女性専用の出張整体師を本業としながら、女性の社会的自立をコンセプトに設立した〝ACTION〟というオンラインサロンを通じ、主に女性アスリートのキャリアデザインを提案している青芭実穂さん。サッカー選手としてのキャリアと並行しながら〝ACTION〟を通じ、アパレル事業のキャリアをスタートさせた長嶋玲奈さん。今回は、女性のしなやかな社会的自立を自ら体現し、その姿を世の中にむけて発信されているお二人に、キャリアデザイン実現のカギを伺いました。
〝リアル〟を知る私だからこそ、できるケアがある。
まずは、お二人のキャリアを教えてください。
青芭さん:以前は柔道整復師という国家資格を生かして、約10年間整骨院で働いていましたが、2年前に女性専用の出張整体師として独立しました。それから、選手の体のケアなどで女子サッカーに関わったことをきっかけに、女性アスリートのキャリアデザインや新規事業の立ち上げをサポートする事業にも力を入れて取り組み始めました。私自身、中学生の頃からスポーツをやっていたのですが、高校時代の怪我をきっかけに整骨院に通い始めたんです。そこで、将来的にスポーツに関わるというキャリアがリアルに思い描けて、柔道整復師を目指すことにしました。私が当初勤務していた整骨院は、産後ケアに特化した医院だったというのもあって、患者さんの約7割が女性だったんです。生理や更年期など、同性だからこそ理解できる部分も多かったのだと思います。なので、自分で新しい事業を起こすなら、この経験を生かして〝女性専門〟という形でやっていこうと決めました。また、子供がいながら家を留守にすることはやはり大変だ、というお話も同世代の方から耳にすることが多かったので、〝出張型〟というアプローチを取ることにしました。
長嶋選手:私は2021年9月に開幕したWE LEAGUE(日本初の女子プロサッカーリーグ)のプロチームに所属し、選手として活動しています。それと並行して、2022年5月に立ち上げる自身のアパレルブランドの事業にも力を入れています。私のサッカーキャリアは、兄2人のサッカークラブの送迎時、チームの監督に誘っていただいたことがきっかけで始まりました。小学生時代は地元のサッカーチームで活動していましたが、中学生の時、女子サッカーチームのセレクションで合格を頂いたので、今もそのままそこのクラブに所属しながら選手として活動しています。
お二人の出会いのきっかけは、オンライン上だったとか。
青芭さん:私がインスタグラムのDMを送ったことがきっかけでした。もともと、私が長嶋選手のファンだったというのもあって、彼女のSNSも拝見していたんです。長嶋選手との繋がりができる前にも何名か、女性選手のケアを担当していたので、ぜひ!と思い、私から声を掛けました。
長嶋選手:普段、認識していない方からのメッセージには慎重に対応させていただいてるんですが、(DMをもらう前から)試合を観に来てくれたり、駅で話しかけてもらったり…という背景があったので。DMでのやり取りを経て、まずは体を診てもらうことになりました。もともと、WE LEAGUE開幕前までは、チームのスポンサーになっていただいてる会社で9時から15時まで働かせてもらって、夕方から練習に励むという生活だったので、どうしても体のことはセルフケアで簡単に済ませるということが多かったんです。
青芭さん:こうした実情は長嶋選手に限った話ではないんです。選手であっても体のケアを日常的に行えていない方が多数いるという現実を知って、私自身も驚きました。働きながらサッカーを続けるということの〝リアル〟に触れたことで、私自身には何ができるだろうと考えるきっかけになりました。
〝しなやかな両立〟をサポートしたい。
女性アスリートをはじめ、女性の社会的自立のためのサポートを掲げるプロジェクト〝ACTION〟について教えてください。
青芭さん:このプロジェクトに関しては、やはり長嶋選手をはじめとする女子サッカー選手との出会いがとても大きかったように思います。また、結婚をし、子供も育てて…という多くの女性をそばで見てきて、ライフスタイルの変化と好きな仕事とを両立させることの難しさも感じていました。私自身も母子家庭で育ち、母が自分の時間を削って朝から晩まで働いている姿を見てきて、もっと柔軟な感覚で、仕事と自分自身の時間というものを両立させられる方法があるんじゃないかと感じていました。自分自身のバックグラウンドも含めて、周囲の女性が置かれている環境を肌で感じてきたからこそ、1人1人の女性が、〝好きなことと仕事を両立していける環境の重要性〟を伝えていきたいです。そういった意味においての〝女性の社会的自立〟というのを、サポートしていきたいという願いを込めて、プロジェクトを進めています。
〝好き〟という気持ちが自分のキャリアを導く。
どうして、パラレルキャリアにアパレル業を選んだのでしょうか。
長嶋選手:これまでサッカー選手としてのキャリアを構築し続けてこられたのも、やはり好きという気持ちがあるからこそ。そのおかげで、フレッシュな気持ちで競技とも向き合えていると思うんです。青芭さんとの出会いをきっかけにセカンドキャリアについても考えるようになって、改めて自分自身が好きなものを考えるようになりました。その結果、私はアパレル事業に辿り着き、〝自分が着たい洋服をデザイン、販売できたら楽しいだろうな〟と思うようになりました。
〝ACTION〟を通じ、長嶋さんのアパレルブランド〝RE:RAY〟が5月にリリース。現在は、準備真っ只中だそうですね。
長嶋選手:そうなんです。日常でも、スポーツ観戦に行く時にでも着られるカジュアルストリートなテイストの洋服をインターネットで販売していこうと思っています。今、洋服の生地などを1つずつ学びながら、デザインを考案しているところです。競技活動との両立に関しても、青芭さんが全面的にサポートしてくださってるので、本当に助かっています。恵まれた環境の中で、デザインの勉強だったり、苦手意識が強かったプレゼンテーションについて学ばせてもらって、すごく自分の糧になってるなと感じています。サッカーというフィールド以外での繋がりも広がりました。また、RE:RAYの商品をきっかけに長嶋玲奈という人物を知ってもらうことで、WE LEAGUEのファン拡大にも貢献できるんじゃないかと思っています。ブランド名のRE:RAYというのも、青芭さんを通じて知り合ったデザイナーの方にご協力頂いて決めました。REは〝RETURN(返す)〟、RAYは自身の名前(〝玲〟奈)と〝光線〟という意味合いを掛けました。今まで支えてきてくださった方への恩〝返し〟の気持ちと、〝光線〟の如く、周囲のお手本になれるような存在になれたらいいなという思っています。
お二人が描く、今後のキャリアデザインとは。
青芭さん:まず、長嶋選手のアパレル事業スタートが、WE LEAGUEの認知と所属する選手1人1人の価値向上に繋がるといいなと思います。将来的には〝ACTION〟を通じて、WE LEAGUEに所属する全てのチームの選手、1人1人の想いを一緒に形にしていけたら嬉しいです。サッカー以外のスポーツとの関わりもつくりたいなと思っているので、自分で何か事業を立ち上げてみたいけどノウハウがないと悩んでいるアスリートの方がいれば、ぜひ気軽に相談してください。金銭面の負担を最小限に抑えつつ、リスク管理もしっかりしながら、競技生活と並行して好きなことを形にできるよう、精一杯サポートさせていただきます。また、20代の女性治療家の方からは、独立について相談を受けることが多いので、そういった方のキャリアサポートにも関わっていきたいです。キャリアデザインと社会的自立を実現できる女性の環境を、しっかり整えていくことが目標です。
長嶋選手:5月にスタートするRE:RAYについては、定期的に新しいデザインを発表していく予定なので、ぜひ注目していただけたら嬉しいです。WE LEAGUEに関しては、観客数5000人を目標としているので、そこに少しでも近づけるように頑張りたいと思います。今は途中出場も多いですし、出場できない時もあるので、少しでもチームの勝利に貢献できるよう、自分自身をもっと成長させていきたいと思います。同時に、セカンドキャリアも視野に入れ、今のうちからの人との繋がりや情報収集を大切に、次のステージへの準備も積み重ねていきたいと思います。現役生活と並行して、アパレル事業も成長させていくことが、他の選手のキャリアの選択肢を広げることにも繋がると思うので、〝自らが率先して動く〟という意識をこれからも大切にしていきます。
取材後記
たくさんの選択肢の中から、1人1人が自分に合った視点をチョイスし、これからのキャリアや人生を自由に描きやすい時代。だからこそ、心が喜ぶ選択を自分自身にゆるす〝しなやかさ〟を今一度、ゆっくりと考えてみてはいかがでしょうか。お二人の活躍と今後のキャリアデザインに、これからも注目し続けていきたいと思います。
青芭実穂さんと長嶋玲奈選手の情報はこちら
青芭さんInstagram
https://www.instagram.com/shuttyou_seitai_aoba/
ACTION公式ホームページ
https://syuttyou-seitai-aoba.com/action/
長嶋選手Instagram
https://www.instagram.com/reina.n13/
RE:RAY公式サイト
https://lit.link/reray
RE:RAY公式Instagram
https://instagram.com/re_ray_official
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