特集2022.05.18

「スポーツ×デジタル」城戸理沙さんが描く〝ATキャリアの咲かせ方〟

場所問題解決で変革を!SpoRevo・城戸理沙が抱く日本スポーツの課題と目指す世界

競技のレベルや目的に限らず、スポーツをする場所や施設を確保する作業で、苦労した経験がある人は多いでしょう。そんな人たちを救う『SpoRevo』というWEBサイトがあることをご存じでしょうか。

本日お話をお伺いするのは、『SpoRevo』の設立者であり、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーでもある城戸理沙さん。キャリアをアスレティックトレーナーからスタートさせた城戸さんがWEBサイト『SpoRevo』を開設した理由や、現在のスポーツ界における課題など、アスリートとは異なる視点からさまざまなお話を伺うことができました。

城戸 理沙 プロフィール

城戸 理沙(きど りさ)
愛媛県松山市出身。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーとしてスポーツの現場で活躍した後、独立行政法人日本スポーツ振興センターに入職。スポーツ行政に携わり、約3年間スポーツの怪我予防のために尽力。更なる日本のスポーツ活動の課題解決、スポーツ市場のベースアップを図るべく、2021年10月より独立。

スポーツ三昧の学生時代 社会人では支える立場へ

まずは、城戸さんのご経歴についてお聞かせください。

実家から徒歩7分ほどのところに大きな総合公園があり、生まれたときからスポーツ三昧の環境で育ってきました。子どものときから暇があればそこに1人で行って、ボールを壁に当てたり、テニスをしたりと、スポーツが身近な環境で育ってきました。

スポーツ業界でのキャリアを志したきっかけは、中学3年生の時に担任してくださった先生の存在でした。体育の成績が良かったということもあり、「体育の先生になったらいいんじゃないか」と言っていただいたんです。当時は全然違う夢を抱いていたのですが、担任の先生の一言で体育やスポーツの分野に目が向き、いろいろと自分で調べるようになりました。
そこでアスレティックトレーナーという仕事を見つけたんです。日本中がオリンピックなどスポーツを通して感動する一体感と、選手が活躍する数々のシーンを見て感銘を受けました。私ももっと人々がスポーツに関心を寄せ、誰もがスポーツを楽しめる世界観を作りたいと思うようになったのです。そして、怪我という障壁を取り除くことでスポーツをやめなくていい世界にしていくことを目指し、アスレティックトレーナーを志しました。

アスレティックトレーナーについて、詳しく教えてください。

アスレティックトレーナーは、日本スポーツ協会の公認資格で、役割としては理学療法士とストレングストレーナーの間にいるような仕事です。

アスレティックトレーナーとしての城戸さん

アスリートが怪我をした時は、日常の生活動作レベル以上の回復が必要です。スポーツ競技の特性に合わせて、復帰するまでの組み立てをしていくことがアスレティックトレーナーの仕事ですね。ただ、「これも一生は続かない仕事だな」と思ったんです。

それはどうしてですか?

一般的な女性の生き方を、アスレチックトレーナーのキャリアでは思い描けなかったからです。業務内容もハードなものが多かったので休みもあまり取ることができず、給与水準も高いわけではない。実際に念願のアスレティックトレーナーになったものの、自分が歩んでいきたい人生はここにあるのか?と、毎日をもがくように過ごしていました。

その頃にたまたま、日本スポーツ振興センター(JSC)の求人を見つけました。直感的に「アスレティックトレーナーとしてのスキルを違う形で、広く世の中に還元するチャンスだ」と魅力を感じ、入職しました。

入職後の私の業務は、スポーツ中の怪我のデータを大学などの先生と一緒に調査研究したり、学校でヒアリング調査をすることでした。そして、それらの情報を元にスポーツに関して注意すべき内容について、WEBサイトやパンフレット、冊子などのコンテンツを作成します。例えば、データ上、熱中症は真夏の7、8月だけでなく5月にも多く発生しているんですよ。なので、「5月にも熱中症に気をつけましょう」という注意喚起をする教材を作ったりしていました。完成した冊子や資料は、幼稚園や保育園から高校まで、幅広い子どもたちや学校の先生などに配布していました。

直接選手に関わるところから、間接的にスポーツを支える立場に変わったわけですね。

そうですね。もとからデジタル領域のことも好きで、趣味でテレビゲームをしたり、中学生の時には自分でWEBサイトを制作したりしていました。

スポーツにどっぷり浸っていたアスレティックトレーナーから日本スポーツ振興センターに行って、俯瞰するような視野を持つことができました。

そこから『SpoRevo』を立ち上げた経緯を教えてください。

転職時に引っ越しをした際、スポーツ施設を利用するには新しい市区町村で登録をしなければならず、受付時間帯も仕事の時間と被っていて難しいという経験をしました。「一般の人はこんなにスポーツをやりにくい環境にいるのか」と思ったところから、『SpoRevo』を着想しました。

条件に合ったスポーツ施設が探せる検索サイト『SpoRevo』(スポレボ)


条件に合った施設が探せるスポーツ施設検索サイト | SpoRevo -スポレボ-

『SpoRevo』の概要を教えていただけますか?

目指しているのは、飲食業界や美容業界における『ホットペッパー』のような、スポーツ施設のまとめサイトです。日本全国のスポーツ施設の予約可能日や実施したい競技、エリアなどの条件を指定し、検索できるというサイトです。将来的には『SpoRevo』から直接施設を予約できたり、利用料の支払いを完結させられるようにする構想をもっています。

確かに、その情報がまとまっているだけでもありがたいですね。

現状まだ予約機能は実装されていませんが、各地域の施設情報が集約されているだけでも、実用性は高いと考えています。おそらく、これまで『SpoRevo』のようなサイトが存在していなかったのは、マネタイズすることに問題があったからだと思っています。

ビジネスモデルとして、どのように収益化を図っていく予定ですか?

モデルとして、まずは広告収入がベースになってくるかと思っています。あとは、予約機能が実装した際には、システムも提供したいなと考えています。スポーツ施設やスクールビジネスを活性化させたり、支援したりしたいので、「スポーツを稼げる仕事にする」サポートを事業化して進めたいと思っています。

城戸さんのキャリアやIT知識があるからこそ、成しえることですね。

スポーツ業界でデジタルに精通している人はかなり少ないと感じています。デジタル系の人は論理的に意図や目的を追求する方が多いのですが、スポーツ系の人は気持ちや定量化できない点を大事にします。「パッションと目標があればやればいいじゃん」「考える前に動け」という感じの人が多いですよね。 

両極端だとは思いますが、それぞれで良いところはあるので、うまく要素をかみ合わせていければいいかなと思っています。そこで私の価値が発揮できると嬉しいですね。

現在の段階、今後のビジョンについてお聞かせください。

今はスポーツ施設を検索できる機能が備わっているだけなので、ユーザーが使いやすくなるようにデータの量にボリュームを出していかなければいけません。そのためにも、コンテンツ数をもっと充実させる必要があります。
運営側だけの情報量には限界があるので、ファンやユーザーを巻き込んでつくっていく仕組み作りを検討しています。マネタイズすることより先に、ファンを作るようなプロセスで計画を進めています。

現場を離れて一般ユーザーの視点に立ったことで、「やはり、みんなが悩んでいることを解決しないとスポーツ市場のベースアップはできない」と思いました。スポーツ市場を大きくするためにプロスポーツに資金が入ったりもしていますが、プロ化されたところで、それらを身近に感じられる環境や場所が整っていなければ、根本的な問題解決には繋がっていかないと思っています。

時には立ち止まることも大切 Win-Winなキャリアの重要性

日本のスポーツ界に対して、ほかにも感じている課題はありますか。

部活動が日本のスポーツの基盤になり過ぎていることに課題を感じています。具体的には、日本のポピュラーな競技は部活の影響を受けているので、なかなか入れ替わらないということです。音楽や飲食、ファッションなどにはトレンドがあるのに対し、スポーツ領域はトレンドの波が少ないことも、日本人がスポーツに関心を向ける人が少なくなっているのが原因の一つだと考えています。

今後やりたいことや実現したいことはありますか。

目標を持ってキラキラ輝きたいという意志のある人や事業の支援をやっていきたいなと思っています。スポーツの領域では、私自身が現場で働いていたときに常にさまざまな不安を抱えていたので、スポーツ界で働く人が不安や迷いなく働けるよう、「スポーツの障壁」を取り除いていきたいです。

最後に、スポーツ界でキャリアに悩んでいる方々へ、メッセージをお願いします。

もっとも重要なことは、自己分析をすることです。やり方はさまざまですが、私は知人に手伝ってもらいました。誰かに手伝ってもらいながら自分の人生を振り返って書き出したり、スキルカードを使って自分の得手不得手をちゃんと分けて考えることができます。自己分析をやってみると、好きだけど苦手なことや、あんまり好きじゃないけど得意なことが誰しも意外とあるんです。やはり自分が「好きで得意なこと」が、自分の強みとなり、自分の軸を作るときのキーポイントになります。

自己分析ができたら、次に自分のやりたいことをいまの環境と照らし合わせ、自分が強みを活かして何を生み出せるか、何を提供して何を提供してもらうか、どうすれば互いにWin-Winの関係になれるかを考えました。

私も体育会系な気質なので『考える前に動く』という感じなのですが、先のことに不安を感じたときは、走るのを止めて考えることも大事なアプローチだと思います。それを心掛けるようにしたら、物事が上手くいくようになったので、みなさんにも実践していただきたいですね。今回、この記事を読んでいただいた方限定で、私が実際にやった自己分析のシートを配布します。ぜひやってみてください!

▼GrowS読者限定!自己分析シートはこちらから
https://docs.google.com/presentation/d/1ta7_WQBhSNcyhk8Z4ir5mL51K-nB7VQFiKWsKVZQ83k/edit?usp=sharing

取材後記

自らの経験した課題や悩みを解決したいという強い意志を、城戸さんからあらゆる側面で感じることができた取材でした。『SpoRevo』がますます発展を遂げ、スポーツの障壁を取り除いていく未来に期待感が高まるとともに、これからの城戸さんの活躍に期待せずにはいられません。

SpoRevoの情報はこちら

https://spo-revo.com/members
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