多いんですね。では、次に「SWAG」について、立ち上げの経緯を教えていただけますか?
川畑:私が本格的にビーチハンドボールを始めようと思ったタイミングでは、関東に既存のチームもあったんです。ただ、そのチームは上を目指すというより、競技を楽しむことを活動の目的にしていました。ただ、私はやるならもっと上を目指したいと思っていて、そこに共感してもらえるメンバーが集まって、今のチームができました。
今はどのようなメンバー構成なんですか?
川畑:現在8名が選手として加入しています。そのうち7名は、チームを結成した年に中国で開催された「アジアビーチハンドボール選手権」に日本代表として出場したメンバーです。
すごい!選手層の厚さを感じました。他に、「SWAG」の魅力はどんなところにあると思いますか?
竹谷:コミュニケーションが取りやすく、チーム力が高いところだと思います。言いたいことがあれば、互いにはっきりと言いますし。体育会系あるあるで、後輩が何でもしなければいけないというイメージもあったりすると思うのですが、「SWAG」には全員でやろうというスタンスがあるので、変なしがらみみたいなものもありません。
その関係性の良さは試合にも影響するのですか?
川畑:先輩後輩関係なく、ちゃんと言い合えるのは試合にも好影響を与えると思います。なので、そのような環境づくりを普段から意識していますね。とはいえ、私は上の立場なので、後輩たちがどう思ってくれているかによりますが(笑)
竹谷:私もそう感じています(笑)
会社と同じように、ビジョンがきちんと明確だからこそ、そこに集う人たちもちゃんと選抜されて集まっている印象を受けました。
練習拠点や活動費に課題も……世界で通用するビーチハンドボールチームに
「SWAG」の活動範囲はどのエリアがメインですか?
川畑:メンバーのうち2名が愛知県にいるので、東京・神奈川・静岡県浜松市・愛知県碧南市のエリアでなるべく平等になるように練習場所などを確保しています。
活動費などはどうされているのですか?
川畑:スポンサーからいただいている資金を使用させてもらっていますが、余裕があるわけではないので、基本は車で相乗りをして4~5時間かけて移動しています。免許を持っているメンバーが限られているので、運転して練習し、また運転というのは正直ハードだなと感じます。
活動を続けることだけでも大変なことがありますよね。スポンサーの数が増えるだけで、かなり良いパフォーマンスにもつながるだろうなだと感じました。他にはどのような運営活動をしていますか?
川畑:裏方はいないので、全員でサポートし合っています。例えば、インスタグラムアカウントも毎日更新していて、選手3人で運用しています。ほかにも練習の日程調整やスポンサーの担当も分担しています。
すごいですね。でもこれは、チームやビーチハンドボールに対する愛や思いがあって、目指すところがはっきりしているからできることのように感じています。
川畑:そうですね。自分で話していて、改めて「良いチームだな」と思いつつも、一緒に目標に向かう仲間を探すことがとても大変で、その点は大きな課題だと思っています。現在は8名のメンバーがいますが、全員がフルで動いているような状況です。もう少しメンバーを増やしたいと思いつつ、目指すものも高いので悩ましいことが多いですね。
あとは、アジア圏で勝てる、そして世界で通用するチームを作っていくためには、海外チームとの交流も不可欠です。そこで、海外のチームと練習試合ができる機会などもチームとして作っていきたいなと思っています。資金面の問題も予想していますが、大きな目標として掲げています。
個人として思い描いている展望はありますか?
竹谷:今後も仕事とビーチハンドボールの両立をしっかり継続させていきたいです。ウエディングプランナーとして、お客さまと過去の生い立ちなど自分自身のことを話すシーンも多いので、その際にビーチハンドボールの経験も伝えていけるような立場になりたいなと考えています。
川畑:私は、個人として日本を代表するビーチハンドボールプレイヤーになりたいですね。そうすることで、チームが得点力の高さを武器にできるように貢献したいです。仕事に対しても、「担当してもらってよかった」と思っていただけるようなビジネスマンとして、人柄も魅力的に感じてもらえるように成長していきたいと考えています。
最後に、現在のチームとしての目標を教えてください!
川畑:10月末に全日本選手権が開催予定なので、昨年の優勝に続き2連覇を目標としています。また、アジアで通用できるチームにいち早くしていきたいですね!
※編集部注:取材時には、「10月の全日本選手権で優勝し、2連覇することが目標」と語っていたSWAGのお二人でしたが、本当に優勝され、目標の2連覇を達成されたとのご連絡を頂きました!
本当におめでとうございます!
取材させていただいたチームが実際に目標を達成される姿に心をうたれました!
引き続き、応援させていただきます!
GrowS編集部一同
取材後記
明確なビジョンや目標を定め、チームとしても個人としても高みを目指す姿勢を感じた「SWAG」の未来が楽しみになりました。まだ知名度やマネタイズも発展途上の段階にあるビーチハンドボールですが、「SWAG」の活躍から目が離せません!
初心者からでも十分楽しめると、川畑さん・竹谷さんも話すビーチハンドボール。屋外でアクティブに楽しめるニュースポーツとして、みなさまもぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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