特集2021.08.05

現役中から引退後までアスリートを支援!豊田陽良さんが目指す社会の姿

サッカーや野球、テニスやボクシング、相撲やゴルフなど、プロスポーツ選手は一般の人たちにとって憧れの対象です。成功すれば億単位の年収を稼ぐこともでき、華やかな世界にも見えますが、多くの競技では選手としての寿命にも限りがあるケースがほとんど。引退後のキャリア形成に悩むアスリートも非常に多いのが現状です。

そんな中、株式会社ライラックサポートの豊田陽良さんは、事業を通じてアスリートが安⼼して働けるよう、地域に根ざしたスポーツチームや選⼿とファンとのつながりを作ることに尽力されています。今回、インタビューをさせていただきました。

アスリートのマネジメント事業に注力!キャリア形成をサポート!

まずは自己紹介をお願いします!

株式会社ライラックサポートの豊田と申します。今年(2021年)9月で創業5年目を迎えるのですが、現在は医療および介護福祉に特化した人材紹介事業を主に展開しています。介護関連に関しては「なんでも屋さん」みたいな立ち位置です。私自身が大学で介護福祉を専門で学び、介護の現場でもリーダーや施設長の立場も任せられたことから、それらの経験を活かして介護の新規事業立ち上げのコンサルティングも行っています。例えば、建設業界やホテル業界などから新規で介護事業に参画したい企業様へ、まったくノウハウもないところから運営のサポートをしています。

離職する人の割合も高い業界なので、人材紹介事業では、介護従事者が定着するための方法や根本的な業務内容の見直しなどでも、企業様の相談に乗ることが多いですね。

他にも、テレビドラマの中で介護現場や介護をするシーンが取り扱われる場面で、演技の監修などもさせていただくことがあります。撮影場所の提供、専門用語のチェックや、車いすの押し方など、ドラマや映画のサポートなんかも個人で行わせていただいています。

インタビューに答えてくださった豊田陽良さん

介護現場だけでなく、さまざまなシーンでご活躍されているんですね!ちなみに、なぜ福祉介護の道に進もうと思われたんですか?

私は3人兄弟の末っ子なのですが、長男は先天的な聴覚障害があり、すぐ横を救急車が通っても全く聞こえないレベルです。そういった環境で育った影響もあり、小さな頃から障がいを持った方々とも関わったり、時にはボランティア活動にも参加したりする中で、自然と「人の力になりたい」という気持ちが芽生えていました。ちなみに、次男の兄は現在、特別支援学校の職員を務めています。

また、現在はアスリートのマネジメント事業にも注力されているのだとか?

アスリートのマネジメント事業は、今年に入ってスタートしました。もともと個人的なつながりで、アスリートのセカンドキャリアに関する相談を何度か受けていたんです。一般企業にアスリートを人材紹介することもありますし、アスリートたちの引退後を見越したキャリア形成のサポートをすることもあります。

アスリートの人材紹介事業はなぜ行っているのですか?

元日本代表などであれば引退後も引く手あまたですが、例えば、サッカーのJ1でスタメン選手だった人でも、一般的な知名度が高くないことはよくあります。そういった選手とつながりが増える中で、選手一人ひとりのキャリアについて相談に乗ると、セカンドキャリアに苦しむ選手が非常に多いことに気付きました。引退すると、スポーツ選手としての肩書きがなくなるので、将来が不安だという気持ちが大きいのだと思います。

また、引退した選手の多くは、スポンサー企業や先輩の誘いで就職先を決めることも多い印象ですが、それだけだと「理想と現実」に乖離が生じてしまいます。就職活動において詳細の説明を受けないまま、給与条件だけで内定を承諾してしまう若いアスリートも多く、「いろんな人と関われる仕事場だと思って入社したら、実際はひたすらテレアポしか任せてもらえない」といった話もよく耳にします。

だからこそ、就職後のギャップが生じないように事前に話す場を設けるなどして企業の理解を深めたり、複数の選択肢を与えたりして、トータルでキャリアをサポートすることが重要だと考えています。

所属選手多数!地道な「サイン集め」が実を結ぶ

ちなみに、アスリートの方となぜここまで繋がっていけたのですか?

サッカーを本格的に続けていましたが、高校時代に靭帯を損傷する大きなけがをしてしまい、プロを目指す道を断念しました。その後、同時期に対戦していた相手チームのメンバーがJリーガーになっていたことがきっかけで、年間50~60試合観戦に行っていたときもありました。その後、自然と選手と仲良くなる機会が増え、人脈も広がりました。

 50~60試合を観戦するだけで、そこまでコネクションを作るのは難しいのでは?

小学生の頃から、趣味のひとつが有名人のサイン集めでした。現在となっては、1万枚を超える数になっていますが、練習場や試合会場で何度も選手にアプローチしていると選手に覚えてもらえるんです。本当にそういったシンプルな接点からつながっていきましたね。

 ご自身の興味関心や好きなことが事業になっている印象を受けます! 

これからも社会貢献や地域貢献には、しっかりと力を入れていきたいですね。障がい者施設や高齢者施設とのお付き合いも多いので、利用者のみなさまとアスリートをつなぎ合わせて、お互いにwinーwinとなるような場をしっかりと作っていきたいと思っています。

ちなみに、所属選手はサッカー選手が多いのでしょうか?

私がサッカーをしていたこともあり、サッカー選手からお声がけをいただくことは多いです。サッカー選手以外にも幅広いジャンルのスポーツ選手が在籍しており、提携を結んでおります。

年々高まる「デュアルキャリア」のニーズ

「デュアルキャリア」について、ぜひ詳細をお伺いさせてください! 

サッカーで例えると、J3の選手は、ほとんどの選手が働かないと食べていけない状態です。プロ契約できている選手は、ごく一部なんですよ。また、Jリーグから社会人リーグなども含めると、選手として競技を続けるアスリートの寿命は長くなっています。競技は続けながら別の仕事で収入は確保したいという「デュアルキャリア」のニーズは、年々高まっているように感じています。

競技を長く続けたいからこそ、キャリアを共生させる道を模索されている方が多いんですね。どんなキャリアプランを選択される方が多いのですか?

本当にさまざまですが、一例として挙げると、毎日午前中に練習があるチームに所属し、午後の空いた時間でアルバイトをするというケースです。また、週3回の練習があるチームでは、必ず正社員や契約社員として固定の仕事に就くことを条件にしたりもしています。他には、そのチームの下部組織やキッズスクールで、インストラクターやコーチを務めている方もいらっしゃいます。

スポーツから離れてキャリアを形成していこうとされた方々で、成功事例としてはどのようなパターンがありますか?

小さい頃からひとつのことを貫いてきたアスリートの忍耐力や、上下関係が厳しい環境で身についた礼儀や挨拶がしっかりしていることは就職においてもプラスの印象を与えられます。特に、営業職のカテゴリーでの評価は、どの企業様からも高いですね。挫折せずに努力できる強みに期待している企業様は多いです。

 豊田さんが思うアスリートならではの課題点はありますか?

ビジネスマナーやスキル面では不足していることが多くあります。所属チームとして、そのようなことを学べる場を提供することが帰属意識を高めることにもつながると思うので、積極的に選手をサポートできるような輪が広がればいいと考えています。

 改めて、豊田さんの取り組まれていることに意義を感じました。

実は、アスリート支援に関しては現状一切費用をいただいていません。今後、スポンサー契約など収益化をしなければいけないフェーズにはなっていきますが、今は選手のために貢献したい一心で取り組んでいます。事業としてもより成長させたい気持ちは強いですね。

さまざまなイベントを通し、ファンや地域とアスリートをつなぐ

イベントでは、どのような内容のことを企画されているんですか?

親子サッカーやドッジボール、縄跳び世界一の選手から縄跳びを教えてもらえるイベントなどの開催を予定しています。

また、YouTuberの方から依頼を受けてコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。最近だと、実際にカバディというスポーツを体験したり、他競技選手との対決イベントも行なったりしました。そうして、少しずつでも世の中にスポーツの魅力が広まっていけばうれしいです。

80名ぐらいのアスリートにもご協力いただいて、YouTubeチャンネル『チャンスの守様(かみさま)』も立ち上げました。

写真ⅱ:YouTubeチャンネル「チャンスの守様(かみさま)」の一部

どのようにしてプロになったのか、選手の実際のトレーニング習慣、食生活、家族のサポート状況などを取り上げております。チャンネルを見てもらっている方のヒントやきっかけづくりになればいいなと考えてます。

アスリートと地域の人がコネクトできるチーム作りや、選手とファンだけでなく、街の人々や企業とのつながりも大切にされているとお見受けしました。

コロナ禍の影響で、選手たちも地域の方々と交流することが困難な状況が続いております。どの選手も、ファンに恩返しがしたい気持ちは非常に強いです。今後、状況が落ち着いてきた際には交流会なども実施したいと思っています。また、企業との交流も増えれば、協賛や就労機会などにも繋がると考えているので、これから力を入れていきたいところです。

これからの豊田さんの展望を教えてください!

アスリートの芸能事務所のような活動を行ってまいります。大手芸能事務所には数名現役アスリートが所属していたりしますが、もっとたくさんのスポーツ選手がオフや練習の合間などでメディアに取り上げていただけるようなアプローチをしたいですね。これからも「ここに頼れれば安心できる』という場を作って、選手たちに少しでも利益になるようなサポートをしていきたいです。

また、今後はアスリート向けのカジュアルファッション事業も展開を予定しています。マイナースポーツのように予算が限られている状況で活動をしているチームや選手に貢献できればと考えています。企業様からは商品のPRやイベント、商品の共同開発などの依頼を多数いただいておりますので、企業様にも貢献していきたいと思っております。

他には、アスリートのアーティスト活動も考えています。私が以前、音楽活動をしていた際のご縁でアーティストの知人も多く、まだ構想段階ですが何かを一緒に生み出せたらおもしろいだろうなと考えています。自分一人ではなく、周囲のみんなが潤えばうれしいですね。困難や課題もあるかと思いますが、何事もチャレンジすることが大切だと思います。

取材後記

アスリートと地域の人々や企業とのつながりを作り、誰もがwin-winになる関係性でいられる社会を実現するために、高い利他精神で行動されている豊田さんの熱意を直接体感できた取材となりました。

アスリートの活躍の幅が競技の場だけでなく、ビジネスやプライベートシーンにまで広がっていく未来に期待が高まる感覚を覚えました。

豊田さんの活躍から今後も目が離せません!

株式会社ライラックサポートの情報はこちら!

株式会社ライラックサポート
(医療・福祉)
https://lilacsupport.jp/
(アスリート)
http://lilacsupport-sp.jp/