特集2022.10.28

【前編】スポーツを通じて、地域・日本・世界を豊かに 笑顔咲き誇るスポーツビジネスの創造を目指して 

〝スポーツ×〇〇〟をコンセプトに、スポーツにかかわる人々の〝熱い想い〟をつたえるメディア、GrowSが今回お話をうかがったのは、スポーツX株式会社に勤務する中田彩仁(なかた・さやと)さん、松永健太(まつなが・けんた)さんです。
セカンドキャリア構築のフィールドとして、スポーツX株式会社への転職を決めた中田さんと松永さん。この決断には、”スポーツで地域、日本、そして世界を豊かに”という熱い想いがありました。
スポーツをフックに、世界中の豊かな価値の創造に懸ける中田さんと松永さんのキャリアやスポーツに対する想い、そして、スポーツX株式会社のビジネススピリットについて、スポーツ×ビジネスの視点から、前編・後編の2本でお届けします。

ファーストキャリアはコンサルティング 自身の課題意識が転機に

これまでのスポーツとのかかわり、そして学生時代のお二人について教えてください。

中田彩仁さん(以下、中田さん):スポーツとの出会いは、小学生のときにサッカーを始めたことでした。
中学校と高校では、陸上競技一筋で、10年ほど、走り幅跳びを専門としていました。高校生の時にはインターハイ出場も経験させてもらいました。
その後、大学生の時に再びサッカーに戻ったりして、主に、陸上とサッカーにかかわってきました。
実は、キャリアメイクのルーツにもスポーツが深くかかわっているんです。もともと、アフリカの貧困問題や国際協力に関心があり、スポーツを通じて、そういった課題解決に対して、何かアプローチができないかとぼんやり考え始めたのが、中学生の時だったんです。
なので、大学(立命館大学(国際関係学部))と大学院(一橋大学)で、スポーツ社会学を学び、スポーツを通じてどのように社会課題を解決していくか、アカデミックでの知見を実践に活かすためのアプローチを学びました。学部時代には、1年間のアメリカ留学も経験し、グローバルな視点を培いました。

中田さんは、大学院時代、スポーツ社会学についての知見を深めた(写真/研究発表の様子・ご本人提供)

松永健太さん(以下、松永さん):私は、小学校から高校卒業までずっとサッカーをしていました。
小学生ではクラブチームの一員として、中学校・高校では部活として、サッカーを頑張っていましたが、大した結果は残せず終わってしまい、心残りがありました。
大学(京都大学)では、ラクロス部に入部し、社会人になってからも2年ほど、社会人チームでプレーをしつつ、コーチとしてもラクロスを続けました。大学時代には、4年生の時に、日本代表にも選んでいただき、結果も出すことができ、自信にも繋がりました。
もともと、人間の心理や脳、神経や身体活動に興味があり、大学では、もともと文系だったのですが、理系の分野も学ぶことができる、総合人間学部に在籍していました。その後、大学院(京都大学)では、理系の研究室に所属し、神経生理学と行動制御学についての知見を深めました。

大学では、ラクロス部に入部した松永さん。4年生の時には、日本代表にも選出された(写真/ご本人提供)

お二人とも、幼少期からスポーツとのご縁があったのですね。その後、スポーツや学生時代の学びを、どのようにキャリアに繋げていこうと思われたのでしょうか?

中田さん:スポーツをツールとして、どのように社会を豊かにしていけるのか、という視点をもって、大学院時代にNPOやスポーツに関わる現場にも携わっていたのですが、マネタイズの問題も含め、ビジネス的な感覚をもって、事業としてしっかり確立することが非常に重要だと感じていました。
なので、まずは、自分がビジネス側のことをしっかりできる人間になりたいと思い、卒業後は、EYJapanというコンサルティング会社に入社し、4年半ほど勤務しました。
入社後は、国内の案件に加え、世界各国の拠点と一緒に推進していくようなグローバルな案件も担当させていただき、常に緊張感をもって、コンサルティングの仕事に従事していました。
実際にお客様と肩を並べて、事業課題に挑むような仕事の進め方にも大きな魅力を感じていましたし、事業会社であれば、自分の年次では到底対峙できないような、部門長や経営層にあたる職位の方と、一緒に仕事をさせていただけたことも貴重な経験になりました。
たくさんの経験を積ませていただき、刺激的な環境ではあったのですが、”スポーツを通じて社会を豊かにする”という、もともと持っていた自分自身の問題意識に直接的にアプローチできていないもどかしさも感じており、悩んでいた時に、弊社の高橋(高橋純一氏)から、LinkedInでメッセージをもらいました。

松永さん:私は、大学・大学院でアカデミックの知見を深めていたものの、自分のキャリアとして研究者の道を歩むことは難しいと考えていました。
また、生きていく上で、安定的な経済基盤を確保していくことは重要だという考えがあり、そのためには、少し自分の能力より高い経験をさせていただける環境で経験を積むことが必要だと考えていたため、卒業後はアビームコンサルティング株式会社(以下、アビーム(敬称略))に入社しました。
アビームでは、主に業務支援・業務改革プロジェクトや、デジタルトランスフォーメーション支援業務などに携わりつつ、一部で社内での新規事業案件にもかかわっていました。
社内外ですばらしい方々と仕事をさせていただいたことは、大きな財産となりましたが、”コンサルティング会社に長く在籍し続けられるのだろうか?”という、漠然とした疑問は持っていました。
というのも、アビームに在籍されていた方の経歴をみると、ずっといらっしゃる方もいれば、別の会社に移られてご活躍されている方も多数いらっしゃって…。自分がそのままやっていくべきなのか、それとも転職をした方がいいのかということを、常に考えながらキャリアを進めてきたところがありました。
そうして仕事を続ける中で、自分自身とコンサルタントという仕事に対しての理解が進み、また私的な事情も重なり、”ここが転機かな?”と感じていた時、弊社の高橋(高橋純一氏)から声を掛けてもらいました。

お二人とも、転機を感じていた中で、スポーツX株式会社(以下、スポーツX(敬称略))と出会われたのですね。スポーツXの第一印象はいかがでしたか?

中田さん:”こんな会社、あったんだ!”というのが、率直な第一印象でした。複数のサッカークラブを、会社の事業として経営・推進していくという(弊社の)形態は、それまで聞いたことがなかったので、すごくユニークだなと感じました。

松永さん:お声掛けいただいた当初は、弊社の存在を全く知りませんでした。ですが、スポーツXの話を聞かせていただく中で、”(スポーツXは)スポーツ業界におけるビジネス的な課題を孕む構造に真正面からアプローチしている会社だな”と感じました。

”スポーツXパーソン”への共感に背中を押され、転職を決意

お二人にとって未知の存在であったスポーツXに、入社を決意された決め手は?

中田さん:事業のユニークさに惹かれたことはもちろん、入社前の面談で自分のスポーツに対する思いに耳を傾けていただけた安心感もありました。また、弊社に在籍されていた皆さんが穏やかで、一緒に働きたいと思える方がたくさんいたことも大きな決め手でした。
実際に中途入社した社員で、コンサルティング会社から転職してきた者もいたので、実際に転職した後のイメージが描きやすく、不安なく進められたということも大きな理由です。

松永さん:面接を通じ、(スポーツXの)社員の方と話す中で、自分自身が感化されたというか…。ビビビと感じて、入社を決めました。
4人ほどの社員の方と面談しましたが、皆さん、論理的かつ穏やかで、共感できる部分がとても多かったということも、大きな決め手になりましたね。
また、弊社代表取締役である小山(小山淳氏)から受けるパワーに圧倒されたというか…。今まで見たことのないタイプの方だなという印象を受けましたし、小山のエネルギーには、言語化ができない面白さがあるなと感じました。

事業に対する感度やユニークさ、そしてスポーツXで働く社員の皆さんの人柄に惹かれ、入社を決意されたのですね。お二人は、現在、スポーツXでどのような業務を担当されているのでしょうか?

松永さん:大きく、”スマートスポーツパーク(SSP)開発”と”調査”という2つの業務に携わっています。
SSP開発は、大手企業と自治体と合弁で都市近郊にグラウンドと宿泊施設を設置し運営する事業のことで、現在、広島県福山市で、実際にモデルとなるような施設を運営しています。
もともと、この施設は常石造船株式会社(敬称略)という地元の大企業が開発した施設で、弊社は合弁企業という形で参画させていただいています。
私たちは、地域に密着したサッカークラブとスクール・アカデミーを、同拠点で運営しながら、多様な方々が集い、学べる場をつくりたいという構想をもっています。福山の施設をモデルとしつつ、今後は各地の拠点で開発を進めていきたいと考えています。
もう一つの担当にあたる調査業務とは、企業様から、スポンサーという形でお金をいただくのでなく、パートナーシップという形でサッカークラブを活用し、企業様の抱いている課題やその解決の糸口を掴むために、企業や業界の調査を行う業務のことを指します。

松永さんは、(業務をおこなう上で)パートナー企業の課題解決の糸口を掴むきっかけを、共に見出すことを大切にしている(写真/写真手前・ご本人提供)

中田さん:今、入社してからちょうど1年ほど経つのですが、スポーツXの経営企画部として採用に携わったり、弊社の子会社であるおこしやす京都ACのパートナー企業様との事業推進や、選手兼社員のマネジメントを担当してきました。
加えて、2022年2月からは、おこしやす京都ACのガーナ人監督・選手の通訳と現場のマネジメントに携わっています。
午前中は、チームに帯同して現場責任者兼監督通訳として練習に参加し、午後は選手と共に、事務所でクラブ業務をおこなっています。選手達は、「地域訪問」として、日頃からおこしやす京都ACをサポート・応援してくださっている地域のお店や企業を訪問し、関係構築に努めています。
具体的には、各選手、まずは担当となったエリアのお店や企業をリサーチし、1件ずつ電話でアポを取り、実際に訪問して、チームのポスターを貼って頂いたりしています。何度も訪問を重ねた結果、”パートナー企業として、おこしやす京都ACを応援したい”とご支援くださる方もいらっしゃいます。

中田さんは、おこしやす京都ACで、現場責任者兼監督通訳として練習に参加している(写真/ご本人提供)

おこしやす京都ACを通じ、地域・日本・世界を豊かに 

現場責任者兼監督通訳として、どんなことをされているんですか?

中田さん:おこしやす京都ACには、ガーナ人の監督と選手(3名)が在籍しています。英語が通じるので、監督からの指示は日本語で選手に伝え、選手同士のコミュニケーションは、英語と日本語の両方を使いながら、意思疎通をサポートしています。
おこしやす京都ACは、もともとサッカースクールの社会人チームであった「アミティエSC京都」が前身です。2018年に「おこしやす京都AC」となり、同年末から東大卒史上2人目Jリーガーの添田隆司が代表に就任し、最短2年のJリーグ昇格を目指して活動しています。

おこしやす京都ACのパートナーシップ営業をおこなう中田さん。クラブチームの経営にかかわることで、双方が笑顔になれるきっかけをつくる意識を大切にしている(写真/ご本人提供)

課題解決の糸口を掴める〝Win-Win〟なパートナーシップを

企業とのパートナーシップがチーム経営の要となりそうです。パートナー企業の皆さんとの関係構築において、大切にされていることはありますか?

中田さん:パートナーの皆様から一方的にお金をいただくだけでなく、私たちと関わることで、双方がWin-Winになるパートナーシップを心掛けています。
私たちとの関わりによって、パートナーの皆様に、(御社の)課題解決の糸口を掴んでいただけたら、と考えています。
例えば、少子化の影響で、なかなか生徒数を獲得できないという課題を抱えた学校が、私たちのパートナー様にいらっしゃるとします。
そうした場合、おこしやす京都ACの選手が参加した中学生向けの体験練習をその学校で開催したり、サッカー部のSNSについて、保護者の皆様や進学先を考える子供達に、”ここのサッカー部に入ったら面白そうだな”と、感じていただけるような運用にするお手伝いをすることもできます。
このように、単純にスポンサーとしてだけでなく、実質的な部分で私たちとかかわっていただくことで、パートナー様の課題解決ができるような関係構築を大切にしています。

前編では、スポーツとのかかわりや、セカンドキャリアへのターニングポイント、スポーツXでのキャリアなどについて、スポーツX社員である中田さんと松永さんのルーツや、バックグラウンドに迫りました。後編では、スポーツX株式会社代表取締役の小山淳氏が考えるビジョンやビジネススピリットについても視点を広げ、お二人に、詳しくお話をうかがいます。
(取材/高橋麻菜美 文/秋山彩惠)

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