小学生時代、友だちとドッジボールで遊んだ記憶がある方は多いのではないでしょうか。実は”競技としてのドッジボール”では、意外と知られていないルールが存在しています。それは、「戦略」を考えてチーム全員で戦うこと。また、試合時間はなんと5分!その中で、攻撃と守備を繰り広げて戦います。
現在は日本ドッジボール協会が設立され、世界と戦うためにドッジボール日本代表が活動しています。今回インタビューしたのは、2019年マルチドッジボール男子日本代表の篠原謙生さん。小学生の頃にスポーツとしてのドッジボールに出会い、高校生の頃、一度目の代表選考を受けました。
そんな篠原さんから、ドッジボールのルールやその魅力についてお話を伺いました。
目次
スポーツとしてのドッジボールがあることに驚き!始めたきっかけ
篠原さんが「ドッジボール」を始めたきっかけを教えてください。
きっかけは小学5年生のときです。当時、学校の教頭先生がドッジボールチームを作っていました。教頭先生管轄でドッジボールチームメンバーの募集をしていたところ「やりたい」と思い、参加を決めました。小学6年生のときには学校の部活からクラブチームへ変わり、本格的にドッジボールのクラブ活動に取り組みました。
ドッジボールを選んだ理由は何だったのでしょうか?
小学1年生から、サッカーや野球を経験していて、ドッジボール参加者募集を聞いた時期はちょうど何もやっていなかったんです。ドッジボールはみんな好きですし、遊びでやっていて僕自身、おもしろかったです。なので、募集を聞いて「ドッジボールやってみたい」と友人たちと盛り上がりました。
実際にドッジボールを始めてみて、いかがでしたか?
スポーツとしてのドッジボールがあることにビックリしたのが最初の感想です。遊びでやっていたドッジボールとは異なり、「競技ドッジボール」は戦略を立ててチームで戦います。例えば、守備が横一列に並ぶんです。素人の目線から見て、先輩方の守備姿を初めて見たときに「こうやって戦うの?」と驚きました。
ドッジボールには戦略が必要なんですね!
そうなんです!ドッジボールのルールだと、パスが4回までと決まっています。ただ味方内でパスを回すだけになると、すぐに相手ボールになってしまいます。ちなみに、パス回しを器用に行うチームもいれば、とにかく全力のアタックを多用するチームもいて、チームによって戦略が違うことがおもしろいと思いました。
どのように戦略を考えていましたか?
基本的には戦略を決めるのは監督・コーチです。小学生の頃は、身長差が顕著に現れるので、小柄でもパス回しがとても上手なチームもあれば、大柄でアタックが強烈なチームもいました。今の戦略では横一列が主流ですが、それ以前では、二列や斜め型もありましたね。こうした戦略は体型や特性、強みによって決めています。
競技のドッジボールはチームでの戦い。役割に応じた動きが求められる
競技としてのドッジボールのルールについてお伺いしたいです。
大人の場合は8人チームで、小学生の場合は12人チームとなります。大人と子どもとでは、コートの広さが1メートルちょっと違うくらいで、人数とコートの広さ以外はほぼ同じルールです。試合時間は5分間で、その間にアタックを繰り広げます。
ちなみに、横一列の各ポジションには役割がありますか?
攻撃する人、守備する人がいて、守備にもさまざまな役割があります。例えば、僕のように一番端っこのポジションの人は、横からの攻撃に強くならないといけません。相手のボールにならないように味方が当たったボールを取りに行くなど、たくさん動く必要があります。瞬発力と体力、相手の動きを予測する力が求められますね。
そうなんですね!他にはどんな役割がありますか。
他には、パスカットという役割の人がいます。その名の通り、相手のパスボールを取る役割。相手がパス回ししている間に、隙を見てパスボールを取りに行きます。例えば、味方が体勢を崩してしまった場合、ボールを当てられてしまう前に、味方が当てられないようにパスボールを取りに行きます。
フィールド上の動きをすべて見る必要があるんですね!
そうなんです。周りの動きを見て、瞬間ごとに戦略を立てて行動します。動体視力も、反発力も身につきますし、特に空間把握能力が身につきます。
例えば、外野のラインは3メートルで、少しでも線を踏むと反則で相手ボールになります。限られた空間をめいいっぱい使うためにはコートの大きさを把握しておく力が必要になります。もし味方が当たったボールがラインギリギリの場合、そのラインから出ないよう空間を把握しながらボールを取りに行きます。前後左右、上下に動くスポーツなので、身体能力がかなり鍛えられます。
瞬間ごとの動きがとても鍛えられるんですね。
そうです。遊びのドッジボールは個人プレイになることも多いですが、競技となるとチームでの戦いとなります。小学生チームでは、監督、コーチが教えた攻撃の戦術、守備の戦術で試合に臨みますが、試合の一球一球の判断をするのはコートに立っている子どもたちです。相手の状況を見て、相手チームが外野に寄っている場合は「外野からの攻撃メインにしよう」など決めていきます。小学生の頃から判断能力が鍛えられるのはおもしろいと思います。
団結力が必須!ドッジボールは年齢や性別を問わず、誰もが活躍できる!
初心者の方向けに、ドッジボールのおすすめポイントを教えてください!
誰でも活躍できるチャンスがあるところです。子どもで例えますと、ボールをたくさん取れる子だけではなく、避けることが得意な子、身体が大きくて投げるのが早い子など、さまざまに活躍することができます。年齢も関係ありません。昔、小学生の監督をやっていた60歳くらいの女性が内野に入り、試合をしていたこともあります。性別や年齢、身体の大きさ問わず、プレイできるのがいいところです。
ちなみに、公式試合も男女混合なのでしょうか?
公式試合の場合は、男女混合の場合もありますし、女子単独のチームもあります。男女混合の場合は女子が外野を担当するなど、男子顔負けで活躍していますよ。男子単独の部門があるのは、国際大会くらいですね。基本的には制限はないので、小学生の大会には、混合の部でも女子単独で出場するチームもいますし、大人の混合の部に、女子中学生も参加したりします。6年生のアタックを3年生の子がキャッチしたり、大人のアタックを中学生がキャッチしたりすると、試合会場が盛り上がりますね。
活躍しやすい方に特徴はありますか?
誰でも活躍できますね。年齢や体格問わず、です。ボールが早い、キャッチが上手い、避け方がすごいなど、さまざまな場面で活躍できるのがドッジボールの魅力だと思っています。
チームでの団結力が鍛えられそうですね。
そうですね。チームの団結力がかなり必要ですし、鍛えられます。パス回ししかり、声も大きく出し、お互いに声を掛け合います。基本的には相手チームの動きは内野を見ますが、同時に外野の動きも見ています。もし相手チームの外野が動いたら、「外野右寄り!」「左寄り!」など相手がボールを投げる前に味方に伝えます。また一方で、味方の外野が、相手の内野の位置を知らせたりします。お互いに伝え合わないと戦えないので、団結力が必要です。声掛けを有効に使えないと勝つのが難しいスポーツです。
お互いに助け合うことが必要なんですね。
小学校のお昼休憩で、ドッジボールに慣れ親しんでいたときは個人プレイだった方も多いと思います。ですが、スポーツとしてのドッジボールは団結力が必須です。おそらく、競技としてのドッジボールは見たことない方が多いと思います。実は、僕もドッジボールに日本代表があることを高校生まで知りませんでした。
そうなんですか!
日本代表があると知って、2014年、高校2年生のときに初めて代表選考を受けました。一度目の代表選考を受けたときは日本代表の壁の高さに驚きました。そのときの代表選考会で知り合った方のチームに入ることになり、練習を積み重ねました。2年後、18歳のときに初めて日本代表に招集され、すごく嬉しかったのを覚えています。
スポーツとしてのドッジボールを広めたい
ドッジボール日本代表として、篠原さんの活動について教えてください。
僕が現在取り組んでいるのは、ドッジボールの普及です。まずは日本中の皆さんに、スポーツとしてのドッジボールを知ってほしいと思っています。ドッジボール教室を開いたり、個人でもメディアに出演したりして、ドッジボールを広めるために取り組んでいます。また、ドッジボール普及団体『View』の一員として活動しており、ドッジボールのイベントの開催や、YouTubeの活用など、地道に活動の幅を広めています。
物販や、YouTubeなども使って活動を広めているんですね。
マイナー競技の課題として、国際大会などにかかる交通費などが、どうしても自費になります。普及事業を通して競技ドッジボールの認知度を上げ、未来の選手たちにお金の面で苦労しないで日本代表を目指してほしいと思っています。
<!-- ここから非表示 ちなみに、世界だとヨーロッパなどもドッジボールが普及しているのですが、世界で主流なドッジボールの場合はボールを5個使います。
ボールが5個も!日本のドッジボールは海外では主流ではないんですね。
そうなんです。海外で主流のドッジボールは日本のドッジボールと区別するために、「マルチボール」と呼んでいます。ボールを一つだけ使用するドッジボールは、実は日本で生まれたスポーツです。日本のドッジボールは、世界で見たらマイナーなんです。僕は、日本のドッジボールだけでなくマルチボールのアジアカップ、ワールドカップにも出場しています。日本でもマルチボールを流行らせたいですし、海外に日本のドッジボールを広めていきたいと思っています。マルチボールとドッジボール、ルールはどう違いますか?
マルチボールとドッジボールのルールは、全く違います。マルチボールの場合、もしボールが取られたら、投げた相手がアウトになります。また、相手のアタックをボールでブロックできます。同じドッジボールという種類ではありますが、ルールが全然違います。マルチボールには外野というものがありません。口で説明するだけでは想像しにくいと思うので、YouTubeで英語で『dodgeball world cup』でも検索すると、海外のドッジボールの映像が観れるので、ぜひご覧ください。 ここまで非表示 -->懐かしのドッジボールをもう一度、やってみませんか?
もしドッジボールを体験したい場合、参加方法を教えてください!
ドッジボール普及団体「View」というメンバーが各地でドッジボール教室をやっています。また実際に、ドッジボール普及団体「View」に「ドッジボールをやりたい」という声があり、サポートする形で女子チームを作ることを実現したことがあります。特定の地域のご要望が多ければ、その地域のドッジボール教室を開くこともできると思いますので、まずはご連絡ください。
どちらにご連絡したら宜しいでしょうか。
例えば僕宛でも構いませんし、ドッジボール普及団体「View」のインスタグラムなどのアカウントへご連絡いただいても大丈夫です。ドッジボール普及団体「View」のホームページ宛でも問題ありません。いつでもご連絡お待ちしております。
ちなみに、ドッジボール普及団体「View」はどんなメンバーがいますか?
ドッジボール普及団体「View」のメンバーは、各地に7名います。そのうちの6名は日本代表経験者です。もう1名は、とても熱い男です(笑)ドッジボールのためなら全国各地に行くという思いを持ったメンバーで活動しています。僕は基本YouTube担当なのですが、今後の企画では大物とコラボを控えていたりするので、ぜひご期待ください。
篠原さんは、ドッジボールを通じて叶えたい目標はありますか?
ドッジボールで暮らしていきたいです(笑)ドッジボールを通して、日本代表としての活動資金に困らない仕組みを作りたいです。「ドッジボールをやりたいのにお金がないからできない」という子どもを減らせるようにしたいですね。まずは自分たちが活動する資金を得るため、ドッジボール日本代表の価値を高めるべく、今は階段を登っているところです。
最後に、篠原さんからドッジボールに参加される方へメッセージをお願いします!
懐かしのドッジボールをもう一度、一緒にやってみませんか?実は知らなかったスポーツとしてのドッジボール、子ども心を思い出して楽しいと思いますので、ぜひご参加ください!本物のドッジボールを経験して、新しい景色を一緒に見ましょう。
取材後記
子どもの頃、休み時間があれば校庭に行くくらい楽しかったドッジボール。そんな記憶を持つ大人はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。篠原選手がドッジボール、マルチボールのお話をされるとき、楽しそうに語る姿が印象的でした。日本代表として広報活動にも力を入れている篠原選手。将来、お金がなくてドッジボールを諦めてしまう子どもがいないよう、篠原選手の広報活動がたくさんの方々に広まることを願っています。懐かしのドッジボール、興味を持った方はぜひ練習会に参加しませんか?
関連記事
RELATED ARTICLE
-
ヨーロッパと日本の懸け橋に!バレーボール・高橋頌選手が海外挑戦にこだわる理由
インタビュー スポーツ指導超会議 バレーボール
2021.09.30
特集
-
本気で遊ぶ大人はカッコいい!かくれんぼ・岡村尚美さんが伝えたい人生の余白の使い方
インタビュー デュアルキャリア 社会人 遊び かくれんぼ
2021.08.16
特集
-
デジタルチャンバラ「SASSEN」がおもしろい!協会代表の本村隆馬さんに魅力を聞いてみた
インタビュー デュアルキャリア IT エンターテインメント SASSEN
2021.08.16
特集
-
生涯アスリートでいるために。常に今日を越えていくテコンドー・栗山廣大選手
インタビュー セカンドキャリア 社会人 スポーツ指導超会議 テコンドー
2021.08.17
特集
最新のコンテンツ
NEW CONTENTS
-
「私たちのことをもっと知ってもらいたい」 大学ラクロスを全国へ、そしてより身近に 大阪公立大学女子ラクロス部
女子ラクロス 大学スポーツ ラクロス
2024.07.28
特集
-
【アスリートのセカンドキャリア】「サッカー界とも新たな形で、プラスの風を」現役中に出会った〝好き〟がセカンドキャリアのカギになる 元サッカー選手・坂井達弥
社会貢献 元アスリート 次世代 サッカー 日本代表 地域密着 セカンドキャリア
2024.05.29
特集
-
【アスリートのセカンドキャリア】「競技生活は人生すべての糧になる」 現役時代をやりきることが新たな扉をひらく 元プロテニスプレイヤー・吉田友佳
テニス 女性とキャリア 元アスリート 次世代 教育 セカンドキャリア
2024.03.29
特集
-
【アスリートのセカンドキャリア】「キャリアチェンジは〝逃げ〟じゃない」〝競技生活=人生〟からアップデートしていくために<後編>
デュアルキャリア 野球 元アスリート キャリアチェンジ セカンドキャリア
2023.10.11
特集