特集2022.06.08

“競技力”の再定義と社会のニーズからスポーツの価値向上を考える。【三橋大輔×M.MOWBRAY SPORTS】

TOKYO2020の閉幕、コロナ禍、多様化するライフスタイル、少子高齢化などによって日本のスポーツ界は今岐路に立たされています。
今後さらにスポーツが発展するためには業界内にとどまらず、一般社会における価値を見出し、届けていく必要があります。
そこで今回はアスリートのバリューを最大化し、社会における地位の確立を目指すプラットフォーム「Athlifes」と連携して、スポーツの価値向上のために必要な視点について議論を深めていきます。
お話を伺うのは指導者でありながら35歳にして15年ぶりに現役復帰し、陸上選手としても再出発を切った三橋大輔氏と、老舗靴ケア用品メーカーのスポーツインソールブランド「M.MOWBRAY SPORTS」の四垂氏。
三橋氏はM.MOWBRAY SPORTSアンバサダーとしてサポートを受けています。する側、支える側それぞれどのようなことを大切にしていけばスポーツの価値を高めていけるのでしょうか。

三橋大輔:ボディコーディネーター、陸上(走高跳)
トップアスリートから高齢者、子どもまで幅広く指導を行う。競技力の向上だけでなく、運動の楽しさを伝える活動にも積極的に取り組んでいる。また15年のブランクを経て、35歳で現役復帰。マスターズ出場を目指す。
高校体育教員、アスリート専属トレーナー、パーソナルジム代表といったスポーツの現場だけでなく、ホテルや商社等での勤務を通した社会人経験を持つ。

M.MOWBRAY SPORTS:1975年創業の老舗靴ケア用品メーカー、株式会社R&Dのスポーツインソールブランド。競技性と利用シーンに合わせた4種類のラインナップを揃える。
多くのトップアスリートがアンバサダーとして参画しており、開発とインソールの必要性の啓蒙を行っている。

人としてどうあるべきか。三橋大輔が大切にしてきた「be you」。

まず簡単に自己紹介をお願いします。

四垂:弊社は株式会社R&Dという革靴などのケア用品をメインで扱う会社で、M.MOWBRAY SPORTSはスポーツインソールブランドになります。Athlifesさんとのご縁で実際に使っていただいている三橋さんとも繋がれて今日は本当に楽しみにしていました。

三橋:改めまして三橋大輔と申します。
普段はボディコーディネーターとしてアスリートを指導しつつ、実は20歳で引退した競技に15年ぶりに復帰してやっています。

三橋さんはスポーツ以外にも様々なキャリアを経験していますね。

三橋:もはや履歴書の欄に書き切れないくらいですね(笑)でもいろいろ経験してきた中で一貫して大切にしていることがあります。
それは「be you」、つまり「あなたらしく」に寄り添うということです。
さらに深く言い換えると人と比べても結局は自分自身にしかなれないので、強みや素材を理解して活かそうという意味です。
アスリートに対しては本当の意味での自分の競技人生を歩むように言っています。僕自身も選手として誰かの理想を真似ていた時期がありましたが、本来はそうじゃないんです。
現役復帰したのも今なら自分なりの競技のあり方の実現と、特性にあった動き方で結果を出せると思ったからです。
僕は素材としては限界があるとは思いますが、どこまでできるか。今は全日本マスターズ、年代別の全国大会への出場と入賞を目指して頑張っています。

三橋さん自身が選手として結果を出せば、指導にも説得力が増しますね。

三橋:実は代表レベルでも雑にやっている選手がいて、それは本当にもったいないと思っています。
例えば100mの選手に2時間練習とコンディショニングを指導したらタイムが0.3秒速くなったことがありました。
選手が本来の力を自覚して出せるようになれば短時間でも結果に繋がることがあります。

サポート企業の本音と支援を得られるアスリートの貢献意識。

M.MOWBRAY SPORTSにはアンバサダーとして多くのアスリートが関わっていますが、その選考基準を教えてください。

四垂:基本的に2つあって、プロ目線をしっかり持っていることと弊社が掲げる「日本の靴文化を創造する」というコンセプトに基づいてインソールがパフォーマンスに寄与する部分に理解、熱量を持たれている方にお願いしています。
地道に口コミで拡げていきたいので、共感いただける方々と一緒にやっていきたいです。
我々は売り手の顔が見えるビジネスをしたいので、大々的に広告費をかける、あるいは問屋に卸して大量に捌くことで目先の売り上げを一気に伸ばすことはしません。ブランディングにも影響するので値下げも基本お断りしています。
アンバサダーにおいても同じで、顔が見えて、その方がどんな熱量で話をしてくれるのかというのを大事にしています。

アスリート側として支援を受ける時に意識していることを教えてください。

三橋:まずは自分が何者かをはっきりさせること。それがあるからこそ何がしたくて、してほしいかを伝えられると思っています。
同時にこちら側だけでなく、相手が何を求めているのかをくみ取り、その中で自分にできることを提案しようと考えています。
選手だけしていたら僕自身もこの発想は持てなかったでしょうね。
社会人としてのキャリアを通して、いわゆる“三方よし”の考え方の大切さを知ってきましたが、アスリートだと聞き馴染みがないことです。
競技を突き詰めていくと生き残るのに必死で、どうしても自分が良くなればいいという思考に陥りがちですからね。
だけどたくさんの支えがないとアスリートは頂点までたどり着けないと思います。そしてそれを理解した上で立ち振る舞いを考えなければ支援の輪は広がりません。

四垂:実際アスリートの方とやりとりしても、そういった視点まで見据えている人とそうでない人は分かります。やはり選手活動だけでなく、サポート側に対しても感度が高い人とお付き合いしていきたいですし、考えてくださる方とは取り組みをどんどんやっていきたいです。

逆にアンバサダーの方にお願いしていることはありますか?

四垂:一応発信などのお願いはしていますが、細かく縛ってはいません。選手の感度、熱量に沿う形でやっていただければと思います。
ただ、SNSの投稿にしても内容で熱量の差は大きく出るじゃないですか。言葉に気持ちが乗った発信はエンゲージメントやいいねも伸びます。
三橋さんの投稿はいつもそう見えるんですよね。そんな投稿をしてくれる方と取り組みをしていきたいです。
一方で投稿用の文章を送ってほしいと言われることもあって、我々としては短くても本人の言葉で発信してほしいと思っています。

強制されていなくても、やろうという気持ちがある人にお願いしたいですよね。

三橋:僕は15年ぶりに現役復帰する時にプロとしてスタートしたのですが、ブランクがあるので正直体力も落ちていますし、競技成績でいけばもっと優秀な選手はたくさんいます。でもそんな自分にも価値があるからスポンサーしていただいていると思うんです。
スポーツに専念できる環境はその積み重ねがあってできるものだと思うので、それを築く力を含めて競技力と考えています。
逆に言えば全国優勝する実力があるだけではダメなわけです。
単に選手が商品やお金が欲しいだけで協力してくださいというのはあり方としてどうなのか、と思いますね。

スポーツを用いた価値創造を、対等な関係で考える。

今後具体的にアスリートや三橋さんと一緒にできそうな取り組みはありますか?

四垂:靴のお手入れとインソールの重要性についての正しい知識を啓蒙していきたくて、三橋さんとは指導的な側面で一緒に取り組みができたらと思っていました。指導はどういった層の方が多いんですか?

三橋:一番多いのは小中高生向けの陸上アカデミーで、法人とタイアップして企画から運営まで全部やらせていただいています。
あとはご年配の方や発達障がいを持つ方で身体がうまく使えない人に対して運動の楽しさを伝えることをしています。
靴関連だと靴紐の結び方でパフォーマンスが変わるという指導をしました。大学のサッカー部員50人一人ひとりにその人にあった靴紐の結び方を教えて50m走をしてもらったら、チーム平均0.2秒速くなりました。
後にチームの監督からはシンスプリントや捻挫など、つまらないケガも減ったと伺っています。なので、その指導に合わせてインソールの重要性などを伝えていけるとよさそうですね。

四垂:非常に興味深いです!
教育的な側面として、靴の手入れを通して道具を大事にする気持ちと、インソールのフィッティングの知識を両軸で教えていけそうです。小中学生からインソールを使っていても、すり減ってて穴が開いている人も多いんです。

三橋:どんなにいいものも使いこなさなければ意味がないですからね。子どもだと足が大きくなるから大きめのサイズを履いていたりしますが、靴のいい性能どころか身体に余計なダメージを負うパターンもあります。いいものを選ぶこと以上にしっかり使いこなせるようになることが大切です。

最後に今後の展望をそれぞれ教えてください。

三橋:最初に「be you」の話をしましたが、それも含めて自分を紐解いていくと「NO.1のNO.2になりたい」のだと気づきました。順位としての2位になりたいのではなく、1位のポジションの人にとって欠かせない支えになれる二番手になるという意味です。日本一や世界一にとってのNO.2を目指します。

四垂:M.MOWBRAYブランドは靴クリーム使っているよと言われる場面も増えてきました。これは長年かけてブランドを育ててきた証ですが、M.MOWBRAY SPORTSはまだ若く知名度もまだまだ低いです。
今後スポーツインソールも同じように使う方に出会う機会が増えるようにコツコツ階段を登っていきます。

今回の取材対象の情報

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