特集2022.03.09

大阪市住之江区長の末村祐子さん「すみのえ情報局」「避難カード」「#サンクススミノエ」 災害復興支援のキャリアを活かした住民主役の広報活動を展開する区長が思う地域愛と助け合い

今回は、大阪市の住之江区役所のみなさんとラジオ体操をさせていただきました!
2020年4月から住之江区長を務める末村祐子さんは、岩手で10年間、復興支援を支えてこられた復興支援の専門家、その経験を経て区長に就任されました。
着任して2年、ご自身が感じている地域の魅力をさらに引き出そうと熱心に区政に励んでいらっしゃいます。
その経験から住民により近い距離感で展開する広報活動などについてお話を伺いました。

末村祐子(すえむら・ゆうこ)プロフィール

1965年生まれ 55歳 福岡県太宰府市 出身
大阪大学大学院 国際公共政策研究科 博士後期課程修了
復興庁、大阪経済大学客員教授・前尼崎市参与などを経て2020年4月より大阪市住之江区長に就任。

末村さんとは? 震災復興支援のスペシャリスト 住之江区長に着任!

末村: 住之江区長の末村祐子と申します。よろしくお願いします。

ラジねえ。: お隣のキャラクター、可愛いですね!

末村: 住之江区のマスコットキャラクター「さざぴー」です。
住之江の花がさざんかで、花言葉が「困難に打ち勝つ」なんです。
たまたま私が着任した7日後に初めての緊急事態宣言が出されたのですが、その間ずっと “さざぴーでさざんか(困難に打ち勝つ)” の合言葉でみんなで頑張ってきました。

ラジねえ。: 私もさざぴーから元気をもらおう!

末村: ぜひ!一緒に困難に打ち勝ちましょう!

ラジねえ。: まずは、住之江区長になるまでの経歴を教えてください。

末村: 新卒で社会人になったときは企業に勤務していたんですけど、海外で生活がしたいという気持ちが芽生えて、カナダの公立高校の助手になりました。
帰国してからは国際協力団体に勤務して、国連会議に出席することもありました。
もっと勉強したいと思って1998年に大学院に復学し、災害後の良好な復興のための民間と行政の連携や、効果的な行政組織の運営といったことを専門に研究を続けてきました。
東日本大震災が起こってからは、復興庁など国や自治体の機関で業務にあたりました。
約10年間、現地に赴いて被災自治体の復興支援を行い、行政運営を円滑にするという点を合わせて、いろんな経験を積ませていただきました。
2020年4月に地元の大阪へ戻り、区長に着任しました。

被災地での活動の様子(住之江区役所提供)
出典:出典:大槌町ポータルサイト震災アーカイブサイト

ラジねえ。: 現地で10年間の復興支援ということですが、具体的にどんなことをされていたんですか?

末村: 津波被害に遭った岩手県の沿岸・大槌町の支援から始めたんですけれども、大槌町復興局の顧問という立場で、復興を全体に推進するための算用などを行なっていました。
次に、復興庁の岩手復興局復興推進官として岩手県の企業の立ち上げを支援し、その後、本庁に移って被災者支援や産業復興などのほか、被災地の行政体制の構築・人的支援などをしていました。
ただ、10年間岩手県に関わっていたんですけど、最後の1年間は、岩泉町で副町長をしていました。
そのときは2016年の台風10号からの復旧・復興の加速化や防災・減災事業などに力を入れていました。

ピラティスで “心と体の健康” をキープ、ラジオ体操との共通点も...

ラジねえ。: 末村区長は、スポーツや運動の経験はありますか?

末村: 私は運動神経がよくないと思います(笑)。
お仕事を続けていくうえで体力づくりはすごく大事だなと思って、40代になったときにピラティスのお勉強を始めて、免許を取ってみました。

ラジねえ。: いろんな運動がある中でどうしてピラティスを選んだんですか?

末村: ヨガとかピラティスだと1人でどこでもできるなと思ったのがひとつです。
ピラティスの歴史を聞くと、第一次世界大戦中に捕虜となったピラティスさんという男性の看護師が、狭い収容所の中で考えたとか…。
基本さえわかっていれば本当にどこででもできる。お家から離れて単身赴任で被災地に応援に行った期間、狭い宿舎など日常とかけ離れたような環境で生活していましたが、限られたスペースでもピラティスによって体づくりができたので助かったなと感じています。

ラジねえ。: よく聞かれるかもしれないですが、ヨガとピラティスの違いってどんなところがありますか?

末村: ピラティスは看護師さんがお考えになって、捕虜生活の中でも生き抜くぞ!
というところに特化したエクササイズになっているので、ヨガよりも筋肉にアプローチした動きととらえています。
ヨガは、長い歴史の中で哲学にまでブリッジを架けるような動きになっています。
違いがあるといえば、そういうところだと思いますが、共通点はたくさんありますね。
どちらも、どこでもできる。方法がわかっていれば自分でもできるし、誰かに教えてあげられるというところは同じかもしれないです
ね。

ラジねえ。: ピラティスを始めてから、何か体の変化などは感じられました?

末村: そうですね、筋肉の貯金が減りすぎないように定期的に自分でメンテナンスするようになりました。
あまり勤勉じゃないのでよくサボりますけど(笑)。
そういう意味ではピラティスはラジオ体操と共通点がありますよね。
ラジオ体操は本当によくできた体操だなと思うし、それぞれ入り口が違っていても、目指したいところは“健康でいましょう”という点では同じかなと。

ラジねえ。: 今日は区役所の皆さんも一緒にラジオ体操をやっていただきましたが、いかがでした?

末村: やりながら息があがっている方もいましたが、ラジオ体操はとってもぽかぽかしてくるのと、大きく深呼吸をしてたくさん空気を体に取り入れられるのでとてもいいなあと思いました。
ものすごくたくさんお仕事の量があって、すぐついつい、お仕事に追われるみたいなことになった時にも、とてもいいなぁと思ったので、週3回くらいやるといいんじゃないかな(笑)。
よく区役所でも「心と体の健康が第一」とみんなで話しているんですけど、ラジオ体操はそれにぴったりですね。

末村: 区役所のお仕事というと、机に座ってデスクワークばっかりと思う方が多いかもしれませんが、窓口でいろんな方々の相談にも乗るし、現場に出かけることもたくさんあります。
体が健康であることと、心が健康であること。
両方のバランスが取れて初めて、区民の方々に役に立つお仕事ができると思っています。

主役は区民 情報サイト「すみのえ情報局」がスタート!

ラジねえ。: 住之江区の特色はどんなところだと思いますか?

末村: 住之江区というのは、お隣の住吉区から分区をしてできた区なんですが、大阪市の24区の中では面積が最も広いんです。
半世紀ほどかけて人が作り上げてきた南港地域と、かつて広大な造船所がありたくさんの人が集まった名村地域が含まれているから。大和川の周辺の地域はその昔、大和川が氾濫する代償として上等な作物が採れる豊かな地帯でした。
住之江区は人々が作り上げた新しい町と、自然と寄り添いながら歴史を紡いできた町の2つの顔を持つ、そんな区です。

ラジねえ。: そんな素敵な住之江区が今、力を入れている事業があると聞いたのですが?

末村: 2020年夏頃から「すみのえ情報局」という、区役所の情報サイトの構築をはじめ、年度内には利用が始まります。
区のホームページでは、特にこの2年間は、ワクチンの接種の会場はここですよ、いつから始まりますよ、予約はこれで取れますよ、などたくさんの情報を区民の皆さんにお届けしてきました。
「すみのえ情報局」は、役場から発信する情報以外に、地域の方や企業の方など、この区にご縁のある活動をしている方が情報を投稿して交流でき、地域の方たちが主役となる場所にしようと考えています。
今年度中には始まる予定です。

すみのえ情報局

※「すみのえ情報局」は2022年2月1日に開設しています。

https://suminoe.fun/

末村: 住之江区はとても広い区なので、区内のいろんな地域でやっているイベントが「行きたかったのに、いつあるかわからなかったから行きそびれた」ということが起こってしまいがちです。
すみのえ情報局を通じて区の中でいろんな交流が盛んになってくれたらいいなと思います。
もちろん、住之江区以外の方にもたくさん来ていただきたい。

ラジねえ。: 私のラジオ体操の情報も、もしよかったら…(笑)。

末村: ぜひぜひ(笑)。みんなに知らせてください。
つくづく区民の方々が主役だなと思っていますので、こういう環境整備というか、そういう機会とかを整えるということには心を砕いています。

災害時は情報が大切 ニア・イズ・ベター 近所で助け合う “近助”

末村: それともう1つ。
住之江区は大和川を中心に昔からどうしても氾濫しやすく、水にあんまり強くない町なんです。
近年は地震のリスクについていろんな情報が共有されていますが、私も被災地での行政運営の時間が長かったので多くの局面に対峙してきましたが、行政が逆立ちをしても、区役所の職員約300人がどんなに頑張っても、約12万人いる住之江区民を災害時にひとりひとり助けてあげるっていうことはできないことを痛感しています。
なので、自分たちで身を守れるよう広報に力を入れています。例えば、区で配っている「避難カード」。
家族など近しい人たちと、災害にあった時はどこに逃げるよ、どうするよ、というのを小さなカードにまとめてひとりずつ持っておくようにします。
災害について話し合うきっかけづくりにしてもらえるようにしています。

末村: それから、災害の時はまず「避難所に逃げよう」と考える方が多いと思いますが、最近はおうちの中も避難所になるんですよと伝えています。
学校の体育館とか公的に準備ができている避難所は、元気でどんな環境でも眠れるというような方には充分な避難機能がありますが、アレルギーがある方や体調に不安がある方などには、どうしても合わないことがあります。
避難所だけでなく自宅や知人宅へ避難することを「分散避難」といいます。
その方法を紹介して、区民の皆さんのお力になりたいです。
防災の考え方は今まで「自助(=自分自身の安全を守る)」、「共助(=地域やコミュニティといった周囲の人たちが協力し助け合う)」、「公助(=市町村や消防、警察、自衛隊など公共機関による救助・援助)」と言われてきました。
加えて住之江区では「近助」。
「近くで助ける」という言葉も紹介しながら、防災に取り組んでいます。

末村: さらに教育について。全国的にだと思いますが、近年は子どもを取り巻く環境がどんどん厳しくなっているなと感じます。
住之江区、子どもを社会でしっかり応援しようという体制をいま作っているところです。
それ以外のところももちろん、区役所の職員の方々と日々努力をして取り組んでいます。

ラジねえ。: どれもすばらしい取り組みですね!
運動やスポーツについては住之江区で強化していこう、広げていこうという考えはありますか?

末村: 運動やスポーツってやっぱり日々の習慣にするのがとっても大事だし、競技で勝って成績を収めるのもすばらしいことだし、スポーツの幅はとっても広いと思います。
実は住之江区でも、北京オリンピックの陸上のメダリストの朝原宣治さんなどを学校にお招きし、子どもたちがオリンピアンに直接会える機会を設けています。
子どもたちの年代は感受性も豊かですし、小さいときにしっかり体づくりをしていれば生涯に渡って財産になると思うので、そういう環境を学校の先生方も含めて地域でやっていけるように、区役所でも尽力していきたいと考えています。

ラジねえ。: 公務を行なう中で、末村区長がやりがいを感じるときはありますか?

末村: 大阪市は、地域の人たちが必要だと思うことをしっかりかたちにしていきましょうと「ニア・イズ・ベター」という考え方のもとで市政を行っています。
私たちが行う取り組みが、地域の皆さまの役に立っていると実感したときに嬉しくなりますね。
たとえば、国は一生懸命災害についての情報を発信しているけど、意外と国民ひとりひとりのところにまでは届いていない。
そこで住之江区では広報誌を使って、災害時の公共機関の活用方法を分かりやすく解説をつけてお届けしています。
発信した情報を使いこなしてくれていることを、区民の方からのお手紙で知ることがありました。少しでも、区民の方々のお手伝いができたかなと思う瞬間を、区役所のみんなで励みにしています。

「おおきに」がたくさん聞こえる街に #サンクスミノエ

ラジねえ。: 末村区長の今後の目標を教えていただけますか。

末村: 今回取り組んだラジオ体操のように、体を動かすのはさわやかなことですね。
ひとりひとりが鬱々と何か抱え込むんじゃなくて、体を動かしているうちに思わず笑顔になったり、自分の体について気づくことがあったり、アッハッハッ!とみんなで笑ったり。
そういうのがすごくいいなと感じました。
最初に住之江区に着任したとき、区民の方同士で「おおきに!」とか気軽にお話しされている姿がとっても印象に残っているんです。そういった言葉が今後、私が着任したとき以上にたくさん聞こえるようになってくれたらいいなと思っています。
着任したときから「やりたいやりたい!」ってみんなに相談して…いま、「住之江区おおきにプロジェクト #サンクスミノエ」というプロジェクトを進めているんです。
面と向かって伝えるのは恥ずかしい「ありがとう」、「おおきに」を、動画や写真で「すみのえ情報局」に区民の皆さんが投稿して、どんどん広がっていけばいいなと考えています。
もともとの区民性をさらに引き出す手助けとなればいいですね。

ラジねえ。: 最後にGrowSを見ている方へお言葉をいただけますか?

末村: GrowSをご覧の皆さま。住之江区役所ではラジねえ。さんと一緒にみんなでラジオ体操に取り組むことができました。
私たちはこれからも「心と体の健康」を第一に掲げ、体を動かす取り組みをしていきたいと思っています。地域の方々が私たちに見習って同じように心と体の健康について気にかけて下されば嬉しいです。
今回の取材のように、GrowSをご覧になっている皆様ともいろんなご縁がきていったらいいなと思っています。
ありがとうございました。

住之江区役所のラジオ体操動画はこちら

ラジねえ。コメント

末村区長!物腰柔らかくとても接しやすい方で、常に笑顔でインタビューに答えていただきました。
ラジオ体操やピラティスなどの「運動」が、心と体の健康に繋がるという想いに共感すると共に、末村区長含め住之江区役所のみなさんと一緒に楽しくラジオ体操ができたので、いつかは住之江区民全員ラジオ体操!を実現したいです。
住之江区民のみなさんには、「すみのえ情報局」をどんどん活用していただき、住之江区がもっとより良い地域に発展していくことを願いながら、私も一緒に住之江区を盛り上げていきたいです!